第拾弐話 「恐怖の三者面談」
こうして俺は、神様と、折角手に入れたボーナスポイントを何とか使いこなそうと四苦八苦することになった。なにしろ、最初のステータスからすると、カンストするまで使っても、8000弱。2000000という莫大な数字から見て特に何ができるというわけでもなし。
そして、サブクラスを取得したのだが、いきなり上位クラスを取得できてしまった。が、当面この辺の技能は伸びることは無い。ただ、将来的には強力なスキルが増えるそうだ。
栗栖 賢治 (13歳)
系 統:闘争心系
クラス:<メイン>トリックスター LV.1
<サブ>サモナー LV.1 セイント LV.1 スカウトマスター LV.1
H P:31 →999
M P:20 →999
膂 力:12 →999
技 能:74 →999
瞬発力:123→999
知 力:54 →999
生命力:128→999
魔 力:33 →999
特記事項 戦闘目的武器の装備不可
戦闘目的のスキル取得不可
戦闘目的の魔法使用不可
「ちなみに、系統の欄についての説明がまだだったね。この系統は、生きとし生ける者すべてに共通する系統なのだよ。君の闘争心系は、比較的潰しの効く系統だね。基本、この系統は三種類あって、
一 集 中 系 物事に対して集中して行うか、どうかで判断するタイプ。勉強などが得意。人口の9割はこの系統。常に集中している訳じゃない。集中できない集中系というのも居たりする。
二 闘争心系 物事を冷静に判断して、できる、となれば一気呵成に攻め込むタイプ。戦国武将型。人口の一割弱位がこのタイプ。熱血と冷静のバランスが必要となる。
三 量 系 物事に対して頓着しないタイプ。器の大きい人、などと評価されることが多い。人口比でいうと1%程度。歴史に名を残す人に多い。
で、君は二の闘争心系だから、冷静さと炎のような情熱を持ったタイプの人といえよう。まあ、君は比較的異世界への順応が簡単に出来る大物タイプの人だね」
てれてれするような事を言われてしまった。
まあ、あとはスキルの比較的コストの高いのから、闘争心系に相性の良いものをいくつも取っていくべきとの助言に従って、身体強化系を中心にこんなものを入手してみた。
<パッシブスキル>
・クリティカル確率30%UP
・経験値3倍
・必要経験値1/3
・HP2倍
・MP2倍
・HP回復30%UP
・MP回復30%UP
・攻撃力30%UP
・防御力30%UP
・アイテムボックス超特大
<アクティブスキル>
・必殺攻撃 1/4
・薬効30%UP
・魔法連続行使
・必中攻撃
・3連続攻撃
・幸運
・成功確率10倍
・攻撃力2倍
・ダメージキャンセル
・生活知識大全
と、まあ、こんな感じだ。スキルは各十個の 計20個が限界数なので、これ以上取得できないから、ポイントも相当余っている。ぶっちゃけ、全部合計しても、二万もいらなかった。
「ところで、メインクラスのトリックスターってどんなスキルなんだ?」
「大体君の持ってるスキルそのままだよ。飛んで、跳ねて、受け身を取って、相手を翻弄する力だ」
「だとしたら、LV.1はおかしくないか? これでも、物心ついた時からやってるんだし」
「実際のスキルは似て非なるものなのさ。むこうへ行って実際使えば判ると思うけどね。そのかわり、成長はすごく早いよ。元の技術は持ってるわけだしね」
「そうか。ところで、他の二人はどうしてるんだ? 一緒にいるのか?」
「ああ、じゃ、呼んでみるかい?」
ぱちん! と指を鳴らすと、瞬間神さまの顔が三っつにぶれた気がした。が、一瞬で元通りになったので、勘違いかと思ったら、
「三つの次元に分裂させてた世界を一つに統合したよ。これで、彼らにも会えただろ?」
と、言って十字架を指さす。そこには、両手両足を無くした清水という衝撃的な映像があった。
思わず目を背けて反対を向くと、もっと見たくなかった光景があった。
「あ、ぁぁぁぁ、いっくぅーん」
まさか、あの清楚な松崎さんがオナニーしてるとか。
「流石に君もこのシチュエーションは恥ずかしいんだねぇ。びっくりしたよ」
「サイテーですよ、神さま。 栗栖くんには知られたくなかったのに……」
「で、何も知らない彼の童貞をいただこうと?」
「ええええっ! 何のこと!?」
「きいちゃらめぇぇぇぇーっ!」
「さて、君たちに相談があるんだが、あの清水某の処遇について」
「「普通に話をすすめようとするなぁぁぁぁっ!」」
「今は、痛みと死んだのを無理やり生き返らせたショックで大人しくしてるけど、来た当初はすごく暴れてねぇ。ぶっちゃけ、こいつの気性難は、これまでの生い立ちが影響している。今更矯正は不可能だから、予後不良ってことにして殺処分しようと思ってる。はっきり言って魂を残しておくことも、世界に悪影響が残るんで、処分した魂も次元の外に流してしまおうと思う。さっき、君には聞いたけどこいつを生きて帰しても、合計9人の殺害犯だ。行方不明のまま殺処分にしたほうがマシかな?」
「きゅ、9人も殺したのか?」
「君も見ていたクラスメイトの他に護衛の刑事、トン、チン、カンの取り巻き三人、そして、過去にいじめ殺した二人。そのあと自殺した彼らの両親も合わせれば11人だな。それだけの負の業を背負って生きることも、転生することも、無理があるな」
「私としては、もう見放した人ですので、神様の意向に従いますわ。多分、それが彼にとっても一番いいはずですから」
「え? でも、それでいいの?」
「君も、覚悟してほしいな。彼は、生きてきた過程で選択肢を間違えすぎた。これを修正することは、残念ながら人の身では不可能だ。神の名においてゼロに戻してあげるのが慈悲というものさ」
「……」
「君が気にする必要はない。自業自得の結果だし、なにより手をかけるのは僕の役目だしね」
「それで、いいのか?」
「さっきも言ったけど、僕自身も人殺しはしてる。最近も七人、ね。神の立場として、決断するよ。清水大樹はこの場で予後不良、殺処分が決定した。以後、転生は認めない。彼を不憫に思うなら、君たちは今後も功徳を積んで正しく生きてくれたまえ」
「しかし!」
「それよりも、君たち自身のことだ。お名残惜しいがそろそろ、人の滞在限界時間なんだよ」
「じゃあ?」
「うん。異世界への旅立ちの時間だ。君も、本当にいいんだね? もう地球に戻ることは出来ないし、異世界へも別々のルートで行ってもらうから、あっちで合流できる可能性は少ないよ」
「私なら平気。たとえ一人でも生きていけるし、栗栖くんこそだいじょぶかしら?」
「一応、大丈夫な訓練は受けてるから。それにしても、思い切ったもんだよねぇ。まさか、君まであっちに行くことになるなんて」
「私、夢だったの。いつか、自分の力だけで生きていきたいって。まさか、こんな形で夢が叶うなんて」
「やっぱ、すごいな」
俺は、そこまで割り切れない。
「では、そろそろ、名残惜しいが、おさらばでございます。楽しかったよ。君たちが行った後であいつは処置することになるけど、本当に気にする必要はないからね。新しい生活を楽しんでくれたまえ」
「なんか、最初は胡散臭いと思っていたけど、楽しかったよ。いろいろとありがとう」
「わたしも、いい、思い出ができたわ。ありがとう。神様」
「では、ゲートを開くよ。開いたあとは、身を任せるしかなくなるけど、大丈夫だからね。願わくば、君たちの旅立ちが健やかであるように」
神様がそう言うと、白い円形のげーととかいうものが開き、俺を包み込んだ。
「じゃあ、松崎さん。また、必ず向こうで会おう」
「ええ、必ずね。その時は、いいこと、しましょ♥」
そういって俺たちは別れた。この後、どんな出会い、あるいは再会が待ってるか、今の俺たちには知る由もないことではあるが。
そうして、光とともに、世界が消えた。