「終わり×始まり」
今日は満月の綺麗な夜だった……
それは、斬撃が飛び交い、水がボク自身の体を取り囲む。
拝啓
父さんと母さんへ
ボクはもう無理そうです……
いったいなぜこうなったのだろう……
◆◇◆ ◇◆◇
ボクの名前は|赤星朱音≪あかぼしあかね≫
今、幸福の絶頂いる!
というのも、
・登校してるとき100円を拾う。
・国語の宿題をしてこなかったのだが、国語担当の先生が急な用事で休み
・給食のプリン争奪戦(ジャンケン大会)で一位入賞!
・さらに、嫌な体育の授業も急な通り雨で見事になくなる。
・帰ったら新作ゲームを買いに行こうとすると、親からの仕送り
などなど……
今日一日まさにいいことづくめだった。
そして帰ってやることはもちろん……
新作ゲームをやること!!!
「3日間連続で晩飯を我慢した買いがあったよ。協力プレーが可能なんだし誰さそおっかな♪」
喜びの余韻に浸りながら道を曲がる。
その時、ボクは何かにぶつかった。
「いたた……ごめんなさい」
「ちょっと、どこ向いて歩いてるの」
ボクは驚愕した……
だって、ボクの前でしゃべってるのは人ではなく……
妖精だった。
「謝れば済むって問題じゃないんだけど、まったく人がのんきに空を飛んでる時に……っていけない」
「じゃあボクはこれで、バイバーイ」
とにかく急いで帰った。
(あれはなんだ?……あれだ、最近有名になっている小さいおっさんの親せきの小さい姪っ子だ。絶対そう。そうに決まってる)
なんとか焦る気持ちを抑えながら帰宅。
とりあえず水を飲んでいざ自分の部屋へ
「おかえりー」
なんかちっこいのが机に座ってるうううううううううう
「あんたはあたしの姿が見えるんだよね、だったらここに住んでもいい?」
意味が分からない。
今まで起きたことをわかりやすく頭の中で整理してみた。
今日はラッキーデー!
↓
しかし帰る途中ちっこいおっさんの親せきにあう。
↓
何も起きず無事帰宅
↓
だけどその親せきを家に住まわせることに
おかしい。絶対何かがおかしい。
(こんなのおかしすぎる、わかった、今日はラッキーデーだから座敷童のたぐいのあれだ。ということは、コイツを住まわすことによってボクは億万長者のノハウハ生活を送ることに……)
「よし、すまわそう」
「いいの?ヤッター。そうだ、おなかすいたからごはん」
ん~、この場合どうすればいいのだろう。
第一、妖精なんて初めて見たから何食べさしたらいいかわからないよ。
「ちょ、ちょっとまってて」
と言いつつ下に行ってみる。
キッチンには……あった。ポッキーとポテチ。
(こんなのでいいのかな……)
と思いつつ、2階の自分の部屋へ
「なにこれ?」
「こっちの細いのがポッキー、あっちのはポテチね。あけといたから好きなほうどうぞ」
「やったー、こっちのごはん初めて♪」
さぁ、今から始めるか。
「ねぇねぇ、おかわりないの?」
「おかわりねぇ……」
(ん?早くないか?)
ゲームのセッティングで忙しかったボクの目の前にあったのは…
お菓子の袋の残骸だけであった。
「ねぇったら、あ!名前教えてもらってなかったね。あたしはファイン。よろしくね」
「ボクは赤星朱音、ってこれ全部ファインが食べたの?」
「うん、そおだけど」
セッティングにかかる時間は約18秒、
その18秒間にいったい何が起きたのだろう…
「とりあえず、お菓子買いにいこっか」
「うん!わかった!そうだ、あたしも行く!」
って今の時間帯は6時58分
別にこの時間が特別遅いわけではないが、夕食を食べるにしては遅い時間帯
(お菓子買いに行くついでがてら夕食のカップめんを買いに行くか……)
ため息交じりに財布の中身を確認し、いざコンビニへ
※ちなみにファインはフードの中に入れときます。
「フフフ~ン♪っと……うわぁ」
そこには不良(っぽい人)が……
幸い一人だったので
(絡まれるのは嫌だから目を合わせないように……)
悪友曰く「最近ガラの悪い輩が多いから気を付けとけにゃ~」って言ってたから気を付けないと
そして不良(っぽい人)の前を通り過ぎようとしたその時
「おい、てめぇ。ちょっくら聞きたいことがあるんだが」
「すみませーん、お金は持ってないんで……」
秘儀「謝り走り」
説明しよう、謝り走りとは謝りながら走ることによって走ってきた不良から逃れれるという秘儀なのである。ただし、ボクは帰宅部なので体力がない=体力のある奴に当たると一発KOなのである。
(さぁ、どう出る?)
ボクはこのまま逃げる→コンビニ→走りながら帰宅という方法を取ろう。
「まずいよ……一番最悪な状況だよ……」
ファインが不安そうな表情でボクに話しかける。
「え、なんかまずいことでも?」
「だってあいつらは、『セレクト』だよ」
「『セレクト』って不良かなんかの集団の名前?」
(『セレクト』って、名前ださっ)
「『セレクト』は………う~ん……なんていうんだろう……とにかくあたしはあいつらに追われてるの!」
「ハハハ、まったくファインったら、冗談上手いな。第一、一人なのにあいつらって文法がおかしいよ」
「ちがう、おそらくもう一人の能力は自分の体を見えなくするような能力だと思う」
(そんなわけないじゃないか。自分の体を見えなくするって……)
「あったりー!」
シュパッ
「うおっと」
何とか受け身を取ると後ろにあったちょうどいいゴミ箱が見事に真っ二つに…
「私の名前は『戦闘部隊SENo007宇奈原七海』。依頼内容は『鍵』の奪還」
「『鍵』ってなんなのさ?」
「『鍵』は、あなたの頭の上にある……それよ!」
ビュッ
「うぉおっと」
まさか……ただの水でコンクリートに穴が開くとは……
「さあ、返しなさい。あなたが何仕出かすかわからないから」
「わかったって、返すから……」
「お願い、あたしまだ帰りたくないの……せっかくこっちの世界で友達できたのに……」
「友達って……」
ピンチのくせして笑って
「それは、朱音にきまってるじゃん」
友達……か。
「わかった、なら今から君を全力で守るから」
ボクも笑顔で返し、
思いっきり逃げた。
「あ、逃げた」
まずは逃げるが勝ちって言うじゃん。
それにあんな化け物みたいな人たちに勝てるわけないから。
ブォォン!
っておわああ、まさか大剣が振り下ろされるとは……
「ったく、だりいなぁ。次は逃げるなよ」
ってさっきの不良(っぽいやつ)!!!
冗談じゃない。ただでさえ怖いのにあんなもの持たれるとは……
そして不良(っぽいやつ)は大剣を構え、
「そーいや名前言ってなかったなあ、えーと……だりぃ、斬火雄竜樹。覚えとけ」
そして大剣を振り下ろす……ってイヤーン。
「竜樹くん、だっけ。こんな無益な争いやめようよ。ここは平和的に交渉しよう。交渉!」
「何言ってんだ?俺が交渉するわけ……」
「ちょっと待って」
と誰かの救いの声。
声の主はなんとさっきボクを追ってた、水になれる人。
「あなた、『裏』の世界についてどれくらい知ってる?正直言わないと……窒息死させるから」
怖い。発想が怖すぎる……
第一、ファインから『裏』の世界のことなんて一つも聞いてない……
(このパターン映画で見たことある。確か今のボクと同じような境遇の人が「わからない」っていってフルボッコにされた……しかも人違いだったっていうオチで……)
ってこれじゃあ死確定じゃん!!!
とりあえず、
「本当に何も知らないんです。だから命だけは見逃して!」
「本当に?ならその『鍵』を返して」
「鍵って……家の鍵なら……」
「ちがう。私が言ってるのはあなたの頭の上にあるファインって子だったかしら?その子を渡してほしいの」
「な、なんでだよ、鍵がほしいのになんでこの子を奪おうと……」
「だぁかぁらぁ、その妖精が『鍵』なんだって」
うん?何言ってるのこの人は?
「その子は『裏』とこっちに唯一干渉できる『鍵』なの」
「おい、それって言ってよかったっけぇ?」
「そんなの常識だからいいでしょ。そんなことより早く返して」
「だが断る」
「おいおいおい、自分から助けてって言っといて命を断つような真似しちゃってさぁ……おいナナ、交渉決裂で構わないかな?」
(ひゃあああ、やめて!)
「ダメ、だって昔のあんたもそうだったでしょ……守りたいものを守ってたじゃない。だからこそ提案があるの」
提案?この際どんな提案でも乗ることを決意。
「二度といわないから聞いて、あなたもその『鍵』も助ける。そのかわり……」
こうしてボクの日常が終わりを告げた……
いいや恐ろしい非日常が始まったのかもしれない……