強者達の行方 another winner
ビュウウウウウウウンッ!!!!
「あれ? 攻撃じゃない……? 」
僕らに向かって来ると思われた副会長操作下の竜巻だったが、その攻撃手段が降り着いた場所は背中越しの見当外れ。
敗北によって、倒れ込んだ午の敵の方向だ。
「な、仲間割れなの? 」
敵から敵に向かう風型攻撃を見たアユリさんが呟く。
きっと、“こんな奴らに負ける雑魚なんて、用済みです……死ねっ。 ” 的な展開を連想しているのだろうけど、副会長の目的はそんな残虐お掃除ではないと僕らフタリは察することができる。これもまた数時間前に見た光景だ。
「違う、回収だと思う。」
ビュウンッ!!!!
動かない馬鹿のもとに辿り着いた竜巻は渦の中心にはその体を。周りの風には槍の破片を巻き込んで閉じ込める。
やはり、まだ僕らの記憶にも新しい風の檻の完成だ。
「はぁ、はぁ……、早く戻して……!! 」
『承知いたしました、お嬢様。』 ビュウウウウ……
その人間運搬なコンテナストームは完成を確認した上空の副会長の命令で元の進路を戻って行く。発動者と、もう一つの檻の隣へ。
「あっちの風にも誰かいる……あれって、丑の奴? 」
隣の彼女が、元から上空にあった風内の人間の正体に気が付く。
見えるのは僕の倍はありそうな肩幅と左右に尖った髪型の制服巨漢。確かに副会長と共に現れて、丑のゾディアックであることをほのめかした槍使いの姿で間違いない。どっかで見たように思える既視感もそのままだ。ぐったりして、一切動かない様子を除けばだが。
「でも、あの二人は杉佐多君達と戦ってたはずじゃ…… 」
「あっ、そういえば……!! 」
自分たちの戦いに必死過ぎて、隣の結界のことを忘れていた。
副会長と巨漢。僕らと分断され、この組み合わせと対峙したはずの杉佐多と黒羽さんはいったいどこに……?
「まさか、負け…… 」
バサッ
「負けてない。」
「負けてないよぉーーー!!!! 」
「この声……杉佐多君とコイハルちゃんっ!! 」
あっ、生きてた。良かった。
クールな落ち着きと、天真爛漫なハイテンションな高音。この二つの声によって、射手座と乙女座の生存確認をした彼女は喜びと安堵を見せる。
しかし、流石ベテラン実力者達。もしものことがあったのかと思ったが、血塗れ副会長とさっきから風の中で動く様子のない丑の男からは、ストレートに勝利を連想してよかったらしい。
羽音も聞こえたし、きっとイケメン狙撃手の変わりない姿とあの花嫁天使の一風変わった姿が隣に……
キラキラキラ……!!
「……何があったっ!!? 」
「……何があったっ!!? 」
声のした方向を見た僕らは、そこにいた二人の姿に驚愕する。
「おい、君大丈夫かっ!!? 」
オサムが心配を向けるほど、杉佐多は白Yシャツの所々がズタズタに破れて、それぞれから裂傷が見受けられる怪我人に。
そして、その彼に肩を貸す黒羽さんは……
「なんだか、きれい…… 」
アユリさんが羨望の眼差しを向けるほど、より煌びやかな花嫁大天使に変貌していた。
白い輝きとレースのボリュームが増したウェディングドレス。そして、二枚から六枚に増えた白い翼によって。