表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Cross Navi Re:〜運命の交差〜  作者: noah太郎
第三章 交差する物語
109/115

1-66 嫌いではない


クラージュが吹き飛ばされ、離れたところで倒れ込んだ。


すると今度は、アルコがクロスに飛びかかり、拳同士をぶつけ合う。


激しい衝撃波が辺りを襲う。

地面にめり込んだルシファリスの体が、その衝撃波により吹き飛ばされた。


秋人は、自分の手が震えていることに気がつく。



(くっ…こんなときになって…)



その手をグッと握りしめると、秋人は再び戦いに身を投じた。



アルコとクロスの拳が弾かれ合う。



「なかなか…力だけは相変わらず…だな!」


「…くっ!」



アルコが体勢を整えて再度攻撃に転じようとするが、クロスの方が一歩早い。


いつの間にか目の前に来ており、アルコの顔面めがけて再び拳を振るう。



「ちぃっ…!」



紙一重でそれをかわす。

頬をかすめた拳に交差させて、カウンターに法陣を重ねる。


しかし、それは空を切る。


自分の体の勢いをうまく利用して、クロスは体を空中で前転させ、アルコのカウンターを避けたのだ。


アルコの放った法陣が、そのまま一直線に天井へぶつかる。


攻撃をかわしてアルコの後ろに回り込んだクロスは、そのまま回し蹴りを放つ。



「ぐはぁっ…!!」



背中に衝撃が走り、吹き飛ばされそうになるアルコ。

なんとか足を踏ん張り、それを逃れるが、追撃を与えんとクロスが飛びかかる。


そこに秋人が割って入る。



「ほう…異世界人。お前もまだやれるか?」



秋人の攻撃を簡単にかわしたクロスは、秋人の耳元でそうつぶやいた。


そのままバックステップを取ると、秋人と対峙した形になる。



「バカに…するな!!」



秋人が飛びかかり、法陣を打つ。

難なくかわしたクロスが、秋人へ蹴りを放つが秋人もそれをうまくかわす。


アルコがそこに加わり、二体一の攻防が始まった。



「ほれほれ…どうした?数の優位をうまく使え!!もっと頭を使うのだ!!ハハハハ!!」


「くっ…」

「なんで…当たらない!」



正面から来る秋人の拳を左手で右へといなす。秋人に合わせて放たれたアルコの蹴りを、左手に交差させて右手で受ける。


右横から再び拳を向ける秋人に対して、右手で受けた蹴りの反動を利用して、アルコの足を引く。



「ぬぉぉっ!?」



クロスに引っ張られて、そのまま秋人と衝突するアルコ。


そのまま二人を叩きつけ、怯んだところにクロスは間を置くことなく、法陣を撃ち込んだ。



「しまっ…!」



秋人がそう思った瞬間、アルコに体を放り投げられる。そして、アルコ自身も体をひねり、なんとか直撃を免れた。


しかし…



秋人が受け身をとって、アルコへ視線を向けると、片手に大怪我を負ったアルコが、クロスを見据えて立っている。



「すみません…」


「お前のせいではない…気にするな。」


「…っ!だけど…!」


「くどいぞ!」



アルコに強く言われて、秋人は口をつぐんだ。アルコは肩で息をしながら、話を続ける。



「やはり絶対神は強いな…ブランクはあるとはいえ…アブソルさまを追い抜く一心で鍛錬してきたが、それでもなお…これだけ差がある。」


「……」


「しかし、そう言ってもあれは反則だな…本人の体ではないのに、ご自分の力を100%引き出されている…」


「…100%ですか?俺はよくわかりませんが、別の人の体でそんなことが可能なんですか?」



アルコは一瞬考える。


確かにその通りだ。

神とはいえ、他人の体で100%の力を引き出すのはなかなか難しい。


どうやってこんな短時間で、あれだけの適合率を…


考えられるのは一つしかない。



「…おそらくだが、アブソルさまはあやつの心と融合しておるのだろう。」


「心に融合…ですか?」


「あぁ…肉体の適合率は、神ならば99%まで引き出せる。しかし、そこには精神の壁がある。他人はあくまで他人…いくら体を空け渡そうと、心まではなかなかうまくいかないものよ。」


「じゃあ、今の奴はクロスの心までも意のままにしていると言うことですか…」


「どうやったかは知らんが、おそらくは…な。」



秋人は、仁王立ちで余裕を見せるクロスへ視線を向けた。



「何か…手はないんですかね。」


「あの状態にもデメリットはいくつかある。」


「デメリット…ですか。」



クロスから視線は動かさず、秋人はアルコに聞き返した。



「あぁ…一番のデメリットは、精神まで融合するのであの体を壊されると、本体にかなりダメージを受けることになる。」


「……」


「もう一つは、相手の精神が目覚めた場合、その力はかなり激減してしまう…こんなところだ。」


「…例えばですけど、クロスの心が目覚めた状態で大きなダメージを与えた場合、奴の本体にダメージは届きますか?」


「やってみないとわからんが…精神を繋いでいる状態で相手が目覚めても、すぐにそれが断たれる訳ではない。」


「…なら、やることはひとつですね。」



アルコもそれに無言でうなずいた。



「クロスの精神を無理矢理でも起こす。」


「しかし、方法はどうする?」


「わかりませんよ…とりあえず、一発顔面でも殴ってみますか!」


「ふん…浅はかだな。浅はかである…が…」



アルコは秋人からクロスへ視線を向けると、続けてこう告げた。



「嫌いではない。」



秋人とアルコは、再びクロスへと飛びかかった。





「…う…うぅ」


「ミカイル…気がついたようだね。」


「ミウ…ル…さま?」



気を失っていたミカエリスの元に、ミウルがやってきた。ミカエリスはゆっくりと起き上がると、胸の部分に手を当てる。


ミウルはそれを見て、口を開いた。



「彼が…アキトが君を救ってくれたんだ…」


「アキトが…?」


「そうさ…アブソルの魔力玉に操られていた君を、開放してくれたんだ。今までのこと、覚えているのかい?」



ミカエリスは小さく頷いて、戦っている秋人たちの方に目をやる。



「あれは…クロスでしょうか?なんだか見た目が…違う…」


「半分正解…かな。今の彼は、アブソルに体を乗っ取られているんだ。」


「アブソルさまに?!なっ…なぜ…」



意識を失っていて状況を把握できていないミカエリスへ、ミウルはあの後に起きた一部始終を説明した。



「そっ…そんなことが…」


「あぁ。それで今、アキトとアルコが戦ってくれてるんだけど、少しずつ押されてる…このままだと、アブソルにここにいる全員が殺されちゃうね。」


「……」


「ただ…今のアブソルは、クロスの精神と融合しているんだ。クロスを呼び起こすことができれば、アブソルに勝てる可能性もある。現に二人は、それに気づいているみたいだからね。」



ミカエリスはミウルの話を聞きながら、三人の戦いをジッと見据えている。


そして、ゆっくりと口を開いた。



「クロス…そしてテトラ。彼らバース一族について少しお話しいたします。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ