表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/88

5. 幼馴染の変態イケメン

「で、何があった?なんでカイルと一緒だったんだよ」


 ベッドに私を下ろすと、ローランドは開口一番でそう聞いた。

 いやいや、質問するなら私のほうが先でしょ?


「この宿の常連みたいね。何に利用してるの?」


 私より一つ年上のローランドは、すでに王都の学園の寮に入っている。こんな宿を使う理由と言えば、女絡みしかない!


「あー。まあ、色々と?門限に間に合わなかったときとか。課外授業とか?」

「はあ?どうせ、女の子連れ込んでるんでしょ?おじ様に言うわよ!」

「男の嗜みだよ。いわば研究と実践だ。父上も気にしないって」


 開き直ったな!何が嗜みよ。女の研究?スケベっ!


「あ、そう。じゃあ、ヘザーに言う!」

「すいませんでしたっ」


 私たちは顔を見合わせた。そして、どちらからともなく、ブーっと吹き出す。

 私たちは昔から、ヘザーには頭が上がらないのだ。


「もういいや。怒る気失せた。ヘザーと来てたんだけど、途中で別れて寮に戻るところだったの。道に迷ってゴロツキに絡まれてたとこに、あの人が通りかかっただけ」


 それを聞いて、ローランドの顔つきが変わった。


「ゴロツキに怪我させられたのか?どんな奴らだったか言ってみろ。俺がぶっ殺してやる」

「あ、いやいや、怪我は自分で転んだの。それに、あの人が助けてくれたし」

「カイルが?」

「あの人、カイルっていうの?知り合い?」

「ああ。それにしても、あのカイルが……」

「え?何?なんか問題あるの?」

「は?いや、女嫌いだから」


 女嫌い。なるほど。あの失礼な言動はそういうことなのか。


「そうなんだ。確かにそんな感じだったな」

「え、お前、あいつとしゃべったの?」

「一応?」


 話したというか、口論したというか?でも、私はちゃんとお礼も言ったよ。


「あいつはやめとけよ」

「何言ってんのよ、意味不明。どーでもいいけど、私もう帰らないと」


 このままだと、ヘザーよりも遅くなってしまう。ああ見えて、彼女はすごく心配性なのだ。


「待てよ。ちょっと怪我見せてみろ」


 そう言うと、ローランドは私の右手を取った。


 棘が刺さってたら大変だろ。ローランドはそう言うと、少し眉を潜めた。

 そう言えば、こいつも意外と過保護だったっけ。


「大丈夫よ。こんなん舐めておけば治るから」


 そう言って手を引っ込めると、ローランドはしゃがんで、私の右足をつかんだ。ぬめりとした生暖かい感覚が走る。


「ひゃあっ!」


 思わず声をあげてしまった。


 何?舌?ちょっ!女の足を舐めるなんて!ローランドが変態に?


「変な声、出すなよ。舐めときゃ治るって言ったの、お前だろ?」

「あんたが舐めろとは言ってない!離さないと殴るよっ」

「大人しくしろ!棘が刺さってる。血が止まる前に取らないと悪化するぞ」

「……痛っ」


 棘が刺さっているなんて知らなかった!確かに結構痛いかもしれない。

 ローランドは舌で棘を探り当て、それを口で吸い出す。医療行為なのに、なんだか背中がゾクゾクする。


 少し冷静になろうと、私はローランドの顔をじっと観察してみた。

 幼馴染で見慣れているとはいえ、本当に整った顔をしてる。


 いかにもオシャレに気をつかってますという感じ。整髪料できちんと整えた髪は、少し長めで綺麗な栗色だ。

 公爵家の直系男子に受け継がれるエメラルドの瞳、彫りの深い目鼻立ち。

 はっきり言って、超絶可愛い美人と言っていい。


 昔からしょっちゅう違う女の子を連れているけど、ローランドより美人は見たことない。


「……う、ぐっ」


 傷を舌で深くえぐられるように触られて、私は無意識にうめいた。


「悪い。痛いか?もうちょっとだから、我慢してくれ」

「……うん。ありがと」


 しょうもないタラシだけど、実は意外といいやつ。それがローランドだ。


「よし!これで棘は抜けた。今、消毒薬をもらってきてやるから、ちょっと待ってろ。動くなよ」

「うん。ごめんね。迷惑かけて」

「気にすんな。お前も一応は女だから。生足舐められて、ご褒美だな。ま、欲を言えば、もっと足首が締まってるほうが好みだけど」


 は?い?う?お?な、な、な!何?


「バカっ!ローランドの変態っ!」


 側にあった枕をつかんで投げると、ローランドは華麗にそれを避けた。


 感謝なんかして、不覚だった。こいつは変態イケメンだ!

 今日から私は、ローランドをそう称することに決めた。


「クララ!怪我したって、大丈夫なの?」

「ヘザー? どうしてここに?」


 消毒薬を持ってきてくれたのは、なぜかヘザーだった。


「宿に入っていくのを、たまたま見かけたのよ」

「え、図書館は?」

「それがねえ、東洋の女学生の団体が観光してて、激混みだったの。『占いの館』で見たのと同じ制服だったわ。たぶん、別グループだけど。だから、早々に引き返してきた」


 ちょうど道の向こう側から、私たちを見つけたらしい。追いかけて宿に入って、ロビーで出てくるのを待っていたという。


「でも、戻ってきてよかったわ。ローランドが馬車を手配してくれているから。病院に行きましょ」


 足の怪我は擦り傷だけで、痕は残らないという。杖をつくほどでもないけれど、しばらくは足を高くして寝るようにと言われた。

 たいしたことなくて、本当によかった。


 ローランドは、病院まで付き添ってくれた。そこから寮まで、馬車で送ってくれる。


「歩けるのか?寮まで抱っこで運んでやろうか?」

「あんた、バカなの?そんなことしたら、クララが悪目立ちするでしょ!私が肩を貸すから大丈夫よ」


 ヘザーがテキパキと言った。さすがの機転!


 まだ女子寮に入って間もない。明日が入学式の新入生。できれば目立ちたくない。


「二人ともありがと。迷惑かけてごめんね」

「「慣れてる」」


 今、カブったよね。いつもこんな風に二人の世話になってるってこと?

 私はなんだかすごく、申し訳ない気分になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 女の足を舐める!? それ何ていうプレイ? 今度は変態イケメンか。 個性のある濃いイケメンばかりですなあ~♪
[一言]  あれぇ? なんかやたらと愛されてない?
[良い点] >課外授業 ああ……うん。 そうか、と納得してしまいましたw しかしお色気というので、こう、男の色気ムンムンタイプなのかと思いきや、可愛い系! えっ。 意外……。 [気になる点] ヘザー…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ