アナリスト #映画化希望
サーカスの大トリはいつも私だ。
一通りトークで場を温めたあと、私はジャガイモ、人参、玉ねぎ、豚バラ肉を肛門の中にぶち込んだ。
観客が歓声を上げる。
「ここでうんこをしたらカレーの完成ですね!」
大爆笑。鉄板ネタだから当然だ。
「さらに!家のカレーはキャベツも入っていたんです……よ!」
歓声が悲鳴に変わる。
キャベツ一玉はやり過ぎだと思っているのだろう。
何十年この芸をやってると思っている?
これぐらい楽勝……
「……!?」
「目が覚めたかい?」
私の前には茶色の服を着た男がいた。
男が言うには私は危険な状態だったらしい。
キャベツを肛門に突っ込んで気絶した私を彼がステージ裏で緊急手術してくれたそうだ。
「たまたま私がいたから良かったものの……医師として言わせてもらうが、もう肛門に物をいれるのはやめなさい。穴も中もズタズタだ」
「冗談はよしてくれ!」
私は命の恩人に溜め込んだものを吐き出してしまった。
私に戸籍がないこと。
両親に虐待され、家を追い出されこのサーカスに拾われたこと。
カレーの話は作り話だったと。
「……両親の虐待のおかげで私は肛門だけはエリートだ。笑える。私は学の無い中年だ。肛門拡張世界一として生きていくしかない」
「日本にこんなことわざがある。『井の中の蛙大海を知らず』ってね。上には上がいる」
「はっ!私より大きな肛門の奴がいるかね!?治療費は振り込むよ。帰ってくれ!」
「……やれやれ」
男は茶色の服を脱いで手術道具をカバンに詰めていった。
大きなカバンだ。
旅行にでも行くつもりだったのだろうか?
「あんた普段から手術道具を持ち歩いて……何っ!?」
男はカバンと服を肛門にぶち込んだ。
信じられない!あんな大きなカバンを!?上半身がハンマーヘッドシャークの頭みたいな形になってる!
「我が家もね?」
「……あわわわ」
「カレーにはキャベツが入っていたよ」
さらにキャベツを肛門にぶち込んでケロリとしているだと?
私は彼の言う通り井の中の蛙だ。
「私はアナリスト。名刺を置いていく。職を変えるつもりがあるなら連絡してくれ。力になるよ」
……アナリスト。
私も彼のようになれるだろうか?
4年後。私はアメリカ大統領になった。
彼には一回も連絡していない。
キモいもん。