その選択に世界は歓喜する《5》
客室らしきところに連れてこられ、しばらくベッドに横になっていたが、ちっとも良くなった気がしないので、とりあえず部屋の中を歩き回って消化を促してみる。
(うー……苦しい…)
かなり広いがどうやら一人部屋らしい。
おかげで誰かに見られるということはない。
隠れて監視とかは……してないと思いたい。
だって、腹押さえて前屈みで部屋を徘徊するヤツってどう見たって変質者だよな……
…うゎ〜自分で言っててへこんできた…
ていうか……だんだん気分が悪くなってる気がするんだけど………
お食事中の皆さんゴメンなさい。吐いてきてもいいですか…?
「ふぅ。ちょっとだけすっきり」
前屈みの状態から脱したオレは、やっと意識を外側に向けられるようになった。
部屋には明かりがついてなかったが、窓から入る月の光で仄かに明るいことに今更気づいた。
大きめに造られた窓に寄り、夜空を見上げる。
「…おぉ〜」
そこには見慣れたものよりも大きな月があった。
「どおりで明るいはずだな」
包み込むような柔らかな光の幻想的ともいえる景色に、感嘆のため息をつく。
「…はぁ…」
ふいに、目からも何か出そうになったが、そこは耐える。
「吐いちゃったし、魔力増量はしてないよな〜?
寝ればちょっとは増えるか…?」
魔力の量によって寿命の長さが決まる。
どういう原理なのかはわからないけれど、それは健康状態にも影響があるんじゃないだろうか。
ずっと気にしないようにしてきたけど、この世界に来てから少しずつ体調が悪くなってきてる。
「つーか、どういう仕組みで増えてるんだ?睡眠や食事って、イメージからすると増量より回復な気がするけど……」
自分は魔力の量が少ない。
金髪美少女や他の見知らぬ人たちすべてから同情される程に。
その意味を考えると怖い結論が出そうで、わざとズレたことを声に出して言ってみる。
「それは体力の話か…。……う〜ん…体力と魔力の違いがわかんなくなってきた。明日聞いてみるかな?深沢わかるかな…?」
もし、このまま魔力が増えなかったら…
「言葉がわかれば他の人に聞けるんだけど……わかんないんだし…仕方ないか…ないよな〜…」
言葉って大事だなと、ここにきてやっと思い知る。
だいたいのことはジェスチャーでも伝わるけれど、気持ちを伝えるにはそれだけじゃ足りない。
「…よし。とりあえず、寝るか!」
考えたって解決策が出るわけじゃない。
(もしかしたら、明日になったら解決策があっさり見つかるかもしれないし?)
我ながら楽観的な考えだな〜とは思うけど…
せっかくの異世界ライフだし楽しまないとな!
そうと決まれば、
おやすみなさいっ