メアリとルカのほのぼの南の島旅行
ずっとほのぼのしてるだけの話です
目の前には一面に広がる、セルリアンブルーの澄んだ海が広がっている。
夏の日差しは眩しく、ルカの金髪はきらきらと強い日差しを受けて煌めいていた。
メアリは日差しを遮るつばの広い帽子をかぶり、リゾート向けの丈の長いトルコブルーのリゾートドレスを身に纏って、薄手の白いカーディガンを日よけに羽織っていた。
ルカは青地にボタニカル柄の開襟シャツに、アイスブルーの短パンを合わせている。二人の髪は潮風に揺れた。
「わぁ、見て! 海が綺麗!」
海底のサンゴ礁が透けて見えて、鮮やかな熱帯魚もちらほらサンゴ礁の陰に隠れている。
遊泳船のガラスの床を指して子供のようにはしゃぐメアリ・ジェーンの姿を見て、ルカ・ハニエルはまなじりを下げた。
(来てよかった! こんなに喜んでくれるのなら毎日でも来たいくらいだね)
二人は夏の休暇に南の島に旅行に来ていたのだ。
「メアリの方がずっとずっと綺麗だよ」
満足そうに淡く微笑んでいるルカは今日も今日とていい笑顔だ。
「もう、ルカったら」
あいも変わらず砂糖を吐き出してくれる恋人に、メアリもだいぶ慣れてきた。
遊泳船は順路をぐるりと移動する。床は一部ガラス張りで、まるで海の上に立っているかのような錯覚を与えてくれる。色鮮やかなサンゴが二人の目を楽しませる。
「あ、もうすぐ海中散歩のできる場所につくね」
ルカはメアリの耳元に口を寄せて可愛らしく囁いた。彼の頬がメアリの頬にあたる。ふんわりとした天使のような頬である。
「う、うん」
メアリはどぎまぎした。本当にこの恋人はいつも心臓に悪い。
ルカの碧の瞳はきらきらとグリーントルマリンの宝石のように輝き、メアリの姿を映していた。
二人は全身を覆うスイムスーツを身に纏い、頭部に酸素補給用のヘルメットを装着する。
背中の酸素ポンプから酸素を供給してくれるので、安全に海底を歩いて行ける仕様になっている。
船が浅い海の辺りで停止し、梯子を下りた二人は手をつないで海の中に降りていく。
波の定期的な揺れをスイムスーツ越しに感じる。水温も少しぬるめの暖かさで心地いい。
海底の足元は砂のさらさらとしながらもきしむ踏み心地で、少々歩きづらい、まごつくメアリの腕をルカがすっと誘導した。
二人の周りを遊泳する魚はおそらくオウムブダイだろうか、鮮やかな水色と黄色のコントラストが美しい。
他にも黒と白の縞模様のツノダシや、オレンジの熱帯スズメダイなどカラフルな熱帯魚が泳いでいる。
見るとルカはうれしくて仕方ないといった様子でメアリを甘く見つめている。
二人を包み込む海はカラフルな熱帯魚で溢れていて、この空間を二人占めできるのが嬉しいのだろう。
(本当……ここだけ別世界に切り取られたみたい……)
メアリは感動した。きっと一生の思い出になるだろう。
…………
夕暮れ時、ルカはメアリの手を引きながら、高台のカフェにエスコートした。
ここは景色が良く、海側のテラスに出ると、海と一体化したかのような景色が広がっているのだ。
水平線に沿うように備えられた横に広がるカウンターはテラスで海を見ながら飲食できるようになっている。
メアリはピンク色のグァバのジュースを手に持って、隣のルカをちらりと見ると、ルカは甘やかな瞳でこちらをじっと見つめていた。
「メアリのジュース珍しいね、どんな味?」
「ん、一口のむ?」
「じゃあ、ひとくち交換しよう」
ルカは笑顔で自分の持っていたマンゴージュースを差し出した。メアリがひとくち貰うと濃厚な甘みの強いマンゴーがとろりと口の中に広がった。
ルカはルカで蕩けそうな笑みをしてこちらを見ている。
彼の艶々した唇がグアバジュースのストローに触れる。メアリは不覚にもどきりとした。その伏せがちの睫毛がとても色っぽい。
「うん、初めて飲んだけど甘くておいしいね。桃に近いけど、桃よりさっぱりしててすごく飲みやすいね」
そういってにこりと微笑むルカは紛れもなく天使の笑顔だ。心なしか後光も見えるかのようである。
さらりとルカの伸ばした手がメアリの髪を梳き、夕陽の光にかざした。
それをうっとりと眺めるルカは大聖堂に飾る像にでもできそうなほど美しい。
「メアリとこれてよかったよ」
ルカはメアリの髪を一房すくうとそのままふっと口づける。
夕日の出始めた海は、どこかノスタルジアな魅力を醸し出していた。
青とオレンジの混じる空が海に投影されて鮮やかに二人の背景を彩った。
「また来よう」
ルカは優しい手つきでメアリの頬を撫ぜ、ふっとその唇に口づけを落とした。
メアリは目を瞑り、しっとりと柔らかいルカの唇を受け止めた。
最後までお読みいただきありがとうございました!