夏の淡い恋物語
夏の暑さも本格的になり、教室が過ごしにくくなってきたころ。
休み時間に僕は同じクラスの女子、ひそかに思いを寄せている佐藤結月を見つめている。佐藤結月はおっとりしていて、優しく、真面目で可愛いのだ。あまり話したことがないが。
すると後ろから声をかけられる。
「悠太、今日一緒に遊ぼうぜ!」
「!?」
僕は突然声をかけらえたことに驚き言葉を詰まらせてしまった。僕はあまり声をかけられないのだ。
顔をよく見ると声をかけた人物は、僕の数少ない友人の田中翔だった。
「なんだ、翔か。いきなり声かけんなよ。びっくりしただろ」
僕そういいながら翔を睨むと彼は苦笑いした。
「ごめん、ごめん。それより今日遊ぶだろ?」
「もちろん」
そう返事をすると翔は僕に肩を組む。彼は日ごろから筋トレをしているせいか力が強く、肩を組まれるとちょっと痛い。
そんなことをしていると休み時間が終わり次の授業がはじまろうとしている。
授業が終わると休み時間がまたやってくる。その繰り返しをしていると、帰る時間になっていた。
下校途中、僕と翔は先生の愚痴やテストの結果、ゲームの話、アニメの話をしているといつの間にか僕の家についていた。
翔は家に帰らずそのまま僕の家で遊ぶ。
「おじゃましま~す」
翔が僕の家に上がると僕は居間のテレビをつけ、ゲーム機を起動させる。
翔と僕はゲーム機のコントローラーを手にし、銃ゲーをする。オンラインで銃ゲーをしながら世間話なんかをするのがいつものこと。
「あの先生ぜったいカツラつけてるよな。あ、ダブルキル」
「だよな。あ、死んだ」
銃ゲーをしながら世間話をするのが意外にも楽しいのだ。
「そうだ明日土曜日だし部活もないから動物園行こうぜ」
「なんで動物園なんだよ。まあ行かないけど」
貴重な休日だ。一秒たりとも無駄にはできない。たまっているアニメとドラマを消化しなければならないし、最近は寝不足でゆっくりねたいのだ。
「そうだ、結月もいるぞ、行かないのか?」
何故か僕の好きな人は三か月前から翔にばれている。話した記憶はないが、話さなくてもわかったらしい。
「明日、何時に集合だ?」
僕は即答する。結月がいるならもちろん行くに決まっている。ちょっと恥ずかしいが。
「お、おう。駅で九時に集合だってよ」
僕は二人以上で動物園とか買い物とか行ったことが九いから少し不安だが翔がいるならきっと大丈夫であろう。きっと。
「あ、俺もう帰るわ。じゃあな」
「じゃあな」
翔はこれから塾があるとのことで帰った。僕は明日に向け動物園の動物に関するマメ知識的なもの調べ、スマホを充電した。
明日、体調を崩すことがないように早めにベッドに入る。
土曜日の朝。僕は七時に起き顔を洗ってから歯を磨き、自分が持っている服の中で一番お洒落なものを選んだ。いつもはスウェットを着ているが、今日はタンスの一番奥にあるジーンズをはく。
Tシャツはいつものを着たのでいつもの服装のレベルが少し上がったくらいの感じになってしまった。
朝食を終えるころには八時半くらいになって翔が迎えに来た。
「おはよう、いつものスウェットは?」
「今日はジーンズだよ」
「ジーンズ持ってたんだな。あ、早く行かないと遅れるぞ」
そういって少し早歩きになる。
僕と翔は昨日、放送していた映画のことを話しながら駅にむかった。
駅に着くと佐藤結月と学校で見たことがある人、少し話した人、全く知らない人、合わせて6人が待っていた。
「じゃあ行こう!」
陽キャ中の陽キャらしき女子がそういうとそれぞれ改札をくぐり抜ける。
ホームに着くとちょうど電車が来ていて僕たちは電車に乗り込み席に座る。
電車の走行中みんなは控えめな声で話しているが、僕はスマホで電子書籍を読んでいる。
「何読んでるの?」
隣に座っていた女子、確か二組の……誰だっけ。
とりあえずその隣に座っていた女子から声をかけられる。
「天空のバトルロイヤル」
「中田先生の書籍?」
彼女は目を輝かせながらそう言った。
「うん。もしかして中田先生好きなの?」
好きな作家が同じということに憧れていたので勇気を振り絞って言ってみた。
「うん! 中田先生の本は全部持ってるよ!」
彼女はさっきよりも目が輝いていた。思わぬところで友達ができた。……いや、まずどこから友達なのかがわからないのでとりあえず知り合いにしておく。
彼女と中田先生について語り合っているといつの間にか動物園最寄りの駅に着いた。
僕たちは動物園の入場チケットを買い動物園に入る。
「まずは猿山に行こう!」
入り口で動物園のスタッフから貰ったパンフレットを見ながら陽キャは、はしゃいでそう言う。
しかし、何故一番遠い猿山なのだろうか僕にはわからない。
あれから猿山や爬虫類館、鳥類館、キリン館などに行き動物園の施設を半分回った。
「そうだ、昼どうする?」
もうすでに時刻は十二時半をまわっている。
「あの、食堂でよくね?」
陽キャのサッカー部男子が指をさし、そう言う。そうするといつの間にかそこの食堂にする雰囲気になっていた。
食堂に入ると入り口付近に券売機が置いてある。ランチタイムということで券売機には列ができていて、僕たちはその列に並ぶ。
列に並ぶと思ったよりも早く僕の番が回ってきた。僕はメニューをメニューを見渡す。
料理が高いのは覚悟はしていたが、いざ目の前にすると怖気づいてしまう。僕は一番安いカレーライスにした。
食券を店員に渡し、みんなが座っている席に着く。
「午後、どこ行く?」
「ちょうど男子三人、女子三人いるんだし男女ペアで回ろうぜ」
「いいね」
少し迷惑な提案が出てくる。女子とうまく喋れない僕にとっては気が重くなる提案だ。
「くじで決めようぜ。同じ番号になった人がペアでどう?」
どうやらみんなは賛成している様子である。スマホのルーレットアプリで抽選が始まる。
僕は二番を引く。気になる結月は何番かというとなんと、二番である。
僕は心の中でガッツポーズをした。
ペアが決まったころにはテーブルに料理が到着する。
昼食をとりながらみんなは談笑しているが僕はしゃべらず黙々と食べている。僕は食事中に会話するというのが苦手なのだ。
みんなが食べ終わると食堂を出ていき午後の部が開始する。
それぞれのペアが散らばっていく。十四時に食堂集合となっている。
「どこに行く?」
僕は少し照れながら彼女にそう質問する。
「クマ館でもどうかな?」
彼女も少し照れる仕草を見せながらそう言う。
「じゃあそこに行こう」
ということでクマ館に行くことになった。僕たちはクマ館に向かう。
一緒に歩いていると話が中々続かない。僕は必死に話題を探す。
考えてみれば僕は彼女の趣味も知らないし、何が好きなのかもわからない。まずは沈黙が続かないようにするのが一番の課題だ。
「結月がさっき食べていたナポリタン美味しそうだったよね」
必死に探して見つけた話題がこれ。沈黙が続かないよりはいいだろう。
「あ、うん。美味しかったよ。多分、あのケチャップ市販のじゃないと思うの。それがポイント高いね」
彼女は意外と食通なのかもしれない。
「へ、へぇーそうなんだ。僕も今度来た時食べてみようかな」
そう返事すると彼女の顔は少し緩くなった。食べ物に関する話題を振れば沈黙がなくなるかもしれない。
運良く親がご飯に少々うるさいので自分の記憶から話題になりそうな事をがんばって思い出す。
「そういえば、学校の近くの定食屋行ったことある?」
僕は学校の近くにある定食屋を思い出した。今年の春ごろに翔と行ったのを思い出した。
とんかつ定食を注文し店のおばちゃんがおまけしてくれたことがる。
「あるよ。あのおばちゃん優しいし、とんかつ定食おいしいよね」
「うん。この前行った時、とんかつ定食おまけしてもったよ」
僕はこの時、彼女と気が合っているようで嬉しい気持ちになっていた。
そんな感じで食べ物に関する話をしていき色々な話を持っていき、気づけばもう十五時半になっていた。
「そろそろ食堂に向かった方がいいよね」
彼女は微笑みながらそう言った。
僕は今この瞬間を逃してはならないと思った。今ここで彼女に気持ちを僕の気持ちを伝えるのだ。
「あ、あのさ。実は僕、結月のことが好きなんだ。結月と喋っているのが楽しいし、結月と一緒に過ごすのも楽しい。だから、僕と付き合ってほしい」
僕は今までいない勇気を振り絞って彼女に気持ちを伝えた。こんなに人の目を見て喋ったのはいつぶりだろうか。
そのあと、十秒くらいの沈黙が続く。
「私も悠太と喋っているの楽しかったし、一緒にいるのも楽しい。けど私、他に好きな人がいるの。気持ちは嬉しいけどごめんね」
僕は思いあがっていたのだ。
今日だけ長く喋ったのだ、彼女は僕のことをあまり知らないのであろう。
それなのに僕は告白してしまった。
当然、彼女は受け入れてくれるはずがない。
彼女と僕はその後、一切喋らずに食堂へ歩いた。
食堂に着くとすでにみんなが集まっていた。
「悠太、どうだったんだ?」
翔はからかうようにそう言ってきた。
「楽しかったよ」
僕は前半の感想だけを翔に伝える。正直、告白したなんて言いにくい。
「帰りの電車遅れるから、もう出ようぜ」
サッカー部の男子がそう言うとみんなは食堂に出て動物園の出入り口まで歩き出す。
僕たちは動物園から出て電車に乗り、駅まで電車が走る。
駅に着くと解散し、それぞれの家に帰る。僕は翔と一緒に帰る。
はじめまして。初投稿です。よろしくお願いします。
今回は、恋愛系を書いてみました。初めて書くのでもしかしたら変なところがあったりするかもしれませんが、これから改善していきたいと思うのでよろしくお願いいたします。
ちなみに僕は、彼女がいたことがありません。