もる子と損害賠償請求書
やばいやばいやばいやばい。
もる子ちゃんは脱兎を即刻追い越すが如くの勢いで学校までの坂道を駆けていました。
なんででしょうね。
少し振り返ってみましょう。
「250億」
そう言葉を発した地味な女の子は表情を一つも変えませんでした。
もる子ちゃんが駅のホームで靴紐を結んでいたいた女の子に誤ってぶつかってしまったところ、尋常でない金銭を要求されたのです。
それだけならちょっと冗談が下手な女の子なりのクソ雑すぎるユーモアかな?で良かったのですが、眼鏡の女の子はスッと小脇に抱えた学生鞄から一枚の紙を取り出しました。
「印鑑ある?」
すると何処からともなく黒服に身を包んだ見るからに「僕たち私たちはSPです!」といった方々が飛び出してきて、ささっと小さな机と椅子を1セット準備したのでした。
さも当然のように眼鏡の女の子は椅子に腰掛けると、サラサラと紙にサインをしました。そして「はい」ともる子ちゃんに差し出します。
損害賠償請求書
そう書かれた紙に一瞬戸惑ってしまったもる子ちゃんでしたが
「やだな~あはは」
と持ち前の偽りでできた笑みを浮かべてテヘヘと頭をかきました。
あはは、あはは、と作り笑みを浮かべていると背中にグッと何かを押し付けられました。
眼鏡の女の子は未だにもる子ちゃんの眼前で無表情に用紙を握っています。
えっ、誰?と思うのもつかの間、耳元でぼそりと「自分で言ったことに責任持つんですのよ」と聞き慣れない声で囁かれたのです。
こういった情景を映画か何かで客観的に見た覚えがもる子ちゃんにはありました。
それはスパイ映画やアサシン的な人が出てくる映画で、証拠を握っている重要人物など背中にちっちゃな銃器を押し当てているあれでした。
そこからもる子ちゃんはとにかく走り続け、今に至るわけです。
やばいやばいやばいやばいやばいやばい。
絶対やばい。
何かしらの犯罪だよ。なんの罪かわからないけど絶対やばい。結構反社会的な武力行使。
と思いながら、髪が乱れるのも構わず学校までの道を走り抜けます。
今はとにかく追手がいないかなんて気にしていられません。逃げることが先決でした。
新天地に到着して2秒で追われる身になってしまったもる子ちゃん。どうしようどうしよう、から謎の走馬灯、果にはしょうもない将来の夢まで思い出していました。
あまりにも冷静さを失っていたため、国家権力に縋ろうなんてことは毛ほども思い浮かびませんでした。
しかし一つだけ確固たる意志だけは弛まずに心に、固く固くあったのです。
「私は!もっと!キラキラ!するのぉぉおおおー!」
息を切らしながらもる子ちゃんはそう叫びました。
最新話までのキャラ紹介は1話に載ってますのでよかったら。