11. 学校は凄いが、なんだかなぁ
本日、二話目の投稿ですm(__)m
学校長を紹介したユリウスは、また会いにくるとだけ言って、さっさと転移して行ってしまった。
(……忙しい人なのかしら?)
見送った学校長は、エリーゼに向き直る。
「さて。この学校について、詳しく説明致しますので、部屋を移動しましょうか」
どうやら、この部屋はユリウスの為の特別室のようだ。なんとなく感じていたが、あのスクロールもユリウスが用意したのだと確信した。
学校長に連れられ、校長室へ向かう。
ロマンスグレーの姿勢よく歩く後ろ姿に、エリーゼは首を傾げた。
(この人が、信頼できる学校長……じゃあ、ユリウスって、何者?)
隣を歩くデールを見ると、エリーゼの考えを察したのかニヤニヤと口の端を上げる。
(あ、知ってるのね……)
デールは、あの夜だけでなく頻繁に見に来ていた様だ。言いたくて堪らない、そんな顔をしている。
エリーゼは敢えて聞くまいと、ちょっと思った。
「では、こちらへ」
校長室に入ると、促されるままシンプルなソファーに座った。
特別室とはだいぶ仕様が異なっている。華美な装飾は一切無く、平民向けの学校に相応しい感じだった。
大まかに、この学校についての説明を聞かされる。
先程のユリウスが創立者という事で、予想通りここは設立して間もない学校だった。
そして、何より設備が驚くほどしっかりしている。魔法に長けている国のせいか、校内が寒くなかった。
(一見、普通の学校だけど……設備は貴族のお屋敷以上だわ)
地理的に極寒の筈なのに、制服が普通の薄さでおかしいとエリーゼは思っていたのだ。
校舎、寮、訓練場は、全て魔石を使った魔道具で、温度管理がされている。寒い中での訓練は、ある程度慣れた頃から始まるそうだ。
最終学年になると、強制ではないが魔物討伐の実戦に参加する。正直、北部の魔物は凶暴だ。
その結果も加わり、貴族が通う騎士学校への推薦を得られる。
エリーゼは、この学校の意図が分かった。一般からも、精鋭を育てる為の施設なのだろう。
この公国は、独立前は国で最も過酷な領地だったに違いない。魔物の多い地域だ。隣接する国は、公国があるお陰で被害をまぬがれている。
だからこそ、侵略はしてこないが、手助けもしない。
――小さくても、完全に独立した強い国家。
ガスパルが選んだ理由はそこだろう。
公王に少し興味がわいた。
「以上が、この学校のカリキュラムです。それから、エリーゼさんとデール君は、特別な方法で入国しています。ですから――」
入学するにあたり、エリーゼは自分の出生や出身地は、決して口外しないよう釘をさされた。
何かあれば、とある村出身と言うようにと。
「それでは、寮の方へ案内いたし……」
と言いかけて、学校長はエリーゼをジッと見詰めた。
「……あの、何か?」
「いえ、見事にお父様の髪色ですね。お母様はお元気ですか?」
「はい、とても元気です。いつも、ニコニコで優しいですが……ああ見えて、父より母の方が強いのです」
ふふっと笑みを浮かべ、エリーゼはそう教えた。
この人は、アンジェリーヌを大切に思ってる――そう感じたから、子供らしく素直に事実を伝えたのだ。
「そうでしょうね」と、学校長は心底嬉しそうに目を細めた。
◇◇◇
寮は、全てが一人部屋になっているそうだ。
(へえ、珍しい。平民の寄宿舎なら、相部屋が当たり前なのに……)
女子と男子では、階が違う。女子が圧倒的に少ないので、上の階だ。と言っても、今年はエリーゼしか女子は居ないそうだが。
男子は、上に行く階段すら使ってはいけないらしい。
「では、デール君はここまでで」
そう言うと、デールの部屋を後にしてエリーゼの部屋へと向かう。階段を上がると、下の階とは違う間隔で扉があった。
エリーゼが案内されたのは、その中でも階段から離れた部屋だ。確か、この真下の部屋は空き部屋だった。
(もしかして、かなり気遣われている?)
「どうぞ、中へお入り下さい」
「はい、ありがとうござい……えっ!?」
室内を見て唖然とした。
「あの……これは?」
「女性用は、少し広めになっております」
学校長の話し方が妙に丁寧になっている。
「浴室も、完備しておりますので、安心してお使い下さい。この階だけは、女性の信頼のおけるメイドが掃除等は行いますので」
「はい? いや、そんなっ。掃除くらい自分でやりますから」
エリーゼは慌てて断る。
「ダメです。エリーゼお嬢様に、そんな事はさせられません」
「お、お嬢様?」
「は! 失礼いたしました。執事を長くやっていましたもので」
「あ、そうなのですね」
「どうぞ、今のはお忘れ下さい」
「……はい」
急な転職だったのだろうと、元執事の校長先生に同情してしまう。
「それから、こちらの部屋をご用意したのは、ユリウス様ですので」
そう付け加え、執事……もとい、学校長はお辞儀して出て行った。
エリーゼは、くるりと振り返り部屋を眺める。
見慣れない部屋の中に、いつもの光景があった。
「なんか、凄い部屋だな〜! オレのとこと違いすぎっ」
ぷかぷか浮いているデールは、クルクルと広い空間を回転した。
「こんなの、想定外よっ」
「まあ、いいんじゃないか? 強くなるのに、部屋の広さは関係ないし」
「うっ……それは、そうだけど」
「今度、ユリウスって奴の家に連れて行ってやろうか?」
ニパッと、デールは笑顔で誘う。
(うゔっ、気にはなるけど……)
エリーゼはブンブンと首を横に振った。
「ちぇっ。エリーゼは頑固だな……あっ!」
「今度は何よ?」
「同じ階の中に、面白い雰囲気の人間が居たぞ」
(悪魔が……面白いと思う人間?)
少しだけ引っかかった。




