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 ビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシッ…………!!!!


 「このヒビの先が二人のいない新世界だなんて…… 」


 「生きている人間であろうと、矛盾した二人の祇峰フタリを排除して、世界の再構成を行ってしまうのか……無情だな。」


 親友二人がヒビ割れにコーティングされ続ける青空を見上げ、容赦ない世界の排除システムを嘆く。


 「でも、その排除を回避する方法があるってことなんだよな……? 」


 「ええ、そういうこと。 」


 「なんか、よく分かんなかったけど、戻ってみなきゃ分かんないってことだねっ!! 」


 今の説明何だったんだって思うくらい、めちゃくちゃ簡単にしちゃってるけど、コイハルちゃんはそれでいいや。概ね間違ってないし。


 「でも、もし十七年前に戻っちゃったら……人生やり直しってことっ!!? 」


 ある程度話を理解した様子のアユリが世界の二倍前に戻った場合に発生する問題に気が付く。

 アユリの誕生日は2月19日。オサム君は、7月8日の七夕明け。そして、私達は5月22日。誕生日は分からないけれど、先の発言でコイハルちゃん達も同い年であることも分かっている。

 17年前へのトリップは、ここにいる全員の人生のリセットを意味するのだ。しかも……


 「ゾディアックの記憶が排除の影響を受けないとなると、ただのリセットじゃない。記憶を保ったままの人生やり直しになる。」


 杉佐多君の言った通りだ。

 私達ゾディアックは生まれたばかりの赤ちゃん、または母親のお腹にいる状態に戻っても、知識も思い出も十七年分の積み重ねが頭にあるというボーナススタートを得られる可能性が高い。

 そこから起こる失敗も、立ち塞がる障害も記憶に残っている限り完全予測のできる超スムーズな転生物語もどきが始まるわけだ。そんなのが面白いのかは別として。


 「マジか……ぶっちゃけ、ちょっと憧れるけど。」


 オサム君が人生リセットに対して正直な感想をこぼすが、気持ちがわからないでもない。

 例え、人生が初めからになっても、私達同士は小学校に進学すれば自然に出逢えるわけだし、仲良くなれる他の友達も目星は付けられる。

 一見すれば、ほぼメリットしかないように見えるけれど……


 「私達だけ人生丸ごとやり直しなんて、なんだかズルしてるみたいで気が引けるわね。 」


 「だが、そんなこと言い出したら、僕らもアウトだぞ。死ぬ運命を捻じ曲げようとしてるわけだから。」


 ああ、そっか。今から変えようとしているものも、既に決まった結果をルール無視で書き換えるような反則行為。

 こんなところで罪悪感を感じたら、全てが台無しになる。さっさと忘れよう、私。


 「そんなことになっても、チサトを憶えてればもう一回出会えるってことだよねっ!! えーっと、私達が出逢ったのは…… 」


 「いいだろ、その話はっ……!! 」


 ビクッ!


 ど、どうしたんだろ?

 コイハルちゃんが口にしようとした言葉に対して杉佐多さんの顔が少し暗くなり、珍しく感情的な言葉を放つ。


 「えっ!? ご、ゴメンね、チサト。なんか怖いよ……? 」


 「わ、悪い…… 」


 我に返った杉佐多さんが即座に謝罪する。

 この様子とコイハルちゃんの話そうとした内容からして、この二人の出会いの過去に何かあるみたいだけれど、あまりこちらから触れない方が良さそうね……


 「やり直し…… 」


 「ん? アユリもどうしたの? 俯いちゃって。 」


 杉佐多さんたちからあえて目を逸らした私は黙りこくって何かを考えこんでいたアユリを見つけて、不思議に思ったその理由を私は問うてみる。


 「う、ううん、何でもないよっ。」


 すごい分かりやすく誤魔化された。


 「そう……、何か分かんないことあったら聞いてねっ。」


 ここも深く聞くのはよしておいたが、杉佐多さんといい、アユリといい、人生やり直しの話になってから様子が変だ。

 二人共過去に何か思うところがあるってことなんだろうけど、知り合ったばかりで色々抱えてそうな杉佐多さんはともかく、長い間一緒にいる割にアユリのやり直したい過去には見当がつかない。いずれ相談してくれると嬉しいんだけど……頼られなかった以上、今はそっとしておくのが正解なんだろう。


 「とにかく次……これが最後で最大の矛盾と言えるな。」


 早々に頭を冷やした様子の杉佐多さんが最後のQを提示する。

 ここまでで人類二倍に残されている謎はあと一つ。これへの回答が消滅回避の説明にもつながる。


 ビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシッ…………!!!!

 ビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシッ…………!!!!


 ちょうど体も空もヒビの進行速度が上がって、崩壊の最終段階を感じさせてくる。おそらく私達の消滅処理と同時に世界が再構成されるのだろう。


 「ええ、分かってるわ。」

 「ああ、分かってるよ。」


 私達フタリは杉佐多さんと次の問いが最後であるという認識を共有する。


 「そうだろうな……じゃあ、これが最後の問い。オレ達が十七年間生きてきた場所が、双子座の二倍によって作られた並行世界というのは分かった。だが…… 」




 「何故それぞれの世界で君達祇峰フタリは生死が別れたんだ? 」


 

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