遭遇?ミルミルと海の精霊石 《1》
出発は深沢たち勇者御一行の後になった。当たり前か。
彼らは、深沢が作ったらしい光の門をくぐり、魔王がいるとされる『ハイレ・ハイネ』国に向かう。
魔王討伐へ行く深沢たちを、広場にいた大勢の人たちと見送る。
門をくぐる直前、深沢は振り返りオレを見つけると少し笑った。
別に仲が良かったわけではないけれど、これが最後の別れになるのだと思うと寂しい気がする。
深沢もそう思ったんだろう。笑顔に元気がない。
オレはわざと軽い笑顔で『頑張れ』の意味を込めて片手を上げる。
オレも頑張るし。
「ん、じゃあ、オレも行きますか!」
声にしてから、もう一度建物の中へ入る。
さすがに勇者たちを差し置いてオレの準備を優先してほしいとは言えなかったので、まだ装備品を受け取ってなかったのだ。
(装備品って…鎧とかかなー?あんまり重いと着れないかも…)
そんなときはせっかくの好意だが丁重にお断りしよう。と思いつつ部屋に戻ると、メイドさんがすでに用意していてくれた。
見ると普通の服っぽいので安心した。
「こちらの服にはいろいろと魔法を織り込んであります。」
失礼ですがあまり耐性がおありではない様子だったので…とメイドさんが言いにくそうにして言う。
誰に耐性がないって…オレだよな…
魔力の少ないことや剣を持てる程の力もないことも知っているメイドさんたちは気を使って服に耐性を上げる(補う?)魔法をかけてくれたらしい。感謝だ。
用意されていたのは、長袖の白い綿っぽいシャツに、下は黒のズボン、靴は編み上げ式のショートブーツ。
着てみるとすごく軽く感じる。動きやすいし。
その上に膝丈の薄手のコートを羽織り、ウェストポーチっぽいものをベルト代わりに巻き着ける。
お兄さんから貰った宝石っぽいものはその中に入れた。
(おぉ〜いいかんじ?)
なんかいかにも旅立ち!という気がしてテンションが上がる。
ビィも興奮しているのか、長いしっぽの先をぱたぱたさせている。
「よくお似合いです。
どこか違和感などはございませんか?」
着替え終わったオレを見て、メイドさんは笑顔で聞いてくる。
「ありがとうございます。とっても着心地がいいです!」
服を貰えるだけでも有り難いのに、魔法までかけてくれるなんて、感謝してもしきれない。
こちらのお金を持っていないので、正直どうしようかと思っていたのだ。
「あの、『サロク・ロクフ』って遠いんですか?」
お兄さんから貰った宝石っぽいものを換金すればいくらかにはなるみたいだけど、ここは『サロク・ロクフ』ではないからどっちみち使えない。
そこまで行くのにどれぐらいかかるのか…
「塔を出てしばらく歩くと『転移門』があります。そこを通ればすぐに『サロク・ロクフ』国ですよ」
転移門が何かと聞いたら、さっき深沢が出してた光の門のことらしい。
遠い場所に一瞬で行けるようだ。
なんだ。すぐなのか。
だったらお金の心配はしなくてもよさそうだな。
じゃあ、さくっと行きますか。