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その選択に世界は歓喜する《4》


勇者の従者にすらなれないと判明してしまったオレは、その後のこの世界についての説明を屍のようになって右から左に聞き流していた。

言葉がわからないから、聞いても意味はなかったし。


でも言葉を理解しようと努力はすべきだったかな、とちょっとだけ思った。

反省。…ちょっとだけな。


「で?結局なにがどうなわけ?」


目の前のテーブルにはたくさんの種類の料理が並んでいた。

時刻はすでに夕食時。

オレはこの時まで屍と化していたわけだが…

言い訳をさせてもらいたい。

召喚されたとき、こちらの時刻は昼だった。あちらの世界ではすでに夕方だったのに。

本来ならもっと早い時間に食事をしていたはずなのだ。

…つまり何が言いたいかというと。


(腹がへった!!)


単に空腹で動けなかったのだ。そういうことにしておいてほしい。

魔法が使えなかったからといって、へこんで泣いてたわけじゃないのだ。けっして。


「ん…、この世界は魔王によって危機に晒されている、というのは話したよね?」


「おぅ。で、その魔王を深沢が倒しに行くんだろ?明日行くのか?日帰り?」


話しながら食べるのは行儀が悪いかもしれないが、腹へったし。


(遠慮せずにいただきま〜す♪)


会話の途中で食事を始めたオレを苦笑しつつ眺め、深沢も食事を始める。


はむはむはむっ……はむはむ……………はむ………




(……あ〜……何て言えばいいのか………

……味がしねぇ………)


美味しそうな見た目とのギャップのある味(無味だけど)に、オレの口の動きが一瞬止まる。

ちらりと深沢を見れば、普通に美味しそうに食べていた。

招かれざる客でありながら、勇者と同等のもてなしをされている。それなのに、口に合いませんとか我が儘は言えないだろう。表面上は深沢も文句はないようだし…

オレは事なかれ主義者なのだ。ここは無難に『黙る』を選択しよう。


「魔王討伐はまだ先の話だよ。一緒に行く人たちを選ばなきゃいけないらしい」


「そうなんだ?」


意外とゆっくりなんだな、と思う。元の世界に戻るのはまだ当分先の話ってことのようだ。


「この世界には三つの国があって、その三つの国の先に魔族と呼ばれる人達の住む地があるんだって。そこに魔王はいるみたい。…ここからはずいぶんと遠いみたいだから日帰りは難しいと思う」


苦笑しながら深沢は簡単に説明してくれる。

全部の質問に答えようとするとことか、やっぱり律儀な性格してるよな。

律儀といえば、魔王も律儀なんだな。魔族の地?にいる、ということは、そこに留まっていて他の国には行ってないってことだろ?

なら別に、世界的な未曾有の危機!?…ってわけじゃなさそうだけど……

なんで魔王討伐とかいう話になってるんだろう?


「それより。この世界の人達の寿命は魔力量で決まるんだって。なんとも不思議で理解できないんだけど」


オレの疑問に思った事をあっさりスルーし、深沢は話題を変える。

勇者には心を読むという能力はないらしい。


「なんだよ、ソレ?魔力がいっぱいあると長生きするってことか?」


「みたい」


なんだかちょっと引っ掛かるが…


「えぇ〜…。ってことは、魔力あんまりなかったオレは長生きできないってこと?」


「ん〜、魔力は増やすことが出来るらしいから、そうでもないんじゃないかな」


「ほぅほぅ。……増やすって、どうやって?」


なんだか質問ばっかりで恥ずかしいな〜異世界だし言葉通じないし仕方ないのかもだけど…


「睡眠や食事で増やせるって言ってた」


ウザがらずに答えてくれる深沢には感謝だな。

オレが深沢の立場だったら無視か睨むかどっちかだな。絶対。


(オレってば、ちっさい人間だね〜)


ちょっとぐらい深沢を見習ったほうがいいかもしれない。

……まぁ、それは後でもいいか。

それより今は、魔力増量のためにたくさん食べることにしよう。味しないけど。


魔力が増えれば、もしかしたら従者ポジションもらえるかもしれないし。

…力がなくても魔王討伐には連れてってもらえるかもしれないけど、何もしないで守られてるだけってのは、男として以前に人としてどうかと思うしな。


で、張りきって食べた結果。






「…うぅ…っ…食べすぎた……」


「高崎って極端な性格してるんだ?」


呆れた顔した深沢に、疑問形で断定された。

……自分でもやりすぎたな〜とは思うから否定できない。

あほだろオレ…。




マジで食べすぎて動くのも難しかったオレは、深沢と給仕をしてくれていた人(女性)数名に部屋まで運ばれてしまった。




…………情けなさすぎるぜオレ。


泣いてもいいだろうか………


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