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狂乱の【ウエポナー!】  作者: 拝 印篭
序章 とち狂った人々
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第零話 「神器の午睡」

 ついに、本編スタート!

 宜しくお願い申し上げます。

 

 

 

 俺は今、長い、長い、眠りの途中である。


 ぶっちゃけて言うと、俺は〝異世界転生者〟というものらしい。


 この、らしい、というのは、どうやら俺を此処まで引っ張ってきた奴。〝かみさま〟とか言う奴らしいのだが、そいつからの又聞きで、俺自身は一切覚えが無いのだ。


 こいつは、時々現れては、俺と与太話をしていくのだが、そういった関係がここ数年続いているのだ。


 いや、俺の主観的な感覚なので、実は数十年、数百年、あるいは一万年と二千年前からハヒフヘホー! なのかもしれないのだが。まあ、そんな中、その〝かみさま〟って奴はこちらが忘れた頃に現れて色々と益体も無い話をしていく仲なのだ。俺としては、暇をつぶしてくれる得難い友と思っているし、奴の方も、俺相手なら要らない策略だの無駄な交渉だのに時間を取られずに済むと、俺との時間を大切にしてくれている。


 大概は奴が話のネタを持ってくるので、俺は聞き役に回ることが多い。奴の持ってくるネタは、政治、経済、宗教、時事、芸能、と、幅広く何が専門なのか分からなくなるくらいなのだが、奴自身の事と、俺自身のことは未だかつて聞いたことが無いのだ。そうそう、奴のお気に入りのネタがあったな。


 それは、「かわいそうな子の話」 だ。


 別に悪趣味なわけじゃないぞ。奴は心の底から可哀想な境遇の者の助けになりたいと、常に思ってる。


 その一方で、思う様にならないわが身の情けなさを、恥じ入る素振りさえ常日頃から見せているのだ。


 その、「かわいそうな子の話」 の中でも、奴が心を痛めているある案件がある。俺も、何度か相談を受けているので詳しくなってしまったのだが、それは、「いじめ」 とか言う言葉で括られている。


 はっきり言って、戦闘行為の末の「弱肉強食」というなら、まだしも納得がいくのだが、どうも、そういう世界の話ではないらしい。対等の立場での戦いというならば、俺自身ばっちこい! なのだが、要は、相手が反撃出来ない境遇に貶めてから、自分だけは安全を確保したうえで、肉体的にも精神的にも痛めつけて遊ぶ、という遊戯があるそうだ。いけ好かない話である。


 お、噂をすれば、神ってやつか? 


「やあ、久しぶり」


「やぁやぁ、久方ぶりだね。ところで、何を独り言ちてたんだい?」


「ああ、よく考えたら俺、自分の事全く覚えてないんだよな。それで転生とか言っても、過去のこと知らなきゃ最低限のチートですらないんじゃね? と思ってね」


「ああ、確かに」


「まさかとは思うけど俺って例の いじめ で死んだんじゃないのかな? と思って」


「いやいや、それだけは無いよ。むしろ、君は強者の側にいたんだ。【鋼鉄の王者】と呼ばれた事もある、優秀な、そして歴史に残る偉大な戦士だったんだよ」


「マジで!?」


「それも、一度ならず何度も復活した不屈の王者だよ。ただ、余りにも過酷な戦いの連続に君自身の体は蝕まれていったんだ。でもね、君の最期の姿はとても偉大なものとして、人々の記憶に残るものだったよ。だからこそ、僕は君を異世界にとはいえ、転生させたんだ」


「しかし、転生したはいいが、何もすることが無くて、こうしてうだうだしてるのはどうしてだ?」


「それは、時がまだ満ちていないだけのことさ。必ず君の必要とされる時がくるよ。それも、そう先の事ではないね」


「それまでは、惰眠を貪っていろと?」


「なに、君は十分闘って来た。今は、体を休めて英気を養っていると思ってくれたまえ」


(それに、こうして充電していることで君の力はどんどんパワーアップしてるんだし。現にこうして意志の疎通まで出来るようになったじゃないか)


「な~んか、はぐらかされている様で、ちと気持ち悪いな」


「そんな事ないよ。君は、大事な友達なんだから。ただ、いずれ、お別れの時がくるだろう。君は、その時、僕ではない人の為に闘う決意をするのだろうな。それが寂しくないといったら嘘になるだろうね」


「君じゃない誰かの為?」


「いや、失言だったよ。忘れてくれたまえ。こんな嫉妬みたいなこと、まるで、人間みたいじゃないか」


「神なんて、人の上位互換ってだけだろ?」


「ぶっちゃけるねぇ。でも、成程確かに。〝神なんて人の上位互換ってだけ〟 か。今度使わせてもらうよ。そのフレーズ」


「ロイヤリティーは期待していいのかい?」


「勿論だとも。何某かの奇跡を献上するよ」


「そりゃ重畳。ふぁぁぁぁっ、そろそろ眠くなってきたな。悪いね。おもてなしもしないで」


「なに、君の今の仕事は〝休む事〟だからね。こうして将来に備えることも悪いことじゃないのさ」


「それじゃ、また。お休み。ぐっない!」


「ああ、良い夢を」


 そうして、いつものように意識を手放す。これまで何度も何度も繰り返したやり取り。


 だが、もうすぐそれも終わりの時が近づいているのだ。それを楽しみにまたまどろむとしよう。





 ……お休み、ぐっない。





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