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初の異世界?!

「おぎゃー!おぎゃー!おぎゃー!」

小さな病院の分娩室から聞こえてきた力強い声は、小さな体の幼児によって発せられた。

その体は白い布で覆われ、丁寧に両手で支えられている。

「アイリ!よく頑張ったな!」

心の底から出たであろう震えた言葉を、妻らしき女性の手を掴んだ男が言った。

アイリというらしい妻は、左手を幼児に向けて伸ばし、人差し指で軽く触れた。

「あなたの名前は、アレンよ。」

その肌はやけに気持ちが良くて、そのまま気持ちよくて眠りについてしまった。




次に目を開けると、少し暗めの茶色の木でできた天井が目に映った。

ここは…どこだ?

俺、確かいつも通り研究室にいて…

それから、少し考えてやっぱり分からなかったので、自分の手を見た。

その手は、あまりに拙く、幼く、弱く、小さかった。

「あ!目覚ました!」

そんな声が聞こえ、顔を向ける。

そこには、綺麗な女性がいた。

綺麗…とつぶやくつもりだった声はあーうー!という声に変わって発せられる。


…あーうー??


そして、やっと理解した。

ははーん??

これって…異世界転生って事ですか?!?!?

あれですよね!なんか可愛い女の子が回りで奉仕してくれながらデュフデュフしてていいって言う世界ですよね?!

今よく見てみれば、今までに見た事のない木製の建築に、何故かぷかぷか浮かんでいるランタン!

完璧にイメージ通りじゃないっすか!!!!

「ねぇあなた?」

「ん?どうした?」

「…なんでこの子はこんなにニコニコしているのかしら…?」






それから、月日が経った。

この世界は教会で神様からスキルを教えて貰える!…みたいなことは無く、あくまで固有スキルはステータスボードと呼ばれるものを見れば分かるようだった。

ちなみにステータスボードは「ステータス」と言えばブォンって出てくるよ!

固有スキルは12歳にて開花し、すべての国民は13の歳の代になると学園と呼ばれる所謂、中学校のようなものに入学する。

ただし、1つ中学校と違うことがある。

それは、学園には入学試験がある事だ。

年齢で言えば中学生だが、制度で言えば高校生だ。

入学試験の試験は至極簡単で

1.魔力量審査

3.実技審査

この2つだけだ。

これだけ見れば少し多いような気もするが、魔力量審査は専用の機械に手を置くだけでいい。

国内にある学園では、同じ日に全く同じ審査が行われる。

その成績によって各学園に割り振られ、そこでの生活を強いられる。

頼むから国の真反対の学園とかやめてくれよ…。

各学園には必ず寮があるが、それでも家に帰るのがめんどくさいのは嫌だ。年末とかどうする気なのか。

そんな小言を吐きながら、家から1番近い学園の門を潜った。






案内された校舎の教室に入ると、既に他の受験生は皆座っていた。

緊迫した空気が教室を包み込み、前のドアから入って後ろの席に座ろうと皆の前を歩く俺を誰一人として見なかった。

周りのことなんて気にしている余裕は無いか。

アレンが椅子に座ると、試験監督が教室に入ってきた。

「おはよう。遂に試験本番だね。今から会場に移動するけど、緊張して迷子にならないように気をつけてついてきてね。」

その言葉はどこフワフワしていて、優しくて、綺麗だった。

誰にも好かれる好青年みたいな。

教室から出ていった試験監督を追いかけて、受験生は教室を出た。




「ここにある水晶は、魔力量を可視化する。例えば僕の場合だと、、、」と試験監督が水晶に触れた。

その瞬間、試験監督の体の周りが淡く青色に光った。

全身を包み込む光は監督の体を6倍ほど大きく見せた。

「と、いった感じで体の周りに魔力量が可視化されて見れるようになる。僕の場合6倍ほどの大きさだったと思うけれど、もっと魔力量が多くなると10倍に見えてまるで炎のように見えるよ。」

へー、あれでも少ない方なんだな。

「さぁ、1人ずつやっていこう。」

それから、受験生がどんどん水晶に触れていった。

全然魔力が見れない者や、体の4倍ほどの大きさまで多くの大小関係が見れた。



そして、アレンの番が来た。

アレンが深呼吸して水晶に手を触れる。

その瞬間、会場がザワザワした。

何事だろう。と思って試験監督の方を見ると、そこには驚いたような顔のまま動かない試験監督がいた。

「監督?」

その声に試験監督はやっと正気に戻り、アレンの顔を見た。

「どうかしたんですか?」

「どうかしたかって…その魔力量は…」

アレンの体には魔力が青く淡く輝いている。

その魔力は常人の量の比ではなく、アレンの体全てをロウソクの火にしたように、青く燃え盛る炎のようだった。

魔力の先端は空を仰いでやっと見られるほどで、何人かの受験生は空を仰いでいる。

アレン自身、自分の魔力量を確認したのはこれが初めてだった。

ただ、魔法の練習をしている時に、どれだけ魔法を使っても疲れることも気持ち悪くなることも無かったので、魔力が存在しない世界なのかも。と思っていた。

それが、実際はこの結果だ。

魔力は存在するどころか、その量は常人を遥かに超えるものだった。

少し呆然としていた試験監督が急に焦ったように水晶に触れているアレンの手を握って離した。

「え?」

アレンがそういうと、試験監督は息を切らして、言った。

「あまりにも膨大な魔力は見るだけで身体を疲労させる。君はもう充分だ。」

回りを見てみると、まだ触って10秒も経っていないのに他の受験生の顔色が悪くなっているように見えた。

「あぁ…すみません…」

アレンが謝ると、試験監督は難しそうな顔をして手を離して言った。

「次、水晶に手をかざしなさい。」

そのまま、魔力量審査は行われていった。




そして、実技審査。

全ての学園で同じように行われるこの審査は、項目によって成績が付けられる。

魔力の制御をできているか、魔法は使えるか、体は魔力に馴染みながら使えているか。など、まぁ、色々ある。

この実技審査は段階に別れ、順番に進んでいく。

まず最初に、スキル審査。

これはステータスボードを提出すれば良いだけで、その情報は国の管理のもと厳重に管理される。

次に魔法制御。

これは26m先にある的の中央にどれだけ近く魔法をぶつけられるかを審査される。

最後に決闘。

国が試験のために用意した冒険者を相手に、どれだけ戦えるかを審査する。

ランクはバラバラだが、決闘においての判断項目があり、それによって点数が着くため、ランクによって成績が左右されることは無い。

先に挙げた体は魔力に馴染みながら使えているかの判断はここですることになる。


受験生達は水晶の部屋と別の部屋に案内された。

部屋の中には複数のドアがあり、そのドアは全て屋外訓練場に繋がっている。

このドアを開けるために受験生はステータスボードのデータを扉に移送する。

そして屋外訓練場に出れば、的が待っており、屋外訓練場にいる試験官に魔法制御の成績をつけられる。

受験生がズラズラと扉の前に並びながら、自身のステータスボードのデータを移送していく。

アレンも自身のステータスボードを移送して扉をくぐった。


扉をくぐった先では既に審査が始まっており、受験生が的に向かって魔法を打っていた。

「なぁあんなに遠い的当たんのか…?」

「しっ!そんなこと言ってたら当たるものも当たらないよ!」

その会話は緊張している子供そのもので、20代後半の思考を持っている自分からすれば微笑ましい会話だった。

周りの受験生も的に当てられるかは五分五分で、やや当てられない人の方が多かった。

他の受験生の魔法を眺めていると、気がつけば先程の会話をしていた子達の番になった。

『魔力弾』

前に並んでいた男の子が先に的に向かって魔法を打った。

ここで打っている魔法は魔力弾だが、魔力弾も魔力を固めて打つものなので、立派な魔法だ。

基本的に淡い白色をしていて、魔力密度が高いとその白色は更に色を濃くする。

男の子の打った魔力弾は的にかすり、あと少しというところで的に当たることは無かった。

続いて後ろに並んでいた女の子の魔力弾は魔力密度が高く、少し白色が増している。

その魔力弾は的の真ん中やや上ら辺に当たり、列の後ろからはおーという歓声の声が聞こえてくる。

女の子は魔法が当たらなかった男の子を慰めながら次の会場に向かっていった。

さてと…俺の番か。

アレンは右手を的に突き出し、手のひらで魔法陣を構築する。

構築が終わった魔法陣から魔力弾を飛ばした。

その瞬間、爆音が試験会場に鳴り響いた。

ドォーーン!

的のある方から土煙が立ち、何が起きたのか理解しようとして皆がそちらを見る。

土煙が晴れて見えたのは、均等に配置された的のうちの一つがなくなっている光景だった。

的があったであろう場所には的を支えていた柱だけが残され、その後ろの壁はえぐれている。


あぁー…これ、やっちゃったかな…?




的が1つ吹き飛ぶというイレギュラーがあったのにも関わらず、学園の対応は以外に早く、その的に並んでいた人達は違うところに並ばされ、試験が継続された。

アレンは次の会場への扉を開けた。


決闘。

用意されたステージで、受験生と冒険者が決闘を行う。

四角いステージが広い会場に点々と用意されており、人数が多いためステージの周りを、順番待ちの受験生が囲っていた。

その中で1番人の少ないステージに並ぶ。

そのステージでは既に決闘が始まっていた。

魔力弾と魔力弾が交差して衝突して砕けてを繰り返すそのステージは、どこか紙芝居のようで見ていて飽きがない。

少し見ていると、所定の時間が経ったのか、冒険者が魔法を打ちやめたと同時に受験生も魔法を打ちやめた。

「うん。いい筋してるね!頑張ったのが伝わってくるよ。」

「ありがとうございます!」

そう言って受験生は笑顔でステージから降りた。

「次!」

冒険者が言うと、先程の女の子がステージに昇って行った。

「お願いします!」

女の子が魔法を構える。

それに応じて冒険者も魔法を構えた。

魔法陣から飛び出た魔力弾は二人の間を行き交う。

ある魔法は届かず消え、ある魔法は衝突して消え、ある魔法は髪の毛を掠った。

1歩も動かない冒険者は、二人の格差を表しているようだった。

その瞬間、女の子の放った魔力弾が冒険者の顔をかすり、冒険者はビックリして魔法を打ちやめた。

その打ちやめを終了の合図かと思ったのか、女の子も魔法を打つのをやめ、「ありがとうございました!」と言って頭を下げ足早に試験会場を後にした。

それを見てステージを囲っていた受験生はザワザワし始め、冒険者は次の冒険者へと交代した。

アレンは、女の子が去った扉を眺めていた。




少し時間が経って、アレンの番になった。

アレンがステージに登ると、また冒険者が交代しており、見たことの無い顔が出迎えてくれた。

その顔を見てステージ周りの受験生がザワザワし始めた。

何かと思って耳を済ませてみれば、冒険者のことを言っていた。

「なぁ…あの冒険者って…」

「最近レッドドラゴンを討伐したって噂のパーティーの魔法使いじゃないか…??」

へ〜、そんなに有名な人なんだ?

話聞いてる感じ、強そうだし。

アレンが頭を下げて「お願いします。」と言うと、冒険者が言った。

「あぁ、お願いします。」

その言い方はなんだか優しくて、とても覇気があるとは言えなかった。

冒険者が魔法陣を構築したのを確認して、アレンも魔法陣を構築した。

強そうだし、大きいのいってみるか。

受験生のレベルだと多重詠唱もこれだけ大きな魔法陣も組めないが、しょうがない。

アレンの魔法陣が普通の魔力弾でないことを悟ったか、冒険者は少し目を大きくしてすぐ戻した。

『アイス』

氷が魔法陣の周りを回って飛んでいく。

その氷を冒険者は魔力弾を使って相殺した。

「それ、アイスだよね。」

「そうですよ。」

「中等魔法、どうして?」



この世界の魔法には、ランク付けがされている。

例えば、『魔力弾』。これは、初等魔法に分類され、初等魔法は小学校のような場所で6年間かけて学ぶ。

続いて、『アイス』。中等魔法の一般例であり、学園で学ぶ最たる例だ。

そして、『グライシア』。上等魔法の一般例であり、グライシア含め多少の上等魔法は学園で学ぶが、他の上等魔法やそれ以上の魔法は個人が就職するところによって必要に応じて学ぶことになる。


「どうして…強いて言えば、スキルのお陰ですかね?」

「スキルか…それは深く聞けないな。」

残念。と冒険者が肩を落とした。

そして、魔法陣を構える。

その魔法陣は、魔力弾ではなく、中等魔法の魔法陣だった。

そう。受験生として扱ってはくれないのか。

それが少し悲しくて、アレンは魔法陣を構築する。

互いの魔法陣から放出された魔法は、交わって一瞬拮抗状態だったが、アレンの魔法が冒険者の魔法を消し飛ばして、冒険者の左頬ら辺を掠っていった。

魔法が掠った冒険者の左頬は、若干の血を流している。

アレンが次の魔法陣を構築しようとすると、冒険者は手を前に出してそれを止めた。

「いや、もういい。君の試験は終わりだ。」

なんだ、もう終わりか、

「ありがとうございました。」

そう言ってお辞儀をしてその場を離れた。


「最後のあの魔法…。」







アレンが家のドアを開けると、両親が急いで玄関に走ってきた。

「アレン!大丈夫だったか?!」

「怪我とかない?!」

その剣幕があまりにも真剣で思わず笑ってしまう。

「大丈夫だよ。ちょっと疲れたから寝るね」

「あぁ、ゆっくりするんだぞ!」

その声を背に自室のドアを開け、ベッドにダイブした。


「あぁー!!!」

枕に向かって叫んだその言葉は反響することなく枕だけに吸われていく。

おかしいと思わないか?!

何がって…だってさ!異世界転生って望んでたのはもっとこう…「最初才能がないと卑下されていたけど、実際は強くて段々と無双し始める!」みたいなさ!そんなのを想像してたのに!なんで最初から最強なんだよ!

「はぁ…」

アレンがため息をついて天井を見上げた。

まぁ、こうなったものは仕方ないし、折角念願の異世界転生だ、楽しもうか。






試験の日から1週間が経った。

今日は合格発表の日で、受験生の各ポストに合格した学園の名前と、場所、そして入学届けが封筒で送られる。

そして今その封筒は、机で震えている父の手にある。

「あなた!大丈夫よ!」

母親が父の手をそっと握った。

「あぁ、そうだよな…そうだよな!」

父親はそう自分に言い聞かせると、封筒を開けた。

その光景を椅子に座りながら見ていたアレンは思わず口角が上がった。

父親が封筒から出した2枚の白い紙の片方を凝視する。

その様子を見て母親もその紙を覗き、同じく凝視しした。

「父さん母さん、どうしたの?」

アレンがそう尋ねると、父親は肩を震わせて急にアレンに飛びついてきた。

「わっ。」

父さん?とアレンが尋ねると、父親はアレンの両肩を掴み、顔を離して言った。

「アレン!お前の学園は3日後からアカデメイア学園だ!」

アカデメイア学園?

その学園の名前がよく分からず母親に聞こうとしたが、母親は涙を流して謎に頷いている。

何の頷きだよ…

仕方なく父親に尋ねた。

「父さん、アカデメイア学園って、何?」

「あぁ!アカデメイア学園はな、国内で一番入学が難しいと言われている学園だ!」

なるほど、つまるところ国内で1番凄い学校ということだな?

「そのアカデメイア学園はどこにあるの?」

「え?あぁ、そうだな。」

父親が同じ紙に書いてあった地図を見て言った。

「ここから真反対の場所だな!」

「え…」

「ほら!早く荷物をまとめろ!3日後には入学式だぞ!」

「今日はお赤飯にしましょうか!」

そういうと両親はそそくさとどこかに行ってしまった。

「えぇ…」

「えぇぇぇぇぇぇ?!?!?!?!」





だから長旅は嫌なんだ…

アカデメイア学園の寮の前についた時には既に2日目の夕方になっていた。

乗り物って何故か変に体力を使うし…

寮は想像していたよりも遥かに豪華で、平民が入るところでは無いことが容易に想像出来る。

門の前には門番が立っており、不振な目で見られたのか、門の前で止められた。

「待て。ここはアカデメイア学園の寮だ。」

門番は槍をこちらに構えながらそう言った。

「私はアカデメイア学園の生徒です。」

落ち着いて冷静な声で言うと、門番はそれを信じなかった。

「嘘をつくな!名を名乗れ!」

はぁ…とアレンがため息をついた。

「アレン・リーファ。」


「アレン・リーファ…?」

寮の部屋の一室で門でのいざこざを聞いていた誰かが呟いた。



「アレン・リーファだと?聞いたことがないな。おい、今すぐ調べろ。」

門番の1人が他の門番に命令すると、命令された門番はデータを見始めた。

相変わらず、槍は下げないんだな。

まぁ、これがいい門番なのかもしれない。きっと、魔剣士の類いだろう。


そして、調べ終わるのを待っていると、寮の正門から一人の女性が出てきた。

その女性はこちらに向かいながら言った。

「フィル。矛を下げろ。」

その声に、フィルというらしい門番はすぐさま従い、正門の方を見て敬礼した。

なるほど偉い人か。

その女性が門を開けて近づいてくる。

「アレン殿。うちの部下が失礼した。副学長がお呼びだ。」

お呼び出し?副学長に?

俺なんか悪いことしたのかな…

「着いてこい。」

そう言われ、大人しく女性の後ろに着いていった。





「副学長。失礼します。」

廊下に鳴り響く扉をノックする音が良い木を使っていることを教えてくれた。

「誰だ?」

「エランです。アレン・リーファをお連れしました。」

「…入れ。」

その絶妙な間が更に怖くさせるんだよな…

わかるよ…俺も研究室で教授にその間でどれだけ脅されたことか…

エランというらしい女性が扉を開けてアレンの背中を押して中に入れた。

部屋に入ると、縦に置かれた長い机を挟んでソファーが置かれ、その奥に社長が使うような机と椅子があり、その椅子に男性が座っていた。

「よく来てくれたねアレン君。」

「何の御用でしょうか、副学長。」

副学長という割には若く見える。好青年のような、きれいに顔が整っている。

「まぁ、立ち話も何だ。座りなよ。」

副学長が微笑みながらソファーを指さした。

その言葉に甘え、アレンがソファーに座った。

「それで、どのような御用でしょうか。」

そう言うと、副学長が一つのステータスボードの情報をアレンに見せた。

「このステータスボードは、君のもので間違いないね?」

見せられたステータスボードは、間違いなく自分のものだった。

「そうですが、何か問題でもありましたか?」

「問題も何も...」

はぁ...と副学長がため息を付いて言った。

「賢者というスキルの詳細は理解しているか?」

そのスキルは、アレン自身のスキルだった。

詳細...?異世界で賢者というと最強のスキルじゃないのか?そんなわかりきっていることをわざわざ調べたりしないよ。

「いえ、特には。」

はぁ...とまたも副学長がため息を付いた。

「人類が誕生して1億と8000万年。魔法が発見されてからの歴史4000年において、今までに賢者というスキルを授かった人間はただ一人、大賢者と呼ばれた最強の魔法使い、ラズリア・フルだけだ。

賢者というスキルは、他のスキルと全く異なり、特徴として、魔法を3つ作ることができる。そして、このスキルの保持者は、魔力量がそこの見えないほど膨大になる。」

「アレン君、現在の魔法の区分はわかるか?」

「はい。初等魔法、中等魔法、上等魔法の3つですよね。」

「あぁ。基本的にはそうだ。だが、実はもう一つ、区分が存在する。それが、創造魔法だ。

この創造魔法はラズリアが作り出した3つの魔法で、今でも一つしかわかっていない。

それに、普通スキルは12歳で開花するものだが、賢者のスキルに関してはそれ以前から開花するという。」

そこでだ、と副学長が言った。

「アレン君、在学しながらで構わない。君に冒険者兼軍兵の教官をお願いしたい。」


…え????


「いやいやいやいや!冒険者兼教官ですか?!でも私はまだ学園にすら通ってないですし、年齢的にも…」

「そこは大丈夫だ。冒険者組合には既に話は付けてあるし、国王にも私から推薦書を書こう。

それに、魔法だけで言えば君は軍兵の誰よりも強い。

入学試験の話、聞いたぞ。随分派手にやったみたいじゃないか。」

やべ…流石にやりすぎたか…

アレンがため息をついた。

「分かりました。その話、受け入れましょう。」

「ホントか!それはありがたい!冒険者登録はこちらでやっておこう、軍兵の件はもう少し待ってもらいたい。

わざわざすまなかったな、是非我が学園の寮を楽しんでくれ!」

「ありがとうございます。失礼します。」





アレンは自室のベッドに飛びついて枕に顔を埋めた。

よっしゃぁぁぁ!!!!!!

きたきた!これこそ無双系の醍醐味だよな!

これから学園生活が始まって、冒険者として活動して、たまに教官として訓練をする。

完璧じゃないか!!!!!


それにしても、転生してから大変だったな。

研究室に居たはずなのに気づいたら赤ちゃんとして転生して、しかも賢者なんて最強スキルを手に入れて、魔力暴走で街1つ更地にするくらいの爆発起こしそうになるし、全部の魔法を覚えたと思ったら、新しい魔法が作れますとか言われるし、作れる魔法が3つだと知らずに既に2つ作っちゃったし。


まぁでも、やっとだな。

やっと、異世界っぽい暮らしが始まる。

日本のように堅苦しい世界とは打って変わった世界が、やっとだ。


そうして、眠りに落ちた。

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