表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/147

22. 不可解なランチタイム

 交流会も終わり――。

 生徒のお祭り気分もすっかり抜けた頃。



「ねえ。この状況はなんなの!?」

「えっと……。さあ?」


 丸いテーブルに手をつき、前のめりに顔を近付けるブランシュ。女同士とはいえ、エリーゼは座ったまま上半身を後ろに反らす。


 学校の食堂のテラス席。

 

 エリーゼとブランシュとデール、いつもと変わらないメンツでのランチタイムの筈が、なぜかアルとラインハルトも加わっていた。


 こんなに目立つメンバーが揃っていても、周囲が静かなのは早々にエリーゼが認識阻害を発動させたからだ。はたから見たら、生徒が数人座っているな……程度の存在感。

 エリーゼ本人だけではなく、エリーゼが意識して発動すれば側に居る者にも使えると、最近になってデールに教えてもらった。


(もうっ! この力の取説が欲しい。それにしても、ブランシュの意見に同感だわ)


「まあ、落ち着けよブランシュ」とデール。

「私は……少し話すべきことがあってだな」とラインハルト。

「気にするな」とアル。


 エリーゼを避けていた張本人は、しれっと言った。

 

(いや、一番違和感あるのはアルだけど……)


 アルとエリーゼのわだかまりは解けたが、それを知る者はいないのだから。

 ブランシュは明らかに自分より身分の高い二人に反論できず、ヒクッと口の端を動かし、取り繕った笑顔を浮かべ椅子に座り直す。そこはさすが子爵令嬢だ。


「周囲に音遮断の結界を張った。これで、話ができるだろう」と、アルはラインハルトに向かって言う。


 エリーゼとブランシュは顔を見合わせる。ラインハルトの話が何だか分かった。


「感謝する」とアルにお礼を言うと、今度はエリーゼに向く。

「その節は、本当に申し訳なかった」とラインハルトは頭を下げてから話し出した。


 ――イングリッドとメレーヌに科された処罰についてを。

 

「結論から言えば、二人とも退学になった」

「……そうですか」


 学校行事中、あれだけの人の前で起こした騒ぎなのだから、学校の対応としては当然の結果だった。


「毒薬だったと知らなかったとはいえ、イングリッドがしたことは許されない。伯爵家としても責任をとり、両親の監視のもと、遠く離れた領地に送られ数年はそこから出ることはできないだろう」


 イングリッドが、ラインハルトの水筒に多めに入れた薬草は毒ではない。アナフィラキシーを知らなかった可能性がある。

 具合が悪くても戦いをやめないラインハルトの性格を見越して、本来の動きが出来ずエリーゼの剣で傷つくように飲ませた物。


「従兄が少し苦手な薬草を多めに入れてしまっただけ。身体には害が無いと思っていた」と言われたらそこまでだ。

 メレーヌが剣に毒を塗らなかったのだから、言い逃れは出来てしまう。

 その後ラインハルトに直接飲ませたのは、解毒薬の濃縮ポーションだと思っていたのだから。悪意の無い過ぎたイタズラで押し通したのだろう。


 そう考えれば、未成年の伯爵令嬢としては致命的な罰を受けたことになる。この醜聞はずっと付き纏う。社交界デビューも遠のいた筈だ。


 対して――。


「メレーヌは……」


 とラインハルトは言葉を詰まらせ俯いた。

 膝の上で握った拳に力を入れ、一呼吸おく。下げていた視線を上げ、エリーゼを見てしっかりとした口調で言った。

 

「メレーヌは自分で作った毒を隠し持ち、裁判の前に自害した」

「……え?」

「本当にすまない」


 被害者であるラインハルトが謝る必要はないのだが、イングリッドが巻き込んだ人達に対しての懺悔なのだろう。

 きっと、残されたメレーヌの家族にもラインハルトは謝罪に行ったのかもしれない。悲痛さが滲む。


「先輩が謝る必要はありません。どんな理由があったとしても、他人の命を奪おうと実行したのはメレーヌ自身なのですから」


 ユリウスのようにキッパリと言ったエリーゼに、ラインハルトは目を見開く。


(それと自害は別だけど……。ん? でもどうやって、毒を持ち込んだのかしら?)


 毒殺を試みたメレーヌは牢に入れられた筈。

 当然、まだ毒を持っている可能性も考え、身体検査もしただろう。面会も限られるし、メレーヌはただの学生。プロの犯罪者ではないのだから、看守の目を掻い潜れるとは思えない。


 ふとデールの視線が気になった。


『どうかした?』とデールに頭で呼びかける。


『メレーヌは死んでない』

『えっ!?』

『まあ、ある種の更生施設に入った……ってところだな』

『何それ?』

()()()()……ユリウスに何らかの能力を認められたんだろ』

『そう……。だから、死んだことに』


 複雑な思いはあるが、メレーヌが生きていると知ってホッとした。


「おい。大丈夫か?」


 唐突にアルが声を掛ける。


「え?」

 

 手に温もりを感じ視線を落とした。テーブルの上でエリーゼの手はアルに握られている。


「なっ――!?」

「メレーヌの件はエリーゼのせいでもないから気を落とすな」


 一見、アルはエリーゼを心配して言ったかのようだが、鋭い視線をデールに向けていた。デールはそんなアルに挑発的な笑顔を見せる。


(ま、まさかっ……デールと会話していたのを気付いたの?)


「そうだ! エリーゼは何も悪くない!」とラインハルトまで手を乗せ励ましてくる。


 その上……

 

「ねえ、王子様とどんな関係なのよ? もしかして三角関係? いや……四角?」


 とエリーゼにそっと耳打ちしたブランシュ。


「たぶん……みんな友達?」

 

 これからの学校生活がどうなっていくのか、エリーゼは乾いた笑いしか出なかった。


 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ