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その選択に世界は歓喜する《2》

気がついたら地面に両足ついて立っていた。(いや、今までも立っていたから、その表現はおかしいかもだけど…)

とりあえず両手をにぎにぎして感覚を確かめつつ身体の向こうが透けて見えないことを確認する。


(うん。透けてない霞んでない大丈夫。……だけど…)


床を見つめる。

俯いた視界は広くはないが、見える床一面に赤い絨毯のようなものが敷かれてある。


(なんで赤い絨毯??)



「ーーーーー、ーーー」


突然、話しかけられて慌てて顔を上げる。


(うお〜ぅ。金髪碧眼美少女っ!!)


さらさらの手触りの良さそうな長い髪、布をたっぷりと使った白い服。可憐さの中に凛とした気配を同居させた少女がそこにいた。


(どっかのお嬢様か?なんか後ろに取り巻きとボディーガードっぽい人がいるし…)


その全員が、美少女と同じような外見と服装をしていた。

しかも華美ではないが、装飾品をいくつか身につけている。


(変わった趣味だな。コスプレなのか?なんとなくだけど高そうだな〜特に装飾品)



「えっと…誰……ですか?」


失礼にも初対面の人たちを品定めしているオレの横で、深沢は明らかに日本人ではない彼らに戸惑いつつも話しかける。


「ーーー、ーーーーー。ーーーーー?」


(民族衣装なのか?ていうかあの髪と服、長すぎだよな〜絶対引きずるよ。汚れるのとか気にしないのかな?)


相手の言葉がわからないのをいいことに、品定めを続行するオレ。

深沢も言葉がわからないらしく、オレに戸惑ったまま視線を送ってくる。


―――わかる?


視線のみで話しかけてくる深沢に、わからないという意味を込めて肩をすくめてみせる。

オレたちのジェスチャーの意味を間違いなく美少女たちも理解したようだったが、そもそも最初から言葉が通じないことがわかっていたのか、お構いなしに話しかけてくる。


「ーーーーー。ーーー、ーーー」


それはさておき。

どうあっても理解できそうもない言葉を聞き流しつつ、たった今気づいてしまったものを見なかったことにするべきかオレは悩む。


(あ〜……オレってば視力がいいのって割と自慢だったりするんだけど……)


視線は窓の外。

踏み締める赤い絨毯も、年期の入った石造りの室内も、緻密な意匠を施された窓枠にもツッコミたい気分なのだが、それより……


(島が浮いてる……)


窓からはまだ高い位置にある太陽と青い空が見えている。大地は見えない。

遠目にだが、その空に浮いた島には豊かな緑があるように見え、そこから落ちる水(川?)が太陽の光を反射して幻想的に煌めいていた。もしかしたら自分の今いるこの場所は高い所にあるのかもしれない、と思う。


自分は校舎の一階にいたはずだ、とか、時間帯は夕方に近かったはず、とか、そもそも島は浮かないだろ、とかはきっと気にしてはいけないんだろう。


(うん、きっとそうだ。自分は夢を見てるんだ。もしくはリアルなアトラクションにいつの間にか連れて来られたんだ。もしかしたら異世界かもなんて、まかり間違ってもそんな期待をしたらダメなんだ!)


わけのわからないことを考えながらもかなり期待しつつ、外見は平静を保つ。

だってもしかしたらコレはかの有名な勇者召喚イベントかもしれないんだ。もしかしたらもしかして勇者になれるかもしれないのだ。ヘタな態度は避けたほうが無難だろう。


(きっと勇者だったらいついかなる時でも取り乱したりはしないんだろう。貴方は勇者ですだから魔王を倒してきてください、とか言われても大丈夫なように心の準備をしておこう。うんうん。)


見知らぬ場所=異世界=勇者召喚。などと、妄想とも言う思い込みを発揮し、小説の中の主人公になった気分で興奮していると、


「えっと…、ーーーーーー?」


深沢がいきなりわからなかったはずの言語で話しはじめた。


(……………いやわかってたけどさ。どう考えたって勇者は深沢のほうだって。…………そうなると自分は魔王か?……いやだからわかってるよ?器じゃないって。………せめて勇者の従者とかのポジションに付けないかな〜)


深沢は言葉を理解したらしいが自分はまったく何を言っているのか理解できないので(深沢はオレとは頭の出来が違うらしい)、美少女たちと深沢が話している間のヒマつぶしにどうでもいいことを考えてみる。

異世界だとか勇者だとかはオレの願望だ。最近そういった内容の小説を読んでいたから自分に当てはめて、だったらいいな〜と妄想してみただけだ。

だって本当にヒマなんだよ。…つーか、ココどこだよ?

見たかんじ、RPGとかでよくあるようなファンタジーっぽい所。中世ヨーロッパ風?

どこのアトラクションだよ。

言葉がわからないから会話に混ざれないし。一体何がどうなってるのか聞こうにも、深沢は美少女たちとの会話で忙しそうだし。


「高崎。言葉……わかる?」



「(ん?何、やっと通訳してくれる気になったのか?)いや。全然。まったく」


わかりません。と、言葉と態度で示す。

ここで見栄張ってわかるとか言ったらバカすぎるだろう。

もちろん()の部分は口に出してないぞ?


「……あ〜…うん…、なんていうか…。彼女たちが言うには、ここは…えっと…異世界……らしい」


(…………マジで?)


マジですか?マジなんですか?……マジなんでしょうね〜。


「(とりあえず頷いておこう)…へ〜ぇ」



「それで、えーと…。」


めずらしく(と言えるほど親しくはないけど…)深沢は言葉に詰まりつつ説明してくれる。

簡単に言うと…


ここは異世界であり、召喚という儀式でもって勇者を呼び、その勇者が深沢で、元の世界に帰るためには魔王を倒さなければいけない(魔王のポジションは埋まってた)らしい…

いわゆる、異世界トリップの王道パターンのようだ。


そしてこれが一番大事なこと。

オレのことについて、……どうやらオレってば単に召喚に巻き込まれただけ…のようだ……(金髪美少女はじめ皆が同情した顔をしていた)


……あぁそうかもなって思ってたけどさ。


思ってたけどさっ

そんなに皆して可哀相な人を見るかのような目しなくてもよくない?

傷痕に塩塗りたくってるって自覚はもちろんあるんだろうな?


…………ちくしょー。。。


せめて従者のポジション用意してください!

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