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新たな仲間

宿屋に戻ってくると玄関先で主人が不安げな表情で待っていた。



 主人:「あ、お客さん、ご無事でしたか、化け物の方はどうなりました?」


桃太郎:「はい、少し手こずりましたが何とか退治できました」


 主人:「すごい!本当ですか!?」


桃太郎:「ええ、まぁ、一応」


 主人:「いやー、有難うございます、これで街の人達も安心すると思います」


桃太郎:「それで、化け物との戦闘でポチが気絶してしまいまして・・・」


 主人:「おぉ、そうでしたか、では早くお部屋に運んであげないと」


桃太郎:「はい、すみません、詳しい話はまた後で・・・」


 主人:「分かりました」



主人との会話を切り上げ、桃太郎は部屋に戻ってくると

ポチと猿を畳の上に寝かせた。



桃太郎:「あー疲れた、とんでもないことに巻き込まれたな

    とりあえずポチを起こさないと」



そう言うとポチの身体を軽く揺さぶった。



桃太郎:「ポチ、おいポチ起きろ!」



しばらくして、ポチがゆっくり目を開けた。



 ポチ:「ん、あれ? 俺どうなったんだっけ? そうだ化け物は?」


桃太郎:「ああ、お前のお陰で何とか退治できたよ」


 ポチ:「え、そうなのか? 確か吉備団子を食わされてから

    記憶が無いんだけど・・・」


桃太郎:「そ、そうか、とにかくお前は大活躍したんだから

    もう少し体を休めておけ」


 ポチ:「うん、そうだな・・・で、横で寝てるこの猿は?

    なんか、手足を縄で縛られてて、すごく気になるんだけど」


桃太郎:「まぁ、そうだよな、多分信じられないと思うが

    そいつがあの化け物の正体だ」


 ポチ:「え! こいつが!? 嘘だろ、似ても似つかないんだけど」


桃太郎:「いや、そう思うのも無理はないが本当なんだ

    気絶して倒れた後、体が小さく萎んでいって、あっという間に

    その姿になったんだ」


 ポチ:「なんでまたそんなことが・・・」


桃太郎:「憶えてないかもしれないけど、吉備団子を食べた後

    お前もあの化け物と同じくらいに巨大化したんだよ」


 ポチ:「え?」


桃太郎:「だから、コイツもあの薬を使っていたんじゃないかと思って

    確かめる為に連れて来たんだ」


 ポチ:「アレってそんなにヤバいもんだったんだ・・・」


桃太郎:「もしそうならコイツがどうやって手に入れたのか

    一応確認しておきたいしな」


 ポチ:「そうだったのか、俺が巨大化・・・信じられないな」


桃太郎:「じゃあ、コイツを起こすぞ」



そういうと気絶している猿の頬を軽く叩いた。



桃太郎:「おい、起きろ」


  猿:「ん、うーん・・・はっ!」


桃太郎:「お、目を覚ましたな、どうだ気分は」


  猿:「こ、ここはどこだ? 俺は一体どうなって・・・」



状況が分からず混乱しながら猿は周囲を見渡す。

そして桃太郎の姿を見た瞬間──



猿:「お前は! さっき俺に不意打ちを食らわした人間!」



咄嗟に猿は逃げようとしたが、体が動かせないことに気付く。



  猿:「ん? 動けない、縛られてる!」


桃太郎:「まぁ、少し落ち着けよ、別に危害を加えたりはしないよ

    俺達は街で暴れてたお前を鎮める為に仕方なく戦っただけだしな

    そんな姿になったのは予想外だったけど・・・」


  猿:「本当か? あんた俺が犬と戦ってるとき不意打ちを食らわしただろ

    そんな人間の言う事なんて、ちょっと信用できないな」


桃太郎:「ん? お前、化け物になっていた時のことを憶えているのか?」


  猿:「当たり前だろ、ま、正面から戦ってれば

    あんたなんかに負けなかったけどな」


桃太郎:「ほう、あの程度の不意打ちも防げないくせにずいぶんな自信だな

    ていうかお前、本当に記憶があるんだな・・・」



桃太郎はポチの方に視線を向けた。



桃太郎:「ポチ、お前は全く憶えてないんだよな?」

 

 ポチ:「さっきも言ったけど、吉備団子を食わされた後のことは

     全く憶えてないよ」


桃太郎:「うーん、この猿も薬で巨大化したと思ってたんだけど

    違ったのかな?」



桃太郎は荷物の中から薬の包みを取り出して猿に見せた。



桃太郎:「おい、お前この包みが何だか分かるか?」


  猿:「あっそれは俺の!」


桃太郎:「ん?、知ってるってことは、やっぱりこれを使ってたんだな」


  猿:「だから何だよ、別に良いだろ

    あんただってその犬に使ってたじゃないか!」


桃太郎:「まぁ、そうだな、じゃあちょっと確認させてもらうぞ」


  猿:「? 確認? 何を──」



桃太郎は猿の足を掴み、逆さ吊りにして何回か振ってみた。


・・・・・ポトッ


すると猿の懐から小さな袋が落ちた。

桃太郎がそれを拾い上げて、中を確認すると薬の包みが5、6個入っていた。



  猿:「あ、俺の袋!」


桃太郎:「お前やっぱりまだ隠し持っていたな、しかもこんなに沢山」


  猿:「何だよあんたに関係無いだろ、いいから返せよ」


桃太郎:「悪いがこいつは没収させてもらう、これでお前は

    巨大化して暴れることが出来なくなったわけだ・・・」


  猿:「俺をどうする気なんだよ、殺すのか?」


桃太郎:「そうだなぁ、お前この町の人達に散々迷惑かけてたみたいだし

    役人に突き出せばたんまり報奨金がもらえるかもなぁ」


  猿:「役人に? そしたら俺どうなるんだよ」


桃太郎:「さぁなー、どーなるんだろーなー、やっぱり打ち首かなぁ

    それだけのことをしたんだから、まぁしょうがないよなぁ」


  猿:「打ち首!? やだよそんなの、もう暴れないから見逃してくれよ」


桃太郎:「そう言われてもなー、あれだけのことをした奴を

    野放しにはできないよなー」


  猿:「もう薬は持ってないんだし

    あんたが黙っていてくれれば済む話だろ」


桃太郎:「あ、薬と言えば、お前アレをどこで手に入れたんだよ」


  猿:「・・・大きな箱を背負った旅人風の人間にもらった」


桃太郎:「俺達が会った行商人だな

    その人間は何でお前にそれをくれたんだ?」


  猿:「仲間に群れから追い出されて途方に暮れてたら

    丁度その人間が通り掛かって俺に話し掛けて来たんだ

    それで事情を話したらその薬をくれたんだよ」


桃太郎:「ポチも同じ薬を飲んだのに

    お前だけ記憶が飛ばないのはどうしてだ?」


  猿:「いきなり一包を飲むと効き目が強過ぎて自我を失うから

    最初は半分くらいにして少しづつ増やしていけって言ってた」


桃太郎:「そうだったのか、俺達にはそんな説明しなかったくせに・・・

    何か怪しいな、あの行商人は」


  猿:「街で暴れたのは悪かったと思ってるよ

    もう悪さはしないから役人に突き出すのだけは勘弁してくれよ」


桃太郎:「それは俺の一存では決められないな

    とりあえず街の住人の一人である

    この宿屋の主人に相談してみないとな」  



桃太郎は主人に成り行きを説明して猿の話を聞いてもらうことにした。

猿は自分が群れから追い出されたこと

巨大化する薬を手に入れ、それを使って食料を奪うために

街で暴れていたことを話し、謝罪した。



 主人:「事情は分かりました、しかしこのことを街の人達に話せば

    彼らは絶対にこの猿を許さないでしょう

    その場で叩き殺されるかもしれません」


桃太郎:「まぁ、普通はそうなるよな

    じゃあ役人に引き渡す方がまだマシかな」


 主人:「確かにこの猿がしたことは許し難いことですが

    反省しているようですし、私としてはこんな小さな猿が

    袋叩きにされたり、打ち首になるところは見たくないですね」


桃太郎:「しかし、このまま無罪放免というワケには───」


 主人:「もちろん、野放しにするつもりはありません、そこでなんですが

    お客さんの鬼退治に同行させるというのはどうでしょう」


桃太郎:「え?」


 主人:「多くの人がこの猿以上に鬼達に怯え、苦しめられています

    その鬼退治の手伝いをすることによって、自分の罪を償わせるのです」


桃太郎:「しかし、それで街の人は納得するでしょうか?」


 主人:「街の人には私の方から、化け物はうちのお客さんが返り討ちにして

    逃げて行ったので、当分はやって来ないだろう、と言っておきます」


桃太郎:「うーん、それでいいのかなぁ?

    まぁ確かに仲間が増えるのは有難いんだけど・・・」


  猿:「俺やるよ、あんた達に付いて行って鬼退治を手伝うよ

    だからよろしく頼むよ、桃さん」


桃太郎:「何だお前、急に馴れ馴れしいな

    どうせ殺されるのが嫌だから調子のいいこと言ってるだけだろ」


 主人:「まぁ、そうだとしても、お客さんがしっかり躾けて

    更生させてあげたらどうですか?」


桃太郎:「更生と言われてもなぁ、おいポチ、お前はどう思う?」


 ポチ:「こんな奴信用できるわけ無いだろ、絶対裏切るって!」


  猿:「ポチ先輩、ぜひ優秀なあんたの下で働かせてくれよ」


 ポチ:「せ、先輩? しかも優秀って・・・

    お前、中々見どころがあるじゃないか

    アニキ、コイツ結構役に立ちそうな気がするぞ」


桃太郎:「ポチ、お前チョロ過ぎるだろ・・・・

    でもまぁ、仕方ないな、仲間にしてやるか」


  猿:「有難う桃さん、ポチ先輩、俺二人の役に立てるよう頑張るよ」


桃太郎:「この変わり身の早さ、イマイチ信用できないんだよな

    ポチ、コイツの監視と教育はお前に任せるからな

    二度と暴れたりしないようしっかり躾けるんだぞ」


 ポチ:「もちろん! 任せてくれ」


桃太郎:「そういえば、まだお前の名前を聞いてなかったな

    何て呼べばいいんだ?」


  猿:「俺に名前なんか無いよ、好きなように呼んでくれよ」


桃太郎:「そうなのか、じゃあ今名前を付けるか、そうだなぁ・・・

    小さくて丸っこいから”チビ丸”なんてのはどうだ?」


 ポチ:「アニキ、名付けの才能は皆無に等しいな・・・」


桃太郎:「うるさいよ、文句があるならお前が考えればいいだろ」


  猿:「桃さん、素晴らしい名前を有難う

    俺は今日からチビ丸と名乗らせてもらうよ」


桃太郎:「そうか、気に入ったか?」


チビ丸:「もちろんだよ、名前を付けてもらえるなんて夢みたいだ」


桃太郎:「おい、聞いたかポチ

    やっぱり分かる奴には分かるんだよこの俺の才能が

    チビ丸、お前意外と良いやつだな」


 ポチ:「アニキも俺に負けず劣らずチョロいじゃないか」


桃太郎:「今日は色々大変だったけど、新しく仲間も増えたし

    これで一件落着だな」



桃太郎一行に新しい仲間として猿のチビ丸が加わった。

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