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10. アルフォンスの苦悩③

お読みいただき、ありがとうございます。

鬱々としたアルフォンスのお話はこれで終わります!



『所詮、アルフォンスという名ばかりの道具……ただの駒だ。お前自身に存在価値など無い』


 顔の見えない誰かが、アルフォンスに囁き続ける。

 抗う気力さえ起こらない。


 ――――アル!!


 闇のような虚無感の中、ふとエリーゼの声が聞こえた気がした。アルフォンスは閉じていた目を開け、辺りを見回すが、勿論そんな筈はない。

 また、ゆっくりと目を閉じる。


 危機が迫った時、伸ばされた手。アルフォンスではなくアルとして、存在を認めてくれた少女。

 けれど――


(今の俺は、エリーゼの横に立つ資格はあるのか?)


 アルフォンスという、ただ利用される駒に。

 



 ◇◇◇◇◇

 


 

 エリーゼの声を思い出してから――。

 暴走しないよう見張られた部屋で、アルフォンスは自問自答を繰り返す日々を過ごした。


(エリーゼにも事情がありそうだったな……)


 訳ありであろう両親と、エグゼヴァルドの関係。


 違和感だらけのデールは、人の能力の域を超えている。魔塔きっての魔法使いであるルークよりさらに上。たぶん人間ではないのだろう。

 書物の中にしか見たことのない存在。かといって、黒魔術を使い()()エリーゼが呼び出したとは考え難い。

 奴らは、人間を利用するために契約の一種から、護りはしても、大切に思ったりしない。感情を持たないのだから。


(いや……例外はあるかもしれない)


 明らかにデールは、エリーゼに何らかの感情がある。これはもう直感だった。

 もしも、悪魔という存在さえも受け入れているエリーゼなら、偽物のアルフォンス……自分という存在も、認めてくれるかもしれない――。


 アルフォンスの中に一筋の光がさす。


 導き出した答えは、駒からの脱却。母だった人の顔を思い浮かべれば、胸は鈍く疼く。

 だが、あの王妃を自分の母だとは認めたくない。

 それを払拭し、エリーゼの隣に立てる地位と存在意義を得ようと、アルフォンスは心に誓った。


 


 ◇◇◇◇◇




 心を決めたアルフォンスは、急いで事を起こした。


 魔道具から()()()()()に呼びかけ、デールを探ってきてもらう。エリーゼに興味を抱いてしまったのは失敗だったが、やはりデールのオーラは視えなかったという報告を受けた。

 疑念は確信に変わっていった。全ての辻褄が合っていく。


 そして、アルフォンスは部屋を抜け出し、父親である国王に会いに、王国へと向かった。

 謁見許可の願いなど出すこともせずに――。

 深夜、国王の寝室に直接転移し、結界で外部と遮断したのち、自分の本来の姿をみせつけ真実を伝えたのだ。

 

(ずっと手が届かず、近付くことも許されなかった存在が、あんなにも小さく見えるとは……)


 国王として、夫として、父として、愕然としていた。

 自分の側室の策略を見抜けなかた愚かさ。利用された息子たち。王国にとって、金の瞳を持つ者の必要性。国を陥れる策に関与した者の洗い出し。宮廷魔術師や神殿の方まで。

 これから、最善の道を探さなくてはならない。


 想像もしていなかった事態に、アルフォンスにどう接したら良いかすら判断できず、第二王子の剣となる誓約の撤回を認める代わりに、少し時間が欲しいと言った。


 ――予想通りの結果。


 国王の動きは、妃たちに勘付かれないようにしなければならない。一歩間違えば、王家……いや、王国が崩壊しかねないのだ。

 金の瞳を持つ者こそが、君主になるべき存在。数百年ぶりの誕生に、国民が知れば歓喜するだろう。

 だがしかし。

 その過程で、真実を知っている国王自身が、揉み消そうとアルフォンスを亡き者にする可能性も否定できない。他は誰も知らないのだから。


 これは一種の賭けでもあった。


 王家の失態をどう始末するか、アルフォンスは時間を与える条件とし、王子として公国への留学を提案した。

 幸い、こっそりと公王へ託していたのだから、第一王子アルフォンスとして名を明かし留学させる程度、公国としては大したことではない。


 第一王子としてアルフォンスを王太子にした方が、国王としても得策になる。

 

 ――問題は、それ以外なのだから。


 


 ◇◇◇◇◇




 戻ったアルフォンスの、編入手続きはあっという間だった。

 もともと、公王弟の方から騎士学校へ入学してはどうかと、ルーク伝いに話は聞いていた。


(エリーゼに、会いたい……。だが、今の俺ではダメだ)


 エリーゼを、アルフォンスの事情に巻き込む可能性が大きい。

 そして、デールの存在を見極める必要性もあった。

 

(それなら、エリーゼと距離を置きつつ、そばに居ればいい)


 嫌われるのは不本意だったが、それでも近くでエリーゼを感じていたかった。


(いつか話せる時まで我慢するしかない)


 エリーゼが立派な騎士になり、アルフォンスが国を治められた、その時は……。


 アルフォンスの中で何かが変わって行く。

 

 ――希望という小さな光が輝き始めた。

 

 


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