透明な空白
今にも泣き出してしまいそうな暗い雲が空を覆っていた。
病院の屋上でフェンスを登ってまたがった。風のひゅおうという声が強くなった。今の私は何処へだって行ける気がしていた。怖いものなど何も無かった。本当は怖いという感情すらなくなったのかもしれない。
「あ、」
やっとしねる。やっと消えれる。
そう思うと、目の前に透明な階段が見えた。何処までも駆け上がってきっと辿り着く場所はきっと、私が最期に求めていた場所なのかもしれない。天国も地獄も信じられなかった。人間は所詮、みんな灰になっておさらばなのだ。だけど、今見えている幻覚は私を呼んでいる。「こっちだよ。こっちだよ。」と、もはや自分の声なのかもしれない。
しのうとするといつも世間は戦争の話をだす。生きたいと思っている子達が沢山いるのに、どうしてあなたはしぬの?幸せな癖に。
「しにたい。」と声を漏らした時、「しんでも大丈夫。」って1番言って欲しい。
しにたくなった時、限界を越えることができるように自分で自分を慰める。気持ち悪い。糸を引く太腿の付け根も、ひくんひくんと締め付けるような動きをする一番奥のところも、全部全部気持ち悪い。指を入れると締めつけるような動きをして、指を飲み込む。中はざらざらしていて、温かかった。
もうそんなことをしなくても大丈夫になった。だってもうここを飛び立つから。ごめんね。わたし。守ってあげられなかった。優しくしてあげられなかった。ごめんね。わたしは自分を許せなかったし、好きになることが出来なかった。
一歩踏み出す。