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エピローグ 三巡目のプロポーズ


 モニカ・クレイルはメアリの友人だ。


 桃色のミディアムヘアはふわふわで、黄緑色のくりくりとした目をしている。


 性格の良さをにじみだした顔つきをしていた。


「あ、モニカ嬢、ちょうどよかった」


 ルカ・ハニエルが休み時間にモニカ・クレイルを訪れる。


「いつも相談にのってもらって悪いんだけど、メアリに指輪を贈りたくてね……」


 ルカ・ハニエルは今日も今日とていい笑顔だ。


 「サプライズプレゼントしたいんだけど、サイズがわからないんだ」といけしゃあしゃあと言ってのけた。案外堂々としていた方が不審がられないものである。


「まあ、素敵。メアリは確か私と同じ指輪をはめてぴったりでしたから九号ですわ」


 天然の入ってるモニカは何の疑問も持たなかった。


「そっか、ありがとうモニカ嬢」


 ルカは天使の微笑みを浮かべた。モニカは思わずほう、と見惚れてしまった。


…………


「婚約、ですか?」


 メアリは父親に切り出されてひどく驚いた。


 なんと婚約を申し込んできたのがあのルカ・ハニエルだという。


 彼とは友達として親しくおしゃべりする仲だ。


 その優しい人柄にメアリも好感を持っている。


「ああ、家の為に受けてくれないだろうか」


 そう言ってくる父親はどこか申し訳なさそうにしている。


 相手が伯爵家だから断れないのだろう。


「もちろんです」


 メアリはにこりと微笑んだ。ルカ・ハニエルなら安心だ。


 彼はいつもメアリ以上にメアリを知っているかのようにスマートなのだ。なんの問題があるというのだろう。


「それをきいて安心したよ。実はもうすぐ訪問すると先ぶれが来ていてね」


「え?」


 今日知らされたばかりなのに早すぎやしないだろうか。


 慌ててちょっと良いドレスに身を包んだメアリはいいところのお嬢様といったいでたちだ。


 この水色のドレスは細かいレースでおおわれており上品ながらも華やかである。


(一体どういうこと……?)


 ドレスのすそを軽く持ち上げながら階下に降りると玄関の大扉の前にルカ・ハニエルはすでにいた。


 ルカは黒い質の良いタキシードを着て、その手にはかなり大きな、一抱えもある真っ赤な薔薇ばらの花束を持っていたのだ。


 その口元は弧を描いており、メアリを甘い熱のこもった目で見つめ、ふわりと花がほころぶような笑みを浮かべた。

 


(なんて大きな薔薇の花束……!)



 一体何本あるのだろうか。


 メアリが思わず圧倒されていると、ルカがにこりと微笑みながら口を開いた。


「急に来てごめんね。せっかくだからメアリの顔を直接見たくて」


 そう言うと、ルカはメアリの前ですっと跪いた。


 花束をメアリに捧げながら上目遣いでいたずらっこのような視線を送ってくる。


 「この薔薇何本あると思う? 百八本だよ」




  花言葉 『結婚してください』




 「初めて会った時から、ずっとずっと好きだったんだ」



 ひときわ大きな薔薇の花の中にきらりと光を反射するものがある。


 薔薇の花びらの隙間に差し込まれているのは、なんとダイヤモンドが付いた婚約指輪だ。


「あ、箱はもちろんあるから安心して」


 メアリが驚きに目を見張ったのを見てルカはさっと弁解した。



(まさか、こんな、夢みたい……)



 メアリは驚きで声もでなかったのだ。本当に夢じゃないだろうか。


 呆然ぼうぜんとしたまま大きな一抱えもある薔薇の花束を抱える。



 思いのほかずっしりとしているそれは、まるでルカの重い愛をそのまま体現しているかのようだ。



 ルカがメアリの左手をそっと取って、薔薇に差し込んでいた大きなダイヤモンドつきの指輪をメアリの薬指にそっとはめる。



「ああ、よかった。ぴったりだね」



 そして流れるようにそのまま指輪に口づけた。



 メアリは声も出ない。その顔はみるみるうちに赤くなった。


 上目づかいでそのみどりの瞳をメアリに向けると、ルカの瞳はまるで輝くグリーントルマリンのようにきらきらと光を反射させた。




「愛してるよ」




補足: 一巡目では親同士の書面上の婚約でしたが、三巡目は婚約を自分で申し込みに来ています。一巡目の指輪のサイズもモニカから聞いています。一巡目は人の花束でしたが、ルカが自分で花束を用意するとこのくらいのサイズになります。


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