破壊活動
赤い石のピアス。
シルバーリングのピアス。
十字架のイヤーカフ。
少々きつすぎる何の香りかよくわからないただ甘い匂いの香水。
ワックスでオシャレに盛った赤茶色の髪。
ゴツゴツしているかなり邪魔なリング。
キラキラ光る細いブレス。
タバコ。
酒。
一つでも欠けたら、オレはどうなれるのだろうかと夢を見る。
なれるはずのない人間を思い描きながらなぜオレは、こうなったのかを思い出す。
去年の夏、
2年の夏
どうしても、
どう頑張っても
テストの点が上がらずに困っていたことを思い出す。
『鏡』は志望校に行くために着実に点を挙げてきている
それが、さらにオレを焦らせた。
いつもそうだ。
オレが悩むことがあったら常に
原因は『鏡』だ。
そんな『鏡』はオレにこう言った。
「やっと僕はキミを上回ることができた。」
「キミが頭がよくてみんなの人気者なのは知ってるよ。」
「だから、僕もキミみたいになるんだ。」
「だから、もうキミはいらない。僕がキミになるんだから、二人もいらない。」
「言ってる意味くらい分かるよね?」
気づかぬうちに立場が『鏡』と逆転していた。
『鏡』はオレの代わりにクラスの人気者になり、
オレは『鏡』の代わりにクラスの嫌われ者となった。
そんな時、ピアスや甘い香水はオレのぽっかり空いた心を埋めた。
寂しくなったときはピアスの穴をまた、一個、もう一個寂しさが埋まるまで開けた。
そしてそれをピアスで埋めた。
虚しくなったときは、香りのきつい香水を空っぽの俺に振り掛けた。鼻がおかしくなるまで。
いつまでも、ずぅーと香りが残るように、もう一生虚しくならないように。
それからオレは、夏休みの間に、いろんなものに手を染めた。
周りが分からなくなったオレは、次第に先生達からも嫌われるようになった。
今になって思う。
なんて馬鹿なことをしたんだ。
今さら更生することもできない。それは今までの自分を否定しているようで恥ずかしい。
弱いオレ。
もう、いいや
このまま、ずうっと
どうにかして生きていこう
進路希望調査票に
松本海
元人気者の名前を書いて、オレは今日を終わらせた。