第37話 トレマーズ
マラガの東門を出てすぐの場所に屋敷がある。
マラガ自治領からシルチス王国へ東に延びる街道を挟んで、北側に屋敷と二つの別館、二つの倉庫があり、南側に広大な農地が広がっている。
屋敷のさらに北側は、背の低い小山がポコポコと盛り上がるなだらかな丘陵地帯。
ウチの裏山、といった表現が似合うこじんまりしたのどかな丘である。
天気の良い日にはお弁当を持って、陽当たりの良い斜面でのんびりすると気持ちが良い。
農地の南側は、人の手が入っていない平坦な草原地帯へと続いている。
つまり、今は荒れ放題ではあるが、ウチの屋敷が『ここは俺の土地ですよ』と主張している場所の向こう側は、さらに開拓可能な土地なのであった。
場所は悪く無い。
街道からは多少離れるが、マラガの周辺地域と言える比較的治安の良い場所であるし、近くに川も流れているので、もとから引いてあるバートン農場、もといカズヤ農場の用水路と繋げて、水も確保できる。
では、何故、手を付けられていないのかと言うと、マラガはもともと魔境の要塞と王都を繋ぐ流通の中心地として発展してきたので、多少目端が利いて労力を惜しまない人間なら、商品の中継ぎ業者を選んだほうが実入りは良いからである。
そして、荒地となっているバートン農場との境い目が分かり辛かったのと、今まで借金問題でガラの悪い連中がウロウロしていたので、手を出しかねていたという理由もあった。
それはさて置き、ロバート司教から紹介されたカズヤ農場で働く三人の男達が屋敷を訪れた。
三人は親子であり、父親がブルータス、次男がブルース、三男がブルーノ・・・。
ブル繋がりで揃えたのは大変結構ではあるが、区別しにくいのでブル一家の父親、兄、弟と心の中で呼ぶことにする。
父親は五十代くらい、兄弟は二十代くらい、親子そろって茶色のハンチング帽と焦げ茶色のオーバーオール型の作業服を身に着けている。
この一族は、あれこれ統一するのが家訓なのだろうか?
実写版スーパーマリ男の農夫バージョンといったところである。
ちなみに長男のお名前は?と聞いたところ、クレイブだと答えが返ってきた。
どうして、ブルで統一しなかったんだ!
長男一人だけ仲間外れかよ!と、心の中でもどかしく突っ込む。
三人兄弟であったが、長男が嫁をもらい家の農地を継ぐことになったので、残った二人の兄弟は、自治領軍に戻るか、新しく農地を開拓するか、フィオナのように、夫を亡くした農地持ちの未亡人のもとへ婿として転がり込むか、さて、どうしよう?と思案していた所で、司教からの提案は、渡りに船とばかりに都合が良かったそうである。
農地はいったん人の手を離れて荒地になってしまうと、元に戻るまで時間がかかるそうだ。
土づくりを含めて、ある程度の収益が見込めるようになるまで最低でも三年はかかるらしい。
ブル一家との話し合いの結果、三年間は作物の出来具合いに係わらず固定給という好待遇、その後は応相談ということで雇うことになった。
とりあえず、この三人からのスタートだが、春を越えると、兵役を終えた孤児院出身者がマラガに戻ってくるそうなので、様子を見ながら人手を増やしていくつもりである。
息子の行先も決まってヒマになった父親は、長男の手伝いをしながら孫の相手をして楽隠居する予定だったが、おだてて持ち上げて、農業経験の無い孤児院出身者への指導役として働いてもらうことにした。
広大な十三ヘクタールの農地、サッカー場の約十八倍。
さすがに、最初からこの全てを扱うのは無理がある。
先ずは、収益の見込める農地として三ヘクタールを育てる事を目標とした。
そして、俺は今、さんさんと降り注ぐ陽の光を浴びながら、地面に向かって、ひたすら三本爪の鍬を振り下ろしている。
一息ついて手拭いで汗を拭きとり、マコトちゃんの差し出した水筒から浴びるように水を飲み、息を吐く。
これが労働の喜びというものだな・・・・・。
ちょっと待った。
以前にもこんな事があったぞ。
登場人物を差し替えただけの、手抜きのようなイベントシーンの繰り返しが俺を襲う。
しかも、水筒を渡す役が、アリスからマコトちゃんに変わってるし!
オンナのコからオトコのコに変わってるし!
うっかり気を緩めただけで、マコトちゃんルートに引き戻されてしまっている。
さらに、『これでも、まあ、いいっか』などと思い始めている自分が怖い。
異世界の強制力なのか、予定調和なのか、トゥルゥーラブなのか、マコトちゃんの首筋に光る汗の粒から目が離せない。
ファンタジーってコワイ!
ブル一家を雇い、農地はマカセタ!後はヨロシク!と肩を叩いてマル投げしようとしたら、ちょっと待ったが掛かった。
春を迎える前に土造りの下ごしらえをしなければならないが、三人ではとても無理だと、目の前に広がる雑草が伸び放題の荒地を前に、滔々と説得された。
デスヨネー。
そんな訳で、温泉旅行を目の前にジリジリと焦りながら、孤児院の年長組と薔薇パーティを総動員して荒地の再開発に取り組んでいる。
ソフィとアリスは、昔話に出てくるお婆さんが背負っているような大きな編みカゴを持たせた孤児院組を引き連れて、屋敷の裏山へ肥料となる落ち葉を集めに行った。
不平不満を垂れ流し続ける薔薇の腐女子は、晩メシとソフィア先生監督の合同戦闘訓練を交換条件になだめすかして、成木になりかけている若木の撤去や草刈りをさせている。
フィオとサナエさんと引率役のシスターマリサは、農作業後の腹を空かせた労働者の為に、屋敷の厨房でメシの支度をしている。
荒地を掘り起し空気を入れて、山から集めてきた落ち葉を混ぜ込み、ふかふかの土壌にするのが目標だそうだ。
放ったらかしで硬くなってしまった土を柔らかくすれば良いんですよネ?
ならば、と先日、アホのシルバーナイト様を地面に沈めた俺の土魔法?を披露したら腰を抜かすほど驚かれたが、ダメ出しされた。
俺のサラサラ土魔法は、土の中の栄養分も一緒に破壊してしまい、荒地どころか死の土地になってしまうそうだ。
ブル一家に異世界開拓チートを封印され、仕方なく俺は朝から魔力の循環をフル回転させて身体強化し、荒地を耕している。
ブル一家も兵役経験者であるので、身体強化を使えるのだが、普通のヒトは一時間も連続使用すると魔力切れでぶっ倒れてしまうそうで、身体強化は特別硬い地面や大きな岩に当たった時の為に取っておくそうである。
マコトちゃんも連続使用だと二、三時間で魔力切れになるそうだ。
脳内ステータスでマジックポイントの横棒の増減が見えない俺は、いったいどのくらい身体強化を使い続けることが出来るのか分からない。
それを知る為に、実験を兼ねて朝から身体強化をかけっぱなしにしている。
昼メシで一時中断してしまったが、いっこうに魔力切れの気配は無い。
俺が魔力切れを感じたのは、後にも先にも、薔薇のユカリを助ける為にアリスの外部魔力タンク役をやった時だけだ。
ソフィア先生によると、俺の魔力量はかなり多いそうだが、具体的にどれくらいかは、分からないそうである。
ビデオの早送りのように高速で地面を掘り返し続ける俺を、ブル一家が不思議そうに見ている。
俺の魔力が切れるよりも、鍬の耐久力が底をつき、これで五本目となる鍬を振っている。
「カズヤ!もっと腰を入れるんだ!さっさとやらないと冬がきちまうぞ!」
「ヒトは汗を流してこそ、大地の恵みを受け取る資格があるのだ、ダッハッハ!」
水筒のお茶を喉に流し込む俺に遠くの方から声が聞こえてくる。
酔っ払いのオヤジが二人いる・・・。
ロバート司教とボリス教官・・・。
手伝いに来てくれたのかと思ったら、農地の隅にゴザを敷いて酒盛りを始めてしまった。
ポカポカと実に気持ちの良いお日様の下で、ご機嫌で酒ビンを抱いている。
放っておけばいいのに、フィオが甲斐甲斐しく酒のツマミを差し出していた。
こういうの、どっかで見た事あるなあ。
俺の田舎の町内運動会で、初めから走る気の無いオヤジ達が運動場の片隅で酒盛りしている風景にそっくりだった。
中央の教会での地位を蹴って、マラガの教会で民の心を守る元教会騎士団長のロバート司教様。
バルト王国内のトップパーティだった『咆哮する獅子』で活躍していたボリス教官殿。
いったいそりゃ、どこの誰のハナシだ?
ただの酔っ払いがゲラゲラ笑っている。
邪魔だからもう帰ってくれないかな?
「カズヤ君、気持ちがいいね。たまには、こういうのもいいよね」
汗を拭きながら、朗らかに微笑んでくるマコトちゃんの言葉が、イラっとして酔っ払いに鍬を投擲しようとしていた俺を引き留める。
それにひきかえ・・・。
「なんで、私達がこんなことしなきゃいけないのよ」
エリカが刈り集めた雑草の束を乱暴に地面に投げ出し、ブツクサ言いながら腰を叩いて背を伸ばしている。
「なんでだと?何故かと言いうとだな、ここんところ毎晩メシをたかりに来てるんだから、その分、文句言わずにマコトちゃんを見習ってキリキリ働け、ということだ」
「だって・・・、ウチのメニューって・・・、下宿のおばあちゃんが作ってくれるから・・・」
屋敷の昼食会に招待してから、薔薇パーティが何かと理由を付けてメシを食いに来るようになってしまった。
「あはは、何て言うか、野菜中心っていうか、お年寄り向きっていうか、ちょっと味が薄目なんだよね。ごめんね、カズヤ君」
いや、マコトちゃんはいいんだ。
むしろ、毎晩泊まっていって欲しいくらいである。
いっその事、ウチのコにならないか?
「いいじゃない、食費は払っているんだから。男のクセに細かい事言うんじゃないわよ」
「ナニ!俺は都合の良い時だけ男とか女とか持ち出してくるヤツには容赦しねーぞ!」
耕せども、耕せども終わらない、地平線の見えそうな荒地から鍬を拾い上げて両手に構えて臨戦態勢をとる。
「やるっての?いいじゃない、やってやろうじゃない!」
舌打ちしながら、エリカが大鎌を肩に担ぐ。
「おう、泣いて謝っても許さねーからな!・・・ヤメた。余計疲れるわ」
「・・・そーね、さっさとやっちゃいましょ」
しばし、ガンを飛ばし合ってから、溜息をついて作業に戻る。
こうやって、たまに遊び半分で口ゲンカしてじゃれあうのも楽しいが、地面を見下ろし、作業の進捗状況を目の当たりにすると、お互いそんな気分にならなかった。
鍬を持ち直し背筋を伸ばして、まだ手の付けられていない向こう側を、うんざりしながらぼんやりと眺めていたら、地面が不自然に盛り上がっているのが見えた。
不思議に思い近づいてみると、三角形に盛り上がった土が、山脈のようにずっと続いている。
モグラか?
そう思ったが、ちと山が大きすぎる。
俺の腰まで届きそうな山がモコモコと一直線に走っている。
なんだろう?と思いながら、盛り上がりに沿ってしばらく歩く。
おそらく終点であろうと思われる部分に辿り着き、鍬を反対に持ち替えて柄の部分で山を突くと、もぞもぞ動いた。
さらに、深く押し込んでみる。
イヤイヤするようにもぞもぞが大きくなったので、さらにグリグリして遊んでいたら・・・。
突然、大気を震わせるような地鳴りが響き渡り大地が揺れた。
俺の足元が一気に膨れ上がり、あれよあれよという間に、大量の土砂と一緒に吹き飛ばされてしまった。
突然の出来事に朦朧としつつも、土砂を掻き分け、口の中の土を吐き出しながら、体を起こして元いた場所を見る。
目に入った物体のあまりのおぞましさに、身体中に鳥肌が立ち、尻の穴がキュっとすぼまる。
もうもうと湧き上がる土煙の中から姿を現したのは、超巨大なミミズだった。
ミミズ???
土の中から飛び出た先端部分が空に向かいウネウネと動いている。
地面の上に出ている部分だけでも五メートル以上、ドラム缶より太い胴回り。
おそらく首???のあたりに白い輪っかが付いている。
たぶん口???に当たる部分が、丸く大きく開いていて数えきれない程の細かい歯がびっしり何層も重なり、わしゃわしゃ動いている。
胴体は生白いピンク色で、テラテラした粘液が体を覆い、時折、ボタボタ地面にこぼれ落ちる。
生理的な嫌悪感が電気のように俺の身体中を駆け巡る。
「どひぃ~~~~~~~っつ!」
腰を抜かしたまま、四つん這いで反対方向へ逃げる。
「ちょっと!こっちに来ないでよ!」
薔薇のバカ女が背を向け、俺を置き去りにして走り出す。
「お前ら鬼か!俺を見捨てて逃げてんじゃねえよ!」
逃げる薔薇の四人組、それを必死で追う俺、そして、その後にずりずりと地を這いながら続くミミズ。
助けを求め、声を枯らして叫ぶ。
「助けて!ボリス教官!お願い!」
「おおうい、カズヤ。そいつは逃がすと土の中にもぐり込んで、マラガの街を荒らすかもしれんから、ここで始末しろよ。動きは遅いし柔いから、どーってことない。どーんといけ」
遠くから、酒ビンを片手に、のんきな酔っ払いボリスの声が届く。
酔いどれ司教は、ヒザを叩いて笑っている。
ダメだ。
あのオヤジは役に立たない!
窮地に立たされ、捨てられた子犬のように一人寂しく立ち尽くしていると、風切音と共に矢が飛んで行き、巨大ミミズの頭部に突き刺さった。
「カズヤ君!今の内に立て直して!ユカリ!火魔法で援護して!」
やっぱりマコトちゃんは、俺の心の友だ!いや、魂の友、ソウルメイトだ!
凛々しく次々と矢を放つマコトちゃんはマジ天使!
マコトちゃんの弓とユカリの火魔法でミミズがひるんだ隙にアイテム倉庫から剣と盾を取り出して立ち向かう。
プリプリ、ブニョブニョした胴体にまとわりつく粘液がテラテラと輝く。
高速で接近してブルブル震えるミミズに剣を突き刺すと、気持ちの悪いブヨブヨした手応えを感じる。
俺の右腕の先から、フジツボのような鳥肌が再度泡立ち、広がっていく。
ムリ!やっぱりムリ!
とっさにステップバックして逃げ出したが、俺の後方に控えていたエリカとユキコとナオミに取り押さえられてしまった。
「逃げてんじゃないわよ、あんたの畑でしょ!」
俺の両腕それぞれにエリカとナオミが腕をからませ、がっちりロックされて振りほどけない。
後ろから俺の背中をユキコがグイグイ押してくる。
これが両手に花ってやつですか?
ちょっとボクが想像していたのと違います!
「おい!やめろ!押すな!」
足をジタバタさせるも、抵抗空しく薔薇の三人に連行される俺の前に、じりじりと巨大ミミズが迫ってくる。
「ちょっ!わかった!わかったから!行くから手を放せ!」
薔薇のバカ女から押し寄せる圧力に耐え切れず、あきらめて特攻する。
地面から突き出しグニグニ動くミミズに剣を叩きつけるが、表面を覆う粘液にじゃまされて剣の刃が通りにくく、イマイチ手応えを感じられない。
ムチのように体をしならせて体当たりしてくるミミズの攻撃を横っ飛びにかわして距離を取る。
俺が移動して空いたスペースの中を、援護射撃の弓と火の玉が空気を焦がしながら巨大ミミズに飛んで行くが、すぐに土の中に引っ込んでしまい効果が無い。
地面の下をモコモコと土を盛り上げながら移動するミミズ。
それを追いかけ、地面から顔を出したところを狙い、俺とユキコが剣で突き、ナオミが槍を刺し、マコトちゃんが弓矢を放ち、ユカリが火の玉を浴びせる。
そしてまた、土の中へ逃げる巨大ミミズ。
モグラ叩きの如く、頭を出すと叩き、叩かれるとすぐ引っ込む。
広大な荒地の中、俺と薔薇パーティが、西へ東へミミズを追い掛け回し、気が付けば周囲一帯がモコモコだらけになってしまっていた。
「もうやんなっちゃった」
ナオミが地面に突き立てた槍に寄り掛かり、肩で息をしながら立ち止まる。
「カズヤ、あんた、あの剣を突き刺して爆発する魔法で、どうにかできないの?」
立ち止まり両手を膝について、息を整えながらエリカが言う。
「おい、エリカさんよ、俺に、あのネトネトに剣を突き刺したまましがみ付けってか?やってもいいが、その後に、そのままお前に抱き着くからな」
「やめてよね、バカ、ヘンタイ!」
しかし、このままでは埒が明かない。
息を切らして走り回る俺達をからかうように、頭を出しては引っ込め、動き続けるモコモコを眺めながら考える。
頭を出したところに襲いかかり攻撃を浴びせても、すぐに土の中へ逃げ込んでしまう。
再び現れた時には、前に付けた傷が無くなっている。
どうやら、土の中でモコモコしているうちに、あの粘液で自然回復しているようだ。
あのミミズに抱き着いての分子振動魔法だけは絶対にやりたくない。
あともう少し地面の上に押さえつける事が出来れば、ユカリの火魔法で燃やせるのだが・・・。
「ちょっと、あいつの相手をしてくれ。準備してくる」
「どこ行くのよ、カズヤ!まさか私達に押し付けて、逃げるつもりじゃないでしょーね!」
「違うっつーの!とにかく逃がさないように適当に相手していてくれ!」
薔薇の三人に言い捨てて、農地の隅を目指して駆け出す。
刈り取った草や、伐採した木が積み上げられている中から、なるべく曲がっていない、真っ直ぐな一本の木を抜き出して、剣で枝を払い、先端をエンピツのように削って尖らせる。
俺の腕くらいの太さで、長さ約三メートルの槍を作り出した。
魔力を高速回転させ、さらに身体強化の段階を引き上げる。
槍を構え、喜劇のようにドタバタ走り回る薔薇パーティとモコモコに集中してタイミングを計る。
「デカイの行くぞ!避けろ!」
俺の掛け声で、進路上にいた薔薇パーティが散開する。
地面が盛り上がり、ミミズが大きく飛び出した瞬間、胴体部分に狙いをつけて、一気に腕を振り抜く。
勢いよく放たれた槍は、狙い過たず、地面から突き出した柔らかい胴体のど真ん中に命中し、ミミズを串刺しにした。
巨大ミミズが地面の中に逃げようとしてジタバタもがくが、刺さったままの槍が邪魔をする。
「ミミズから離れろ!ユカリ!魔法で燃やせ!」
「まかせて!」
両手を構えたユカリの先に現れた大きな火の玉が、ミミズを直撃し、まとわり付いた炎が柱となって空に立ち昇る。
黒い煙を上げながらミミズがのた打ち回る。
時折、ミミズの体液が沸騰して爆ぜる音が聞こえてくる。
「うわー、グロー」
薔薇のパーティが俺の周りに集まって来た。
「あーあ、ヘンなにおいが髪の毛についちゃった。カズヤ、お風呂沸かしておいてよね」
この女共、メシどころか、風呂もたかろうってか?
「いいぜ、ついでに背中を流してやるよ」
「スケベ!バカ!ヘンタイ!」
それしか言葉を知らんのか?
「いんやー、二、三メートルくらいのやつなら、たまに見かけんだども、こったら大きなのは初めてだわ。そんだが、ええあんばいに土かますてくれたから、えがったわ」
俺達の死闘を休憩しながら見物していたブル父が近づいて来た。
訛っていて何を言っているのか分かり辛いが、大きなミミズが程よく土をかき混ぜてくれたので良かった。という事らしい。
それよりも、二、三メートルなら、たまに見る。という言葉が引っかかるのだが、聞かなかった事にしておこう。
「よっしゃ、これで憂いなく温泉旅行だな!」
「カズヤ君、温泉が目的じゃないからね!温泉は狩りのついでだからね!オマケだからね!わかってるよね!」




