指先に触れる温もり。
何処か遠くへと 見送る駅舎の
夜の人影 俯く足音
コツコツと響く 灰色の照明
電光掲示板が 始発の時刻を照らす
ビルのネオンサイン 谷間に響く
路地裏 ポケットをまさぐる
一夜限りの あり合わせもなくて
溜め息
革靴の底が磨り減る
自覚なく傾く病に ふらり
口づけとか オプションとか
求めてた熱は 借り物の時間
夢は金で買えるとか そんなこと
なけなしの夢をはたいて
シャワー浴びて俯く 濡れるアメニティ
ブラシとか コップとか
デオドラントソープとか
マウスウォッシュの後の 洗面台
白くて
折れそうな腰
抱き寄せてた イルミネーション
ベッドの上に灯る 滑らかな
窓ガラスの暗闇 雨粒みたい
溶ける明かりに 流れ落ちて
混ざり合う様に
滑る素肌の上 潜り込ませる内側
白い陰影が映る 耳もとの呼吸
甘い囁きに そのままを入れて
ルームライト 朧気に光るオレンジ
頼りない返事
反射してた 灰色の壁の
貝殻のレリーフ
見つめてた ほんの今だけは開いて
灯してた 枕元の明かり
見ていたいから せめて
今だけの 何もかも
優しく包み込まれる
口にさえ出来ない時間
薬飲んでるからって 良いからって
シーツに広がる黒髪の 溶ける様な声を聞いて
夜を昇る 四角い部屋の真ん中
二人いる それだけの
誰かは知らない ほんの僅かな時間
愛してるって 言葉
口には出せなくて
目を閉じていた 君の素顔
眠れずに居た夜の
もしも もしもの 時間
開いた瞼に
天井のルームランプ オレンジ色に透けてた明かり
君の全部 そこには遠く
救急車両のサイレン鳴り響く音
通り過ぎて行った 暗い夜の窓辺
ほんの少し灯る 素肌の温もり
明けない夜の 制限時間
触れたかった 胸の音 心臓の音
せめて今だけの 君の純白