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18. 公爵令嬢エリー誕生

「あれ? エリーゼ、ピアスなんてしていたっけ?」

 

 いつものメンバーでのランチタイム。

 目聡いブランシュは、エリーゼの耳についた小さな魔石のピアスに気が付いた。


「この前、父からプレゼントしてもらったの」

「珍しい石ね! とても素敵よ。その位のサイズ、私も欲しいわ」


 ブランシュの言葉に、エリーゼはニッコリと微笑み、耳たぶを触る。 

 

 父は父でも、義父となったユリウスに貰った物。


 騎士学校では、学生らしからぬ華美な装飾品でなければ、ある程度のアクセサリーは認められている。

 ただし、定期試験中は不可。


 卒業直後の各騎士団による入団試験では、実力はもちろんのこと服装も厳しく見られるからだ。内定を受けていようが関係ない。騎士たるもの、服装の乱れは心の乱れだと。

 不正防止も兼ねているが、あからさまには言われない。騎士道精神は学校でしっかり学んでいる前提だから。


 学校での試験もそれに準じているため、試験時以外なら何の問題もない。

 剣術大会の時につけていたブレスレットでさえ大丈夫なのだから、小さなピアスを気に留めるのは仲の良いブランシュくらいだろう。


(そういえば……)


 剣術大会でラインハルトにエリーゼが行った癒しは、ブレスレットの魔石にアンジェリーヌが付与しておいた力を使ったと、ユリウスは思っているようだ。

 実際、兵士学校の魔物討伐の時は、付与されていた光の力のおかげで穴を塞げた。


 それ以降、付与してもらっていないが……エリーゼの力を説明できないので、否定して事をややこしくする必要ないと聞き流しておいた。

 養女になるにあたり、ユリウス立ち会いのもとルークによって精密度の高い魔力測定も行われたが――前世と変わらず、何の属性も出なかった。


 魔力が無いのに、マナを集められるのが自分でも不思議でしかたない。魔力でも神聖力でもないのなら、一体何だというのか。デールの曖昧さも気になるが。無理に答えを求めると、()()頭痛に襲われるからうっかり訊けない。


(せめて、父さまと同じ水属性が出てくれたら良かったのに)


 因みに、このピアスは変身用の魔道具だ。

 エリーゼはピアスの穴を開けていない。ユリウスがピアスを耳元に近付けると、痛みも無くパチリとはまった。

 

 エリーゼの髪色を、ユリウスと同じシルバーブロンドに変え、発動すると耳からピアスは消えて感知されにくくなる高性能な物。ユリウスから全ての事情を聞いたルークが、潜入で使ったペンダントを更に改良して作ったらしい。

 

 やはり、エリーゼの髪色は目立ち過ぎるのだ。

 神聖帝国の人間で青騎士を知っている者は、髪色からガスパルを連想する可能性がある。


 それを危惧して、エリーゼとは別人のエリーという人物を作り上げることにした。名前の使い回しは、この際気にしない。慣れている方が、呼ばれて反応しやすいから。

 前世の名前でもいいかと一瞬思ったが――自分を呼ぶ懐かしい人達の顔が浮かぶと、胸が苦しくなってしまい無理だった。


 兵士学校のエリーは、少年として過ごしていたので名前が同じでも気付かれることはないだろう。


 そして。


 どうせならと、ユリウスはエリーゼを自分の実子かもしれない説を、社交界で()()()()広めていくつもりだと言っていた。

 隠蔽するなら徹底的にやるようにと、公王の助言を受けて。


 いくつか出された案の中で、イザックの考えたストーリーが採用された。


 ユリウスには、恋人がいたことにする。もちろん架空の存在だが。


 両思いだったにも関わらず、身分違いに苦悩した平民の恋人は、身籠ったことを知るとユリウスの前から忽然と姿を消してしまった。

 ユリウスは必死で彼女を探したが見つけられず……。

 それもそのはず。

 体の弱かった恋人は、ユリウスに迷惑かけまいと隠れて娘を出産し他界していた。孤児院で育った娘エリーをユリウスが見つけ出し、養女したと。


 いかにも悲恋ぽくて、恋愛小説好きの貴族令嬢たちが好みそうな内容。まるきりの平民の養女より、高貴な血を引く者とすれば、受け入れられやすくなる。

 母親が平民なら、魔力無しの子でもおかしくない。多少の陰口はあるだろうが、面と向かって蔑む者は出ないだろう。

 

(――でも。本当にそれでいいのかしら?)


 自分のせいで、ユリウスの恋愛や結婚が遠のく気がしてエリーゼは申し訳なく思う。

 けれど、エリーゼとは別人の公爵令嬢を作り上げた方が、何かと都合がいいのは事実。


 その上、ユリウス自身もかなり乗り気だ。下心がある令嬢が寄って来なくて良いと、当人が楽しそうなのだから止めようもない。


(モテ過ぎるのも大変なのね……)


 しかも、一番この話にくいついて涙したのは、なんと公妃だった。全面的に公爵令嬢エリーをバックアップしてくれるそうだ。もう、後ろ盾は完璧ではないだろうか。


 公爵令嬢エリーの設定の一つとして、母親似で病弱ということにした。


 新しい身分はどうにかなったが、騎士学校の卒業後のエリーゼの存在をどうすべきかが迷いどころだった。

 書類上は騎士団に所属し、ユリウス直属の部下としてエリーの部屋付きの護衛とすることにした。

 つまり、一人二役。

 

(まあ、デールがいるからどうにかなるわよね。ルーク先生の絡繰り人形も使えそうだし。それより、アルにはどう伝えよう……)


 アルの事情だけ勝手に覗いておいて、エリーゼの事情だけ隠すのもどうかと思った。

 けれど、両親のことは流石に言えない。

 

 チラリとアルを見ると、ばちっと目が合ってしまう。

 

「よく似合っている」とアルもピアスを褒めてくれたが――視線の圧を物凄く感じた。

 ペンダントの時も、直ぐに解除されてしまったのだ。


(あぁ。これ絶対、魔道具って気付いているわよねぇ……)


 


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