18. 真相は
お読みいただき、ありがとうございます!
本日、二話目の投稿です。
どうにか剣術大会一日目も終了し、二日目はブロックで勝ち進んだ者同士の準決勝、決勝戦が行われる。
エリーゼは、疲れていたが眠れなかった。
『ねぇ、デール。少し付き合ってくれない?』
手首に向かって念じるように話しかける。
『かまわないぞ』と返事が来ると同時に、部屋からいつもの屋根の上にエリーゼは移動していた。
「眠れないのか?」
久しぶりに、フェレットではなく悪魔姿のデールは、夜空に浮かんでいる。
「うん、まあね。色々気になっちゃって……」
あれから当然――。
イングリッドとメレーヌは取り調べを受けたのだろうが、学校内のイベント中の出来事ということもあり、詳しい話はまだ無い。
「デールは……。おおかた真相を知っているのでしょう?」
「聞きたいか?」
「そりゃね」
エリーゼは、自分の手首にあるブレスレットを眺めた。
「じゃあ、教えてやるよ」と、デールは赤い目を細めて言う。
「ユリウスが、エリーゼの力をブレスレットに挿げ替えて誇張したのは……たまたまだ」
「え!? たまたまって、偶然てこと?」
「ああ。来賓席で観戦しながら、ルークの監視用の魔道具の話を、校長が根掘り葉掘り聞いていたからな。その流れで、騎士学校の生徒への装身魔道具の話になって行った」
「もしかして、デールったら戦いながら聞いていたの? あんな離れた場所の会話を」
「そうだけど?」
「………悪魔って、器用なのね」
デールは、ふふんと鼻で笑う。
「ユリウスは穴の一件の時、ブレスレットの魔石にアンジェリーヌが魔法付与したのを知ったんだ」
「あっ、父さまからね!」
そうだとデールは頷く。
「もちろんユリウスは、校長なんかに本当のことなんて言わないが。たまたまあの場で、魔石への魔法付与の話が出ていた」
「それで、あんな風に言ってくれたのね」
「ユリウスは……この国で聖女は出したくないんだろ」
「どういうこと?」
「さあな。ただの勘」
「悪魔の勘?」
「ああ、当たりそうだろ?」
デールは悪魔っぽさアピールなのか、妖艶に言う。
「ルークが監視用の魔道具を付けたのって」
「それはイングリッドが潜り込ませていた、蝶の魔道具について……アルが気付いてルークに伝えたんだ」
「えっ!?」
ここで、アルの名前が出て来るとは思わなかった。
デールはアルには触れずに話を続ける。
「エリーゼの試合開始直後、メレーヌがエリーゼの剣に何かを仕込んだのがしっかり映っていたのをルークが確認した。それで、メレーヌは捕まったんだ」
「変ね……。それならどうして、試合は中断させられなかったの?」
「実際、メレーヌは剣に毒を塗らなかったからな。証拠に、その時の布をルークに差し出した」
つまり、布からは毒は出ず未遂だったと。
たとえ本当に毒が塗られていても、デールなら阻止しただろうが。
「その後は知っての通りだ」
「じゃあ、先輩は水筒の毒でああなったの?」
「まあ……毒と言えば毒だろうな。あのドリンクには、ラインハルトの体に合わない薬草が入っていたみたいだからな」
エリーゼは、ハッとする。前世ではよく知られていた言葉。
(――もしかして、アナフィラキシー?)
「イングリッドは、それを多めに入れたんだ」
「ちょ、ちょっと待って! イングリッドが飲ませたのが解毒剤でなかったのなら、どうして先輩は一時的に回復したの!?」
待ってましたとばかりにニヤリとする。
「まさか……デールが?」
「ああ、体内の成分だけ抜き取った」
デールは人差し指を立て、ラインハルトから抜き取ったのであろう液体を浮かべて見せた。
「もうっ! だったらどうして、イングリッドが飲ませた毒も抜いてくれなかったのよ」
「そっちは、ただの解毒剤だと思ったからな」
デールは申し訳なく思ったのか少しだけ首をすくめ、苦笑いをした。
「それにしても……。メレーヌは前もって、毒をイングリッドに渡していたのよね?」
「だろうな」
メレーヌは、最初からイングリッドを嵌めるつもりだったのだ。
そこまでメレーヌを追い詰めたイングリッド。これから、それも明らかにされるのだろう。
従兄であるラインハルトを思うと、複雑な気分になり、エリーゼは考え込んでしまう。
「おい、エリーゼ!」
呼ばれてパッと顔を上げると、目の前にはデールの綺麗な瞳が。そこにエリーゼが映るほどの近さ。
「ひゃっ! な、なに!?」
思わずのけぞった。
「何じゃないだろ。そろそろ戻らないと明日の試合まずいんじゃないか? 相手……アルだろ」
「……あ」
(そうだった)
エリーゼが寝付けなかった、もう一つの理由。
あの騒ぎの最中ではアルの存在を忘れていたが。
(あんな風に、ブレスレットをみんなに見せたのだもの――。きっと、アルも見たわよね)
ブレスレットを、エリーゼが持っていることは伝わっただろうが、却って嫌な気分にさせてしまったかもしれないと心配になった。
(この誤解……いつか解ける時が来るのかな?)
エリーゼは、小さく溜め息を吐いた。
「エリーゼ。お前には、オレが……」とデールはボソリと呟く。
「え、何?」
「いや、何でもないっ。さっさと寝ろ!」
デールがエリーゼの額を軽くピンと弾くと、そこはもうベッドの上だった。
そして、エリーゼはすぐに眠りに落ちた。




