もる子と七億兆万院さん
「もる子と申します。今日からお世話になります。みなさんよろしくお願いします」
ぱちぱちと教室から拍手があがりました。
ようやっと落ち着きを取り戻したもる子ちゃん。
よくわからないまま学校へ到着し、よくわからないまま先生に挨拶し、よくわからないまま新しいクラスの教壇に立って挨拶をしていました。
もる子ちゃんが転校してきたのは、つい1~2年前に共学化が決まった高校。近隣からの評判も良い優等生ばかりが通う県内でもまあまあ屈指の進学校です。
クラスメイトたちも、もる子ちゃんのことを茶化すことなくお上品な出で立ちです。
挨拶をしてやっと少しほっとしたもる子ちゃんは、先生に促されて教室の一番うしろ、窓際の空いている席につきました。
引き続き、先生による朝のホームルームが行われていますが、クラスメイトたちはここでもお上品。誰もよそ見することなく先生の話を熱心に聞いています。もる子ちゃんも皆に習って話に耳を傾けようとしましたが、ひとつ不思議なことがありました。
もる子ちゃん席の隣もまた、誰もいない席だったのです。
今日は休みなのかな?
なんて思っていたのもつかの間、先程ホームで体験した半分反社会的行為が頭をよぎります。
忘れよう忘れよう、とぶんぶん頭を振ってもる子ちゃんは邪念を振り払いました。
「今日のホームルームはここまでです」
担任の若い女性の先生がそう言うとちょうどチャイムが鳴りました。
1時間目の授業の時間です。
今日はこのまま担任の先生が受け持つ数学の授業と聞いていたもる子ちゃんは、鞄から教科書を取り出そうとしました。すると
「ですが最後にもう一つ皆さんにお伝えすることがあります」
と先生が口にしました。
教室はざわつくことも無く、にこやかな先生の次の一言を待っています。
「もう一人転校生を紹介します」
ぱちぱちと教室から拍手があがりました。
転校生がかぶる事があるんだという驚きと、なぜ2度に分けた?と もる子ちゃんは思いましたが、
とりあえず皆に合わせて拍手をしました。
ガラガラと教室の前の扉が開きます。
そして入ってきたのは、黒い髪のショートカット。小柄な体。地味な見た目。そして眼鏡。
「転校してきた七億兆万院来姫。よろしく」
ホームで出会った反社会的な女の子でした。
最新話までのキャラ紹介は1話に載ってますのでよかったら。