星々の再合流 five zodiac signs
「はぁ、はぁ……回収完了。羽撃、撤退です。」
『かしこまりましたっ!、お嬢様っ!! 全風前進っ!! 』ビュイイイイイイン……
風の檻を二つ自分の左右に浮かばせ終えた副会長の指示で、喋る槍先に風が集まり出す。
撤退のご様子だ。
ガチャ
「逃がさな……くっ、限界か。」
逃亡を図る敵にボウガンを向ける杉佐多だったが、腕が傷だらけなせいで狙いが定まらず、自分でも射撃の無理を悟る。
「チサト、今は動いちゃダメだよっ! 」
そして、無理を諭される。
神々しさと意味不明さを増した花嫁大天使に。
「あの乙女座、まさかあんなにも強くなれるなんて……、この借りは次こそ……!! 」
ビュウンッ!!!!
いかにも敗北者らしい台詞を残した副会長は、槍先のジェットエンジンを使って一瞬で姿を消す。
今の僕らの身体能力なら、あの速さにも追いつけなくもないだろうが、そこまでしてもう一度戦いを引き起こす気にはならない。第一、僕らにはあの槍使い達を狙う理由がない。
もしかしたら、この星の力に何かしらの使命が込められているのかもしれないけれど、それを果たすのは今じゃなくていいはずだ。
「また逃がしたか…… 」
「こないだと一緒で槍も奪えなかったしね…… 」
黒羽さんの落胆から、この二人の目的が垣間見える……って、えっ? 槍を奪いたかったのか? 午の槍破壊しちゃったけど、もしかしてダメだった……?
どうしよ。取り返しがつかないくらいバラバラに砕いちゃった気がするから、なんか言いづらい。
「でも、成果も大きそうだよっ!! 双子座の子を見つけた上に、勝って生き残ってくれてたんだから……って、言いたいんだけど、その体大丈夫? 怪我じゃないよね? 勝てたんだよね? 」
黒羽さんによる子供にありがちなクエスチョンマークの三連投。午の槍使いへの勝利を察して、喜びを口にしかけたみたいだったが、やはりヒビだらけの僕らを目にして心配は避けられなかったらしい。
僕らとの出会いを成果としても、このまま消えられたら意味がないってことか。
「えーっと、なんとか勝てたし、怪我とも違うんだけどね。このヒビが大丈夫かどうかはこれから決まる……そういうことでいいんでしょ? 」
天使からの三連疑問に答えた隣の彼女は、その流れで僕に顔を向け、消滅回避の確認を求めてくる。
そういえば、戦いの最中は方法を彼女も理解したことを察しただけで、具体的な答え合わせはまだしてなかった。
「ああ、そうだ。さっきは話が途切れたけど、結局消滅回避の方法って? 」
「うん、うん、私も気になってたの。」
オサムとアユリさんも、結界の終息や副会長の逃亡などのせいで未説明になっていた部分に再び関心を見せる。
ヒビの進行的にも、結果が分かる時間まである程度の余裕はありそうだ。こっちが間違ってる可能性も否めないし、彼女との答え合わせも一応しといたほうがいいだろう。
それに人類二倍に巻き込まれた記憶のある当事者たちには、この真実を共有しないわけにもいかない。ここは明らかに、僕が超常を紐解くべき場面だ。
「よし。じゃあ、説明ついでに謎解きといこうか。人類二倍と双子座の力、そして僕ら祇峰フタリの真実について…… 」