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18. 待ち伏せ

だいぶ更新が遅くなり、申し訳ありませんm(__)m

 結局、ユリウスは夕食時には間に合わず、公爵邸に戻って来たのは深夜だった。


 気になったエリーゼは、騎士服姿ままユリウスの帰りを待ち、出迎えるとそのまま執務室へ来るよう言われた。デールも一緒に。


「魔塔へ行かれていたのですね」

「ああ、そうだ」


 エリーゼは教えてもらえるまで粘ろうと思ったが、ユリウスはすんなりと詳しい話をしてくれた。


「捜索がかなりの広範囲になるからな。ある程度の人員が必要になる」


 魔法や魔術の痕跡を探すため、そういった能力に特化した魔術師をメインに、派遣するよう魔塔主に頼んできたらしい。

 もちろん、その先の対応についても考えなければならず、魔塔主たちとの会議が長引いたそうだ。

 目撃者は一人しかおらず、詳細がわからないのだから。 


 人為的に魔物を移動させたのなら、どんな魔術が使われ、どこに転移させたのか。一介の魔術師ができる技ではないのは明らかだ。

 他の公国内の魔物生息地については、すぐに報告がくるそうだが。オプスキュリテの森が一番厄介な魔物が多い。

 

「早急に対処しなければならない」


「はい」とエリーゼも頷く。


 もしも、事前に魔物の動きが活発だと報告が上がっていなければ、気がつかなかった事態。本来の討伐時期はもう少し後なのだから。

 

(しかも、お義父様や私が帝国へ呼ばれた時期と重なったのは……たまたま?)


 考え過ぎかもしれないが、それが全て仕組まれていたのなら――何気なくした想像に、エリーゼはゾッとする。

 

「わざと、魔物が他国に転移されたのだとしたら……」

「この国の仕業だと思われるだろうな。転移させた者は、何らかの方法で、公国からだという証拠を残す筈だ」

「そうなれば」

「当然、戦争の火種になる」


 やはり、ユリウスも同じ考えのようだ。


「まだ確証はないがな」


「ですが、もし」とエリーゼが言いかけると、ユリウスは首肯し、広げてある地図に視線を落とす。


 今のところ、まだ何も知らせは無いそうだ。

 どこかに大規模な魔物の襲来があれば、すぐに騒ぎは広まり、諜報員の耳に入る――そう、あくまでも大都市なら。

 貴族の居ない田舎であれば情報は遅れる。ただ、それだと目的がわからなくなるが。


 何にせよ魔物が転移した所が、公国のように討伐に特化した国でないのなら、被害は一体どれ程のものになるのだろうか。


「公国内の者である線も捨て切れないが。何者かがこの国に侵入した可能性が高い。私の方は、先ずそれを徹底的に調べなければなるまい」


「私は……」と聞きかけると、ユリウスは首を横に振る。

 まだエリーゼには出来ることは無いらしいが――。


「明日、エリーに帝国での詳細を聞かせてもらいたい」


 タイミング的にも、帝国が関わってる可能性があるなら、些細なことでも報告すべきだ。

 エリーゼが返事をすると、今夜はもう休むようにと部屋に返された。

 

 足取りの重いエリーゼの横で、デールはずっと無言だった。

 

 


 ◆◆◆◆◆

 



「次から次へと、どうなっているんだ!!」

 

 次々に襲いかかる魔物に、悲痛に満ちた怒鳴り声を上げる。これでも、この男はプロイルセン国第一騎士団の騎士団長なのだ。

 同じ部隊のアルフォンスは鼻で笑った。


 部下を使い、今まで散々アルフォンスに嫌がらせをし、何度も命の危機に陥れようとしてきた。

 それなのに、この程度の力量しかないのか。


 嫌がらせの数々が、王妃の仕業ではないともう分かっている。たとえ王妃からの指示だと、匂わせがあったとしても。

 裏で糸を引いているのは、側室の母と魔術師だ。


(俺を殺せない、無能な第一騎士団ごと潰すってことか)


 さっさとアルフォンスを始末できない、この第一騎士団を見限ったのかもしれない。


(それとも、この待ち伏せのような魔物襲来には意味があるのか?)


 最終的にやって来た、国境付近の廃村地区。

 到着した時には、地面を揺らすほどの勢いで、夥しい数の魔物が山から下りてきていた。

 それなりに大変だった今までの魔物討伐が、準備運動だったのではないかと思えてくる。


 何か大きな企みがあるのは、最初から分かっていた。


(そうだ――この時を待っていた)

 

 襲いかかる魔物を叩き斬りながら、魔物がやって来る山の方へ神経を向ける。魔物とは違う魔力の流れがあるのを感じた。


「アルフォンス殿下!」

「ご無事ですか!!」


 背後から別の小隊で戦っていた部下が、魔物を斬り倒しながら走ってくる。

 

「フィルマンにジャノ。お前たちも無事だったか」

「当たり前です! 我々が命を落とす時は、殿下をお守りする時と決めています。そのために生きることを選んだのですからっ」


 ジャノの言葉にフィルマンも大仰に頷く。

 

「それは、迷惑な話だな」


 アルフォンスは冗談めかす。誰かに守ってもらう気などさらさら無い。


(あの頃の俺とは違うんだ)


 この二人は、騎士団員に混じったアルフォンスへの刺客――プロの暗殺者だ。早々に返り討ちにされ、アルフォンスの隠した力に魅せられた。

 中途半端な貴族子息の団員より、修羅場を潜ってきた分、人を見る目があったのかもしれない。


 暗殺者の失敗は、生き残ったとしても結局、依頼主から殺されるだろう。

 だからアルフォンスは彼らを殺さず、味方につけることにした。

 場数を踏んでいるだけあって、臨機応変に動ける二人はかなり役に立つ。主に暗器を扱うそうだが、騎士としての腕もそこそこだった。

 

「そろそろ、大物が()()来そうだな」


 アルフォンスは、変身用の魔道具を外すと魔力を解放する。幾つもの魔法陣を重ねて展開していくと、次々と団員が応戦している魔物に向かって放った。


 淀んで暗い空に眩ゆい魔法陣が現れては消える。

 魔物との激闘で死を覚悟していた団員の目の前から、攻撃魔法を受けた魔物が消滅していく。

 

「うわ、マジですげぇ」と、ジャノは瞳を輝かす。

 金髪金眼の新しい主人がすることに、ワクワクが隠せない。


 ある程度、魔物が減ってくるとアルフォンスはフィルマンに指示を出す。


「証拠は大切に保管しないとな」


「御意」と大柄で無口なフィルマンは、地べたに腰をついた騎士団長の前に立ち、無表情のまま見下ろした。


「ジャノは俺について来い」

「喜んで!」


 アルフォンスは魔物が()()()()()()()()()()()()に向かって、猛スピードで走り出した。

 




 

 

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