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別作品放置してるのに新しいのを書いてしまった。
反省はしていない。
2016/4/25 微妙に編集。流れは特に変わってない。
「あばだばああ~」(あんのくそ野郎~)
俺、大森寛人は憤慨していた。キレていた。某走る人風に言えばヒロトは激怒した、と言ったところか。
とにかくはらわたが・・・・・・よそう。これ以上はくどい。
ともかく、そのような感情に至った経緯を説明しなければ話は進まない。
時はヒロトの感覚にしてわずか数分前に遡る。
◇◇◇
「あ、お前死んだから。」
「・・・・・・はあ!?」
突然なんの脈絡もなく目の前に表れた冴えないおっさんにそんなことを言われる俺。
周囲はただただ白く、広い空間。
なんだここ?なんなんだこのおっさんは?
俺の混乱具合は瞬時にしてピークに達したが、おっさんはそんなことは気にも留めずに話を続ける。
「説明とかめんどくさいから~サクッと流していくけども、次の転生先は異世界ね。間違って殺っちゃったから、詫びって訳じゃないけど、すんげ~チート能力やるから。魔法とか好きだろ?あと若返りもな。感謝しろよ。はい、じゃあ俺寝るから。」
◇◇◇
そして気が付いたら見たこともない深い森の中にいた。赤ん坊の姿で。
(くっそ、なんなんだよあいつ!)
あれが何かと問われればあれは神である、らしい。
幸か不幸かそのあたり―俺が異世界に転生するに至った経緯―は、いくらかの俺の知るはずのない知識が知らないうちに増えていたことと、さっきははっきりしなかった直前の記憶を思い出したことで、納得できないまでも把握はできた。
思い出した記憶とおっさんの話から推測すると、どうやら何らかの手違いによってあのおっさん―神―が俺を死ぬようにしてしまったようだ。直前までいなかったはずの車が猛スピードで俺をはねていったのは、俺が死ぬという運命にするための辻褄合わせみたいなものだったのだろう。間違いなく即死だっただろう。
恐らくは俺の寿命はもっと長かったはずで、それに罪悪感を感じ―たようには全く見えなかったが―、チート付きで異世界に転生させることで謝意を示したつもりのようだ。
っていうか、適当にごまかしてうやむやにしようとしただけか?
ともかく、そんなこんなで今に至るわけだ。
(全然納得できねぇ!!)
っていうか、若返りとは言っていたが、0才児って若すぎるだろ!!
それも今なら理由がわかる。
十代の肉体を作り出すよりも0才児の体を作り出す方が楽だからだ。
そして、0才スタートならあって然るべき保護者の存在も、それらの設定を作り出すことをめんどくさがって作らなかった結果がこの状態だ。
ちなみに、チートの付与に関しては既存のものを適当に詰め込んだだけなのでほとんど労力はかかっていない。
完全な手抜き。
「あうあうあぶばう、あぶ!!」(神のくせしてふざけたことしてんじゃねえぞ!!)
もはや言葉どころか声すらまともに出ないほどの憤りを込めた俺の叫びは届いた。
―但し、それは神にではない。
がさがさと音をたてながら草を掻き分けて現れたのは、濃い緑色の肌をもった人型の魔物。元の世界のファンタジーの感覚で言えばスライムと最弱モンスターの座を争う存在。不潔と性欲の代名詞。そう
(ゴブリンだと!?)
奴らは三匹で現れた。武器は持っておらず、身に付けているのはボロい腰布だけ。
「グギャッ?」「グギャギャ!」
口々に何か言っているが、恐らくはエサを見つけたといった内容だろう。
(ふざけるな!!)
怒りに呼応して魔法が発動される。
瞬時に生み出された三つの風の玉はゴブリンに着弾すると一気に膨張して衝撃波へと変換される。
それに吹き飛ばされたゴブリン達は木に体を打ち付けられて、あっさりとその命を失った。
(これは・・・・・・)
眼前に広がるその光景はヒロトの思いもよらないものだった。
彼は大慌てで自分に詰め込まれたチートを精査する。
『思考加速』、『並列思考』。それらのスキルを使ってなお目眩を起こしてしまうほどの情報量がそこにはあった。
あの神ほんとに何にも考えずに能力ぶちこみやがった!!
しかし、
(・・・・・・クックック)
経緯はどうあれ俺は神から大きな力を授かった。
使命も何もなく、むしろ適当に放置された状態だ。
であるならば。俺はこの力を使って自由に生きよう。
自重などしない。するわけがない。
こうして俺の異世界生活は突然の始まりを告げた。