その選択に世界は歓喜する《3》
くさってても仕方ないので、駄目モトで行動に移してみる。
「せめて従者ポジションを!!」
魔王討伐なんて(たぶん勇者一人でやれる)そんな素敵イベントを見逃すわけにはいかない!ぜったいに特等席で見るのだっ!
「勇者なら足手まといの一人くらい余裕だろ?連れてけ」
なんだか偉そうなセリフになってしまったが、それを律儀に美少女へ通訳してくれたらしい深沢に、自分の心の狭さを思い知らされたような気がしてなんだか悔しい。
だってあっちは勇者でこっちはただの巻き込まれ。
つまり招かれざる客ってことだろ?
八つ当たりしたくなっても仕方ねーよな?
……つーか、誰にイイワケしてんのオレ。
「高崎。まずは部屋を移動しましょう、だって」
…いや、そんなキッチリ通訳してくれなくてもいいんだけど……深沢ってほんと律儀だったんだな…
先程の部屋から階段を下り通路を歩いた先にかなり広めの部屋(もちろんすべて石造り)があった。
「ーーーーー」
美少女が何かを言って深沢に棒のような細長いものを手渡す。
それを深沢は躊躇うことなく引き抜いた。
……どうやらあれは剣だったらしい。
剣ってもっと大きくてゴテゴテした装飾がされてるもんだとばかり思ってた。
(…つーか、剣って。ホントにファンタジーだな。このぶんだと魔法もあるのか?)
期待でわくわくするな〜
やっぱ一度は使ってみたいよな?魔法っ!
ガキィィィィンッ!!!
いきなりの轟音にびびるオレ。
何事かと思って見れば、深沢が美少女の護衛(?)の男の人と剣の打ち合いをしていた。
そしてあっさり圧勝してしまう深沢。
(………うゎ…お約束なチート…羨ましすぎるっ)
汗もかかない清々しさで、戻ってきた深沢はオレに剣の柄を向ける。
受け取れってことだよな?と思ったオレは素直に剣を握る。と同時に剣を離した深沢。
「うぉわっ!」
あまりの重さに剣を落としてしまった。いやまだ一応柄は握ってはいるが。
こんなに剣が重いとは思わなかった。だって深沢は普通に持っていたのだ。片手で。
(そうだった…深沢は勇者なチートだった……ん?いや待てよ?)
違和感があったので記憶を巻き戻す。
……そういえば深沢に剣を渡したのは美少女だった。片手ではなかったが、それほど重そうなかんじではなかった。
(と、いうことは?)
深沢(女)
▽
金髪美少女(か弱そう)
▽
▽
▽
……オレ?(最弱!?)
(いやいや待てオレ。そこは認めたら男の尊厳がなんとかかんとかだぞっ)
再度、剣を握る。
今度は力を入れて持ち上げてみる。
(う、腕がぷるぷるする…マジ重っ)
言われなくてもわかる。
今の自分の格好は大変に情けないものであると。
だから……
「ごめん。高崎」
だから。
(横からさらりと奪ってくんじゃねーよっ!
いやこんなクソ重いだけの剣なんて落としてやろうかと考えてたとこだったけどさ!)
………どうやら認めざるをえないようだ。
そう、
(オレは前衛には向かない!!)
ならば後方支援。つまり、魔法だ。
「あるんだろ?魔法」
どういう理論展開だ、とか言われそうだが気にしない。
オレの言葉を深沢に通訳してもらった美少女は、なにやら小さな宝石箱のようなものを持ち出してきた。
コッテコテに装飾された蓋を開けると、中には鏡のような反射板が埋め込まれていた。
その上に深沢が手を翳すと、視界すべてを覆い隠すようなまばゆい光が溢れる。
数瞬のことだったけれど、目に光が焼き付いて痛い。
「高崎も」
深沢に促され、オレも同じように反射板に手を翳す。
深沢と違い、一瞬だけ弱々しい光がほんの少しだけ立ち上る。
先程の深沢の光の残滓のせいで、見間違いじゃないかと思えるくらいの脆弱な光だった。
おそらく、一連の流れからして今やったのは魔力測定ではないかと思われる。
(………深沢、どんだけチートだよ…)
自分と深沢との力の差に呆れながら回りを見回すと、やはりというか……とってもとっても同情したふうな視線をみなさん送ってきていた。
美少女なんか、この世の終わりというぐらいの悲しげな表情をしている。
(え?あれ?深沢がすごいだけじゃないの?…逆?オレがだめだめなの?)
……ここでも認めなければいけないらしい。
オレに魔法の才能はないのだと。
マージーかーよー
最弱決定?足手まとい決定っすか??
はぁ…頭くらくらしてきたな〜
魔王退治…連れてってもらえるかな………