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鴉根オサム friend of 双利


「よっ、フタリ!」

 

 5月20日 午前7時30分

 高校に向かって歩いている僕の背中に突然強烈な一撃が浴びせられた。

 クラスメイトの鴉根理(からすねおさむ)が毎朝恒例となっている攻撃的な挨拶をしてきたのだ。

 いつもは馴れ合いしては激しめの背中の痛みに軽く苛立ちを覚えるが昨日の件でブルーなテンションの僕にはいい清涼剤になってありがたい気もする。


 今はいつ母の容態が悪くなるかわからないからと病院には昨日からずっと親父が残っている。

 僕も残った方がいいと思ったが何かあればすぐ連絡するからと親父は学校に行かせてくれた。

 もしかしたら母に対する僕の複雑な心情を慮ってくれたのかもしれない。

 夕方には交代しに行こう。

 

 取り敢えず友の顔を見て少し気持ちに余裕を持てた気がした僕もオサムに対して


「よっ。」


と、軽く挨拶を返す。が、小学校からの親友とは怖いものだな。


「ん?元気ないな。お母さんにまたなんかあったのか?」


「ブッ!? 」

 

 僕の句読点含めても3文字しかない挨拶から一発で状況を察しやがった。

 人生で多分初めて吹き出したな。

 普通だったら気持ち悪い的中だが自分から切り出す必要がなくなった分、感謝すべきだろうか。


「よく分かったな。エスパーでも持ってんのか?」


と、感謝の代わりに冗談混じりの称賛を送ると、


「エスパーも何もお前は顔に出やすいからな。それにお前のお母さんの容態が悪化したのはいままで何回もあっただろ?何年も一緒にいりゃ簡単なことだよ、祇峰くん?」


 どこの探偵だよとツッコミたくなるような口調で種明かしをしてくる。

 まぁ、小学校の時から母の容態が崩れることが多かったのは確かだし、そんな時何度もオサムに相談したりもしてきたので納得はできる。


 しかし、今回はそうもいかないだろう。


 母の死を宣告されているも同然だ。

 今まで以上に気を遣わせることになるだろうから、容態については黙っておくのが最善な気がする。

 それに気を遣われる側としても、この状況では辛いものがある。


「さすがだな。でもいつものヤツだから心配はいらんよ。きっと大丈夫さ。」


 と、うまく嘘をついたつもりだったがオサムは腑に落ちないといった表情をしている。

 何か隠していることは気づかれたっぽい。


「まぁ、無理に説明しなくてもいいが、なんか出来ることあれば相談でもなんでも頼ってくれよな。俺とお前の仲だろ?」


 さっきとは違う真剣なトーンだった。

 誤魔化せたというよりは誤魔化させてくれたという感じだろうか。


 鴉根理はさっきも言ったが小学校からの同級生で親友と呼ぶべき頼れる存在だ。

 また今の僕とはつり合いが取れない高スペック人間で、剣道は全国レベルの実力の持ち主。

 それに勉強も学年トップクラスで顔も確実にイケメンの部類に入る。

 そして先で見た通り性格も良い。

 まさに理想の男子像とはコイツのことだろうな。

 だから皆さんの予想通りムカつくぐらいモテている。

 一応告白されたことを毎回自己申告してくるので(それもなかなかムカつくが)それをもとに計算すると毎月最低3人には告白されてるな。全く羨ましいことこの上ない。

 1ヶ月分くらい僕に恵んでくれてもいいんじゃないですかね、恋愛の神様?どうせ全員の告白断ってるんだし。

 そう、コイツはそれだけの数の女子に告白されておきながら誰とも付き合わず常にフリーでいる。

 本人いわく、


「なんて言えばいいかな。不思議と誰かを好きっていう気持ちが既に満たされてる感じがして誰とも付き合う気に全くならないんだよなぁ。運命の人ってやつでも来てくれるのかな?」


 というとんでもなくメルヘンチックで贅沢でもったいない理由をお持ちになっている。何回か爆発した方がいい。

 そんなもんだから先輩後輩同級生を問わず、女子が次々と告白チャレンジしては玉砕していく。

 最近は学校の半分の女子と気まずい空気になっているらしい。

 告白を断った相手に加えてその友達と話せなくなったり冷たい目で見られたりするんだとさ。

 誰でもいいから付き合ってリア充化しないと、無謀な挑戦者が増え続けると同時にオサムの相関系図から親族以外の女子が消えることになりそうだ。


 だがこの異常なモテ方を除けば本当にイイヤツであり、僕が女に生まれてたら惚れてしまっているかもしれない。(想像はしたく無いがな)

 だから玉砕覚悟で告白しまくる女子共の気持ちは分からんでもない。

 だからさっきの気遣いを見て改めてイイ友達をもったと思える。

 そんな口には出せない小っ恥ずかしいことを思っていると、 


 「あっ、二人ともおはよぉ。 」


 いつの間にか校門前に着いており、そこで丸みを帯びたメガネで首付け根の辺りまでで髪を切りそろえた女の子が柔らかい声で挨拶をしてきた。


 



 

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