回す者の起動
「ひぃぃ……」
僕の顔を見て恐れる人間2人を見下ろし、持っている剣を向ける。
「殺されたくなかったら、大人しく言うことを聞いてくれる?」
「……ぅ…………あ……ぅ………」
1人が言葉にならない声を出し、頷いた。
もちろん殺すつもりなんて最初から無い。
けれど、本気で殺すつもりでやらなければこいつらには伝わらない。
恐れているだけで、殺されたくないだけで、自分たちのした事がどれほどおぞましい事か理解していないのだから。
「なら、早く立って」
「ぅ……………」
「立て」
「ひっ………」
ガクガク震えながらなんとか立ち上がり、兵に連れられていく。
「もう、大丈夫だから──」
亜人の女性2人を救出し、本部に戻ってきた。
どうして争いや酷い事が絶えないのだろうか。
そして、解決していく度にこういう思考が浮かぶ事が許せない。
『あぁ……またか』って。
この仕事を始めてまぁまぁ経つ。
たくさんの死体を見た。血を見た。怯える人を見た。穢された人を見た。残酷な光景を見た。おぞましい光景を見た。
あまりにもそんな光景ばかりを見てきたせいか、慣れつつあるのだ。いや、もう慣れてしまっているのかもしれない。
だけど、慣れたくない。
この世界はこれが日常だと……当たり前だと思いたくない。これは異常だ。
人が毎日残酷な形で死に続け、抵抗する術もなく穢されていくことを当たり前だと認めていいのだろうか。
「もっと力を………守るための力」
お試しではあるが、『ある存在』とこれから契約するつもりだ。
強大な力を持つ、別世界の存在。
「……僕は月のリーダー。
外側であるからこそ、解る事がある。
見通せるものがある。推測でしかないが、それは不確かなものよりも確かなもの。
誰かを守るためなら……僕は………!」
* * *
「──あまり力を得た実感は無いなぁ。
力を得たといっても、何も物理だけじゃない。
……知識や気配といった類も得たはずだろ?」
僕は契約した存在に話しかけるように喋った。
当然だが、返事は無い。
「なら、確かめるのは一つ。
アオトの隣にいたあの女の子。あの娘が何者なのか……ちゃんとこの目で確かめないと。
今の僕なら、近づけるはず」
僕は洞窟を出て、アオトのいるアレスへと向かった。




