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9. 説明求む

「説明してもらおうか」


「えっと……」とエリーゼは口ごもる。


 またしても、魔塔に繋がる部屋へと転移させられたエリーゼは、アルに詰め寄られていた。

 つまり、認識阻害も変装もあっさり見破られたのだ。

 エリーゼの首から下げたペンダントを摘んだアルは、事も無げに解除してしまう。


 さっきまでのボーッとした虚な王子はどこへ行ったのか。全てアルが演技していたのだと察した。


「その姿の方がいい」とアルは顔を近付ける。


(にこやかなアルの笑顔が怖い。でも……)


「酷いクマだし顔色も悪いけど、大丈夫?」


 エリーゼは近くにあった、病人みたいなアルの顔に思わず触れた。


「――なっ!?」と、アルはエリーゼの前から飛び退いた。


「え?」

「いや……急に触れるから」

「それを言うなら、この前いきなり額にキスしたの誰よ」

「……悪い」


 青白かった顔色に朱が差したが、一瞬で戻る。


(おや?)


 あの時は平然と友達ならすると言ってのけたくせに、ばつが悪くなったのかアルは横を向いて言う。


「エリーゼがしている見た目を変える魔法と同じだ。ただ、もっと高度だけど。だから、具合は悪くない」と。


「だけど、毒やさっきのお香は?」

 

 訊いたら教えてくれそうな雰囲気だったので、つい口を滑らせた。


「毒って……あの時から居たのか」


 はあぁーっと、盛大な溜め息をアルが吐く。


「どうせデールも来ているんだろ? 呼んでもかまわない」


 アルはチラリとエリーゼの手首に視線をやる。

 お互い、知られたくないことを相手が知っていると理解した。隠したところで意味はない。


「うん、呼ぶわね」


 エリーゼが「デール来て」と声をかけると、デールはシュンッと姿を現す。


(……ん?)


 どこか強張っているようなデールの表情。別行動中に何かあったのだろうかと、エリーゼは首を傾げた。


「それは、ルークの仕業か?」


 開口一番、アルは言う。

 デールが相変わらずの、美少女メイドの姿だったからだ。

 呆れるアルにデールはニヤリとする。

 

「似合うだろ? 惚れてもいいぞ」

「……ほざくな」


(あれ? いつも通りのデールだわ)


「オレまで呼んだってことは、何か話があるんだろ?」


 キョロッと部屋を眺めたデールは、この空間にさほど興味が無さそうだ。

 スカート姿で胡座をかいたデールに、「その姿では足を閉じろっ」とアルは文句を言ってから話し出す。


「今はまだ、時じゃない。だから、王宮(ここ)でのことに手出しは無用だ」


「――わかったわ」とエリーゼは答える。

 やはりアルには考えがあるのだ。


「私たちは、万が一のためにルーク先生に頼まれただけだから。そのかわり教えて。さっきのは、何?」


「さっきの?」とデール。


「あれは一種の洗脳だ。神官になりすました魔術師と、母……側室のな」

「洗脳って!? なんでアルのお母様が?」

「まあ。色々とややこしい問題があるんだ。だから、まだ俺は動かないし、エリーゼ達も()()()()()()()()()


 エリーゼは混乱するが、アルから有無を言わせない強い意志を感じた。




 ◇◇◇◇◇



 

 ――そして、式典当日。


 エリーゼとデールは、礼拝堂の屋根の上にいた。なぜかメイド姿のまま。

 

「ねえ、せっかくなら中で見ても良かったんじゃない?」


 聖女認定の儀と、クリストファーの婚約式。

 もしかしたら、クリストファーが王太子になるかもしれないのだから、アルの様子も気になった。


「堅苦しいのは好きじゃない」とデールは却下する。


 エリーゼはやはり神聖力が強い場はデールには辛いのかもと思い直し、それ以上は言わなかった。


「アルも言っていただろ。()()()()何も起こらないって」

「そうね……」


 アルは洗脳を強めるための香が焚かれる寝室に戻る前、確信に満ちた目で言い切ったのだ。

 洗脳も対策済み。毒の方も、いくら盛られても耐性があるから大丈夫だと。


()()()アルの味方は居ないのかしら?」

「どうだかな」



 式典は、予定通りに進んでいる様だ。

 

「それにしても、あの大神官様……」

「見覚えがあるのか!?」とデールは驚いたように言う。


「え? 全然無いわよ。すごく若いからビックリしちゃった」

 

 エリーゼの神官時代の大神官も白髪だったけれど、完全なるおじいちゃんだった。


「――そうか」

「何? 変なデール。大丈夫よ、デールの方が綺麗だから」

「はっ、そんなの知ってる」

 

 

 会場に集まった貴族が、黒髪の第一王子に対して蔑みの視線を向けていることに、腹を立てつつ―― くだらない会話をして、エリーゼとデールは式典を見守った。


(きっといつか、彼らは後悔することになるわ)




 ◇◇◇◇◇



  

 盛大な式典は、会場を移しパーティーが行われた後、最後は国民への婚約パレードで締めくくられた。


 王太子を決める宣言もあるのではないかと期待していた者は、ガッカリだったかもしれないが。

 王都は、聖女誕生と国民から好かれている第二王子の婚約で、お祝いムードで華やかにわいている。

 

 聖女になり、正式に婚約者と認められたリリアーヌの幸せそうな顔を見たクリストファーは、主役が彼女であることに満足していた。

 立太式は別にやればいいだけなのだから、と。



 ――だが。



 式典会場の片付けが始まった頃。


 納得できない人間の一人が、王族専用の赤い絨毯の敷かれた長い廊下を、ズンズンと歩いて行った。


 怒りに満ちた表情を扇で隠しもせずに。



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