閑 話 「塩漬け」
「さてと、ようやく旅立ってくれたな。あとは、彼の処分だけなんだけど、ああかっこつけたものの、実際どうしたものかなぁ?」
「お勤めごくろうさまっす。アニチ!」
「あ、お前、誰がアニチだ! このペテンの神め!」
「めっそうもない。あっしはただ単にアラブの春を演出したり、アルカイダやイスラム国のリクルートをちょっと手助けしただけのケチな「電脳の神」ってだけでゲスよ。1と0の羅列だけで構成されたケチな存在でゲス。アニチのような慈悲と寛容を持った本物の「神様」とは格が違いすぎるでゲス。ましてや、人様を騙すなんてこと出来る訳無いでゲス」
「ふん! 人様を騙そうなんて奴はみんなそう言うんだよ。それで、何しに来た? まあ、想像はついてるけどな」
「それならお話が早い。そこの人間をあっしにいただけないかと」
「だが、断る!」
「そんなぁ~ こんなにいい状態の依代、数百年に一度しか出ない上玉なのに」
「どうせ、どっかの世界で魔神だか破壊神にするつもりだろうが、こいつは、予後不良なんだよ。殺処分するのが当人の為なんだ。まして、肉体にしろ、魂にしろ、痕跡すら残す気はさらさら無いぞ!」
「ううう~っ残念です……」
「大体、以前俺が処分しようとしていた日本の戦争請負人、勝手に持って行って色々いじってたじゃないか? あれ、どうした?」
「え? ええっ、あれは、その、ピーピーピーピー♪」
「ごまかせてないぞ!」
「あれは、生前拷問を受けていた影響で精神的に既に死んでたもので、仕方なくゾンビスライムの養分に……」
「ちょ! おま! なんてものに手出してんだコラ!」
「ですから、そいつ用の魂と憎しみが必要なんでゲスよ」
「ざけんなコラ! 本気でぼてくりこかすぞ! 暗黒魔王でも作る気か!?」
「あー、むかし、ありましたねぇ。アンコ熊王」
「誰が桜〇吉の話をしとるかぁぁぁぁっ!」
マジで暴れる五秒前だよ! 奴め、人の負の感情が固まってプログラムの上に書き込まれた神だから、そういう感情を集めてこねくり回すのが大好きときてる。最近もそれでイスラム世界を壊しかけたのに全然反省の色が無い。ぶっちゃけ、こいつ、清水某ごと消滅させるのが世の為だと思うが、神同士の殺し合いは厳重に禁止されている。精々できることといえば、人に神託を与えて、神の殺し方を教える位か。
に、しても、何でこいつ、僕にまとわりつくのかねぇ。
「だって、アニチはなんだかんだ言ってもノリがいいから。最近のイスラム国や、欧米のガキども、日本の【世界を壊したい系バカ】とかを連日相手にしてるとホント気が滅入ってくるんでゲスよ」
「へ~。お前でも、そんな気分になるのかよ。でも、それこそ自業自得ってもんだろが!」
「だから、あっしも自分で破壊神やりたいんでゲスよ」
「いや、それで暗黒魔王作って放つじゃ、一緒じゃないか」
「だって、実体を持たない神なんて、できることといえば、そんな事だけでゲスよ」
「とにかく、今忙しいから、また順平じいちゃんに遊んでもらえ!」
「ひー! ドクちゃまは洒落にならないから、嫌いっすー!」
「やれやれ、やっと帰ったよ。ん? あ、あいつ自壊プログラム置いて行きやがった。騙されるかよ。お! これ改良して使えば、清水某も、次元の狭間で自壊しながら消滅していくな。よしよし、奴の肉体にこれを組み込んで、と。完成! 念のため、魂は抜き取って塩漬けしてから、別に流すか」
こうして、僕は漸く清水某の残骸処分を実行した。だが、この塩漬けした魂が、意外な所で役に立つとは、神たる僕にも気が付かなかった。
塩漬けにしたキャベツ、美味いですね。
一方、流された二人の行方は、次回から。
べたな展開が続きますので、ご了承下さい。