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フタリ在る日々へ see you soon


 

 「僕はおまえを家族として、妹として、新世界に求める。 」

 「私はあなたを家族として、兄として、新世界に求める。」 



 「だから、フタリ。あなたも私を求めて…… 」

 「だから、フタリ。おまえも僕を求めろ……」



 「家族として、あなたの妹として。」

 「家族として、おまえの兄として。」



 スッ

 スッ



 「……なんて、言うまでもなかったか。」


 「やっぱ、お互い思ってることは同じね。同時に握手求めるのも。」


 「双子のシンパシーってやつかもな。そういうのもこれからの日常で試していきたいもんだ。」


 「あら、生き残るのが確定してるみたいな、言い草ね。」


 「僕が死にかけた時に、号泣してくれた重症のブラコンが目の前にいるからな。そりゃ、成功するだろ。」


 「そうね。お腹に大穴開けてまで、妹守ったシスコンが目の前にいるもんね。失敗するはずないか。」


 「…… 」ジィ……


 「…… 」ジィ……


 「……フッ 」


 「…… フフッ 」


 「あーあ、こんなバカみたいなやり取りがこの先にたくさん待ってるってだけか。あれだけ推理して、戦ってを繰り返したのに、これこそ割に合ってないって感じだな。」


 「まぁ、そんなもんでしょ。こんな会話の機会は生まれた時から約束されてるべきで、その価値に気付けないほどに当たり前であるべきで、手に入れるために戦いも推理もする必要なんて本当はない。ましてや、世界中にこんなヒビをいれるなんてしなくても…… 」


 「幸せを幸せと感じなくていい日常……、命なんて懸けなくても最初からそこにある日常……、それこそが本当の幸せかもしれないな。」


 「幸せは人それぞれと言うけれど、その幸せをそれぞれの当たり前にすることが、人類共通の幸せなんじゃないかって思えてくるわね。」


 「でも、二人同時に生まれなかった僕らを含めた全ての家族にその当たり前が行き渡るわけじゃない。どうしようもない不幸だってあるし、人の醜さがせっかく掴んだ当たり前を壊すことだってある。自身の物も。時には他人の物も。くだらない会話のある日常を当たり前って言い切るには、この世の中は運命的に不平等すぎるな。」


 「私達を繋げたこの力だって、きっとただの偶然。二人揃って生まれない私達が偶然力に選ばれて、その力が偶然命を救える効果をもっていただけ。この偶然を不平等だと思う不幸を持つ人は、きっとたくさんいる。」


 「この力も不平等の表れ……でも、だからと言って使ってダメな物だとは思わない。諦めちゃいけない。そうだろ? 」


 「ええ、こんな力に選ばれなくても、その人達だって自分に出来る方法で諦めずに不幸に立ち向かってるはず。私達の不幸を壊す方法にこの力が必要で、使える状況にあるなら、使わない選択肢はない。出来る救いを行わないなんて、頑張っている人たちに逆に失礼。」


 「都合のいい解釈かもしれないけどな。でも、僕らも僕らなりに不幸に立ち向かって、自分の世界を守った。僕も、お前も、母さんも。育ててくれた親父も、姉貴も、紛れもなくその一員として。」


 「誰もが自分の世界を守るために頑張ってる。私達祇峰家もそれに準じただけ。そこは遠慮なく誇っていいはず…… 」



 「ああ……だから、絶対に生きるぞ、フタリっ!! 」


 「ええ、迷いなく、躊躇なくね、フタリっ!! 」



 ガシッ!



 「……じゃっ、その生存戦略に俺も手を添えさせてもらおうかなっ。」 ガシッ


 「オサム……!! 」


 「もちろん、私もねっ!! 」 ガシッ


 「アユリ……!! 」


 「言ったでしょ? 私達の世界を守るにはフタリくんもフタリちゃんも必要なの。双子座の二倍からの回帰に、私達の想いが干渉できるかは分かんないけど、自分の世界のために二人の存在を願うよ。」


 「長年連れ添った親友としてな。家族との日常もいいが、俺達との学校生活も願ってくれよ? 結構楽しみにしてるんだぜ、この四人でつるむの。」



 「ああ、当っ然!! 」

 「ええ、当っ然!! 」


 

 「あっ、私達も入れてっ!! 入れてっ!! 」


 「引っ張るなよ、コイハル…… 」


 「コイハルちゃん……!! 杉佐多くん……!! 」


 「私もフタフタ達とお友達になりたいし、というかもう思ってるし、いなくなって貰っちゃ悲しいんだよっ!! チサトもそうだよねっ? 」


 「まぁ、これからの戦いにおいて利よ……利用し合う関係になるだろうしな。ここで双子座に消えて貰っちゃ困る。」


 「今、利用って言いかけて、そのまま突っ切ったな。」


 「だが、それ以上に君達家族の想いには心動かされたように感じる。ゾディアックとしてだけでなく、純粋に協力したいと思えるよ。今日出逢ったばかりじゃ、そこの親友二人には及ばないだろうが。」


 「杉佐多くん……じゃあ、二人共私達の新しい友達として、これからよろしくねっ!! 」


 「こちらこそ。」 ガシッ


 「うんっ!! よろしくだよっ!! 」ガシッ


 

 ビシビシビシビシビシビシビシビシッ……!!

 ビシビシビシビシビシビシビシビシッ……!!

 ビシビシビシビシビシビシビシビシッ……!!

 ビシビシビシビシビシビシビシビシッ……!!



 「俺達の体にもヒビがっ……!! 」


 「ああっ、私の羽も崩れ始めてるっ!! 消えちゃうのぉっ!? 消えちゃうのぉっ!!? 」


 「落ち着け、コイハル。これもただの再構成だ。」


 「そっか、私達も世界の一部として、一緒に…… 」


 「じゃあ、新世界もそろそろか…… 」

 「じゃあ、新世界もそろそろね…… 」


 「もし、この先が二人が揃う新世界になるなら、祇峰フタリにとって最も理想的な世界になるわけか。オレ達の知らない間に測り知れない奇跡の連続が起こっていたんだな。十七年前の二人共の命が繋がった奇跡から、二人共が一緒に暮らせる奇跡に繋げられるなんて…… 」


 「いや、杉佐多…… 」

 「いや、杉佐多くん…… 」


 「それはちょっと違うんだ。」

 「それはちょっと違うんだ。」


 「違う……? まさか、全て計算されていたとでも……? 」


 「そういうわけじゃないよ……、十七年前の出来事は奇跡だろうし、今だってその奇跡から生まれた奇跡には違いないと思う。」


 「だが、こうやって、この先の世界で二人が揃う奇跡に辿り着けたのは導かれたからだ。母さんや姉貴に。」


 「……? そんなことが本当に出来たのか……? 」


 「うん。多分、お母さんは世界を二倍にした時から、それが永遠に続くわけじゃないって知ってたんだよ。世界の二倍を維持できないことも、世界が元に戻る際、共通しない物が排除されてしまうことも、全部。」


 「このままだと、自分の子供達はそれなりの期間で死を迎えてしまう。それを頭の中のアイツから聞いた母さんは僕らが生き残れる方法を探して、自分の起こしたバグがそのまま使えることに気が付いたんだろう。」

 

 「だけど、元々体の弱かったお母さんは、いつ自分の命が尽きるか分からないとも考えたんだと思う。バグを起こす時に自分が世界にいられるかどうか……そこで、私達双子自身にお互いを求めさせることにした。」


 「さっき杉佐多が言ったように、双子座の力を僕らから無理矢理奪ったんだとしたら、自分に何かあった時は僕らに力が引き戻される的なことを知ったのかもな。その場合の世界の再構成時に、バグを生める力を持っているのは僕達だ。」


 「だから、お母さんは自分の力が保てるギリギリの期間まで世界を二倍にし続けて、その限界を悟った昨日の夕方に世界の二倍を解除したのよ。中途半端に、人間の回帰過程だけを残りの力で阻止して…… 」



 「僕達フタリが邂逅世界で出会えるように。」

 「私達フタリが邂逅世界で出会えるように。」



 「それが人類二倍の詳しい真相。実際に超常後の母さんの体は力を振り絞る様に光り輝いていたし、僕らに力が引き継がれて目醒めた頃から二倍人類の融合は始まったから、間違いない。」


 「そこで一気に人間が融合し切らず、徐々に人間が融合していったことを考えると、私達に引き継いだ後にも力を僅かに残して置いて、融合を遅らせてくれたんだと思う。きっと、今も病院のベットで最後の力を…… 」


 「そして、その全部を姉貴に伝えたんだろうな。ずっと昏睡状態だったはずだから、ゾディアックの夢世界みたいな場所で。姉貴がいつどんなゾディアックになったのかはよく分からないから、この辺りは推理しようがないが。」


 「けど、世界の二倍を保っていたお母さんがそれ以外の小細工をお姉ちゃんに託したのは事実。私達が出会ってから世界が元に戻るまでの限られた時間の間に、お互いを求めあうような関係にするための導き手として。」

 

 「だから、自分同士という推理に行きついてしまった僕らが謎解きを続行するようにその不正解を伝えて、私達が一緒に世界の謎を解くという協力関係を自然と作り上げさせた。」


 「僕らに謎解きという一つのゴールとヒントを与え、双子の解答に辿り着くまでの過程をとらせることで、お互いの関係性を深めさせるために。日常に求め合わせるために。」


 「私達が関わるための過程だけを重要視してたみたいだから、双子の真実には辿り着いても、辿り着けなくても本当はどっちでも良かったみたいね。昨日のお姉ちゃんは “謎を解け” とは言わず、“二人でお話して” 的なことばかり言ってたし。」


 「他にも、槍使いとの戦いを仕組んで引き継がれた力の覚醒を促したり……あの時は四人とも姉貴が勝手に巻き込んですまなかったな。アユリさんにも、オサムにも怪我をさせて…… 」


 「ううん、気にしてないよっ。」


 「むしろ、お前らの覚醒の役に立てたのなら本望だ。」


 「二人共……ありがとう、そう言ってもらえると助かるよ。」

 「二人共……ありがとう、そう言ってもらえると助かるわ。」


 「だが今思えば、姉貴はその犠牲を顧みない暴挙や発言から僕達に拒絶されて、自分を頼りにさせない状況をつくる意図もあったのかもしれないな。記憶排除の中で、本当に僕ら二人きりの時間を作るために。」


 「相変わらず、あの性格からは考えられない優秀な頭脳ならあり得るわね。その頭を使って、いろいろ手を回してくれてたことも知らずに、ひっぱたいちゃったから謝らないと……いや、感謝しないとダメだね。」


 「ああ、そのためにもここで消えちゃいけない。感謝を伝えたい人はまだいるし……、この名前のことも…… 」


 「……そうだよね。十七年前の奇跡から、さらなる奇跡へ導いてくれた人へ、私達を信じてくれた人へ、それに……、やっぱり、生きる理由は尽きないわねっ。」


 「なっ、そうだろ? 」


 「……なるほど、不確定な奇跡ばかりを素材に計算された奇跡がこの先の新世界と言う訳か。出会って、数十時間の双子に世界を変える程のの感情を抱かせようなんて……やはり、オレには測り知れないな。」


 「そう思うよね、杉佐多くんもっ!! まったく、とんでもない無茶を押し付けて……って、思ってたんだけど、色んな不確定の中で、これには少なくとも確信があったんだと思う。」


 「ん……? 」


 「姉貴たちが僕らに与えたのは、双子座の力と関わり合うきっかけだけ。出会いさえすれば、自然にお互いの存在を求め合えると確信していたという表れだ。事前に双子の兄妹の存在を知らせなかったも、純粋な気持ちでお互いのことを知ってもらうためだったんだろうな。」


 「な、なんだか、すごい話だねぇ……、チサト? 」


 「ああ、きっとあれが色々な壁を乗り越えた家族愛なんだ。互いを信じ、互いのためなら時間も命も惜しまず、世界すら揺るがす。」


 「あれが理想の家族像……私の薄明家もあんな風になれるのかな? 」


 「まぁ、無理じゃないんだろうが……祇峰家の愛は理想的すぎるだろ。俺も家族に自分を求めてくれなんて言えないし、妹の(らい)が反抗期でトゲトゲしかけてるから逆に鴉根家の団らんを壊しかねない。」


 「そっか、具体的に目指すものじゃないんだよね…… 」


 「そうだよ、アユリさん。家族のカタチなんて人ぞれぞれ。偶然僕らの辿ったカタチが理想的に思えるだけだ。僕らも、これからどんなカタチをとるかなんて分からない。」


 「もしかしたら、理想とはすごいかけ離れちゃうかもね。コイツのいやらしい性欲が暴れて逮捕とか…… 」


 「されるわけないだろっ!!? 」


 「ええ、させないわよ。一緒に暮らす以上、予防策としてエロ本は見つけ次第に焼却ね。ついでに鉄拳制裁。これでバッチリ。」


 「ねっ? 理想的なんて言えるの今だけでしょ、アユリさん? 思春期ってだけで、これから命の危険があるんだぜ? 」


 「フフッ……、でもなんか楽しそう。やっぱり、羨ましいかも。」


 「どんな家族のカタチでも、楽しければそれが理想ってことか。俺も頑張んないとなっ。」



 「そうか…… 」

 「そっか…… 」



 「これが僕達家族にとっての理想…… 」

 「これが私達家族にとっての理想…… 」



 「このくだらなくも楽しい気持ちが家族の理想…… 」

 「このくだらなくも楽しい気持ちが家族の理想…… 」



 「なんだ…… 」

 「なんだ…… 」

 


 「これから創るまでもなく、昨日からこの手にあったんだな…… 」

 「これから創るまでもなく、昨日からこの手にあったのね…… 」



 ビシビシビシビシビシビシビシビシッ……パリンッ!!

 ビシビシビシビシビシビシビシビシッ……パリンッ!!

 ビシビシビシビシビシビシビシビシッ……パリンッ!!



 「ああっ、周りの家も道路も割れ消えてっちゃう……チサトも、みんなも、私も。 」


 ビシビシビシビシビシビシビシビシッ……パリンッ!!


 「とうとう二倍世界も完全に終わりを迎えるようだな。」


 ビシビシビシビシビシビシビシビシッ……パリンッ!!


 「世界崩壊にしか見えないけど、これが私達の新世界の始まり…… 」


 ビシビシビシビシビシビシビシビシッ……パリンッ!!


 「この先が昨日にしても、十七年前にしても、必ず俺達六人、誰も欠けることなく揃おう…… 」



 グッ……!!



 「新世界で待ってるぞ、フタリさんも、フタリもっ。」


 ギュゥッ


 「待ってるからね、フタリくんも、フタリちゃんもっ。」


 ギュゥッ


 「私もチサトも待ってるよっ!! フタフタ達のことっ!! 」


 ギュゥッ


 「ああ、必ずフタリ揃ってな。」


 ギュゥッ


 「みんな……!! 」

 「みんな……!! 」



 「ああ、この重ねた手の温もりを忘れずに…… 」

 「ええ、この重ねた手の温もりを忘れずに…… 」



 「友達のために…… 」

 「友達のために…… 」



 「家族のために…… 」

 「家族のために…… 」



 「僕達のために…… 」

 「私達のために…… 」


 

 「そんなみんながいる日常のために…… 」

 「そんなみんながいる日常のために…… 」



 「世界のルールなんか越えて…… 」

 「世界のルールなんか越えて…… 」



 ギュゥ……!!



 ビシビシビシビシビシビシビシビシッ……!!

 ビシビシビシビシビシビシビシビシッ……!!

 ビシビシビシビシビシビシビシビシッ……!!

 ビシビシビシビシビシビシビシビシッ……!!

 ビシビシビシビシビシビシビシビシッ……!!

 ビシビシビシビシビシビシビシビシッ……!!





 「また会おう、みんなっ!! 」

 「また会おう、みんなっ!! 」

 

 



 パリンッ……




 

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