表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/21

遭遇?ミルミルと海の精霊石《4》

次の日。

昨日のことが嘘のようにゆったりとした時間が過ぎていた。

幸いにも筋肉痛には襲われなかった。

メイドさんたちに貰った服の効果かもしれない。


ぼーっとしていたら、料理を作るのを手伝ってくれと言われたので食堂へ行く。


「おう。坊主、これをテキトーに切って鍋ん中に入れてくれ」


そう言われて見ると、芋が山積みになっていた。


(…え?これ全部?)


皮は剥かなくていいらしいので、そのまま一口大に切っていく。


切りながら世間話として昨日の一人勝ちの話などをしていたが、ネタがきれて黙ったままもくもくと芋を切っていく。


(…飽きてきた)


何か話題はないだろうか?話していれば気も紛れる。


(…向こうの世界の話なんてしても通じないだろうしな〜)


何かないだろうか?と思って鍋を何気なく見たら、どーも見覚えのある料理が出来上がろうとしていた。


(あれって昨日食べた料理っぽいけど…?)


まだ仕上がってはないので、もしかしたら途中までの過程は同じで、これから別の物になるのかもしれない。…でも気になる。


「あの、それって昨日のと同じメニューですか?」


「おう。昨日どころか、『サロク・ロクフ』に着くまでの一週間、ずっと同じメニューだぜ!」


オレがそう聞くのをわかってたみたいに笑いながら答えられた。


ずっと同じ?一週間も?


味はおいしいんだけど…

飽きそうだな〜


料理人のおじさんに聞くと、船に積める物は限られるため、どうしてもそうなってしまうらしい。


「うぅ…せめて釣りができれば魚が取れるのに」


と言ったオレの言葉を聞いた料理人のおじさんは、だったら取って来たら夕食に出せるからよろしく頼むと言ってきた。

おじさん、取れると思ってないな?



と、いうことで、昼食をとった後、リノと二人で釣り糸を垂らす。


「あのさー、ゼン。動いてる船からやって釣れるのか?」


釣竿の道具はリノに作ってもらった。ギルドに登録していたらしく、あのなんでも入るやつを持っていた。お兄さんのはベルトの小物入れだったけど、リノのは細長い板だった。あれがギルドカードになるらしい。

竿っぽいのと糸と針で手作り釣竿の出来上がりだ。


「どうかな〜?気合いでなんとかならないかな?」


こちらの世界では釣りはあまりやらないらしい。

釣れるまでのんびり待てないんだそうだ。

リノが釣竿を持っていたのは、漁師の息子で興味があったからとりあえず道具だけ手に入れてみただけらしい。


「気合いねー。この船、結構早いよ?」


そうなんだよね。この船やたら早いのだ。

動力は何なのだろうか?


「気分だよ気分〜」


どうせやることがないんだから、ゆっくり釣り気分を味わっておこう。


…と思っていたら、船が大きく揺れた。


「うわっ?!」


「っ!ゼン!中に入ってろ!!」


そう言うや、リノは船の前方へ走っていった。


(まさか、魔物?)


リノの表情は険しかった。何かがあったのかもしれない。

もちろんオレに出来ることがあるとも思えなかったので、ビィを腕に抱いて忠告通りに船室へ向かう。


直後、空気を切る音が聞こえたので、感にしたがって立ち止まる。


ダンッッ!!!


と、いう大きな音と共に巨大なタコの足が目の前にたたきつけられた。


(でっかいタコ!?)


やっぱり魔物か!

ど、どうしよう。

通路はタコによって塞がれている。ここを通らないと船室へ行けないのに…。


どうしようと思いながら巨大なタコ足を見ていたら違和感に気づいた。


(タコ足に鱗がある!)


え?タコって鱗あったっけ?とどうでもいいことに気を取られる。


目の前のタコ足が動かないのをいいことに、オレは触ってみることにした。


(おぉ〜スベスベだ。ぬめってない。鱗キレー)


我ながら危機感に乏しいとは思うが、このタコ足が危険だとは思えないのだ。


(攻撃するつもりじゃない気がする。…んー、何かを訴えたがってる感じ)


根拠はないが、そんな気がする。


「グ〜」


そんなことを考えていたら、いつの間にかビィがタコ足の上にいた。


「お、ビィはチャレンジャーだな!」


ビィはオレを見た後、タコ足を本体のほうへ登っていく。

そして時々振り返る。


「ついて来いってことか?」


「グゥ」


まあ、タコ足は大人しくしてるし、でかいから海に落ちるってこともないかも?


ということでタコ足によじ登ってみる。鱗が滑り止めになって、思っていたより歩きやすい。

それでも落ちないように気をつけながらビィを追いかける。

本体のほうに近づくにつれて、乗組員や腕に覚えのある乗客たちがタコ足の持ち主を追い払おうと奮闘しているのが見えた。

オレから見えるってことは、当然向こうからも見えるってことで…


「何やってんだっゼン!早く降りてこい!」


リノに怒られた。

登ったのはビィが先なのに…


「ビィ。リノが怒ってるよ。戻るぞー」


ビィはタコ足の根本らへんに座ってオレを待っていた。

タコ足の持ち主はそれがわかっているのか、他の足は動かしているのに、そこだけは動かそうとしない。


「何かあるのか?」


結局オレも根本まで行く。ビィを抱き上げようと膝を付いたら、ビィのいる場所の鱗と鱗の間に黒っぽい何かが突き刺さっているのに気づいた。


「なんだ?コレ」


それを抜いた途端、オレとビィはタコ足によって投げ出された。


「うわっ!ビィ!」


空中でビィを掴んで抱き込む。そのまま甲板にたたき付けられるのかと思っていたら、誰かが魔法で衝撃を和らげてくれたので、それ程痛い思いをしなくて済んだ。

誰か知らないけどありがとー。


タコ足の持ち主は用は済んだとばかりに去ってくれたらしく、その後オレは全員に叱られるハメになった。



えー

オレばっかり叱られるってなんか納得いかない…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ