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収束 liberation

 


 「ハッ……意味わかんねぇ…… 」


 ドサッ


 先程更新されたばかりの僕らの自己紹介を聞いた敵は、その全てを理解出来ないまま地面に倒れ込む。

 鎧部分ばかりに攻撃していたから死んではないはず。おそらく鎧を装着し続けた限界による気絶だと思う。けれど、それ以上にあの姿から分かるのは……


 「終わったね…… 」


 「ああ、終わったな…… 」


 激戦の終幕だ。


 「しかし、自分が命を狙った者達の正体に“意味分からん”は無責任過ぎるだろ。 」


 そういえば、僕らがアイツに狙われた理由は結局はっきりしてない。

 双子座の力を狙っていたのは明らかだったけど、その強奪か破壊の先になにがあったのか。そもそもこの星の力も、あの鎧化する干支の槍にも、一体どんな意味があったのだろうか。自分達以外の秘密は最後まで分からずじまいだ。


 「まぁ、それは杉佐多君達にまた聞けばいいでしょ。とにかく今は……あの必殺技名は何? 」


 なぜ、それが“とにかく”だ。


 「アルティメットの何が悪いんだ? 気合入れるための即席にしては、それっぽいだろ。」


 「えー、ありきたりすぎじゃない? 」


 うるさい。僕の中で、アルティメットは原点にして頂点なんだよ。


 「ていうか、お前のインフィニットもほぼそのまんまだろ? ほぼ英語の授業だろ? 」


 「高校生が翻訳して何が悪いのよ。無難でしょ? 」


 「いや、ダメだな。少年には憧れと冒険心が必要なんだよ。」


 「私、少年じゃないし。その中二病センス、やっぱりあなたは私じゃなかったわ…… 」


 バッ


 「二人共よかったあああああああああああああっ!!!! 」


 ドカッ!!


 「ねっ!!? 」 ドサッ


 くだらない技名談の最中だった彼女は、アユリさんによる横からの抱擁突進が決まったことで、思いっ切り尻餅をつく。


 「イッタい…… 」


 「うわあああああああああん……、勝てて良かったぁ……!! 」


 ギュゥゥ……


 「フフッ、アユリ……さっきと逆だね? よしよし…… 」


 飛びついた先の腹部を涙で濡らし、頭を撫でられるアユリさん。いろいろと心配を掛けてしまったらしく、それが戦いが終わったことで爆発したのだろう。

 なんだか申し訳ない。あと、羨ましい。彼女でなく僕に飛びついてくれも良かったのだけれど……いや、流石に今は気まずいか。いろいろ。


 「おっ、寂しそうだな。お前には俺が抱き着いてやろうか? 」


 「もう一回その左手バキ折っていいならな。」


 からかい表情で両手を広げてきた事情知らずのオサムに、即脅しカウンターを決める。


 「お前の強がり、攻撃的すぎね? 今のその力だとシャレにならんし。」


 オサムは僕の破壊ターゲットにされかけた左手を守る様に体の前で腕を組む。

 見たところ、あれだけ青くなっていた重傷も水瓶座の力で元通り。自分の制服の穴の大きさを改めて見ても、アユリさんの活躍を改めて感じる。


 「お前もありがとよ。あそこで助けに来てくれなきゃ二人揃って死んでた。」


 結界を切り裂いてきたコイツの存在も。


 「素直に感謝されたらされたで、なんか反応に困るな……てか、二人共その体でホントに助かったのか? 」


 友人からの賞賛に少しだけ照れを見せたオサムだったが、僕らのヒビだらけの体を見て“自分が助けた”と言えるのか疑問を抱く。

 確かにこの消滅まっしぐらの体を見て、助かったとは思わないか。


 「ぐすっ……、そういえば回避方法があるんじゃ……? 」


 泣きながら僕らの話を聞いていた様子のアユリさんが、顔を上げる。


 「でも、時間があんまり…… 」


 どうやら拡がり続ける僕らのヒビを見て時間切れを気にしてくれてるらしい。

 説明不足のせいで、何個も心配要素を振りまいたままで、本当に申し訳ないな。


 戦いを乗り越え、生き残った今となっては、残り時間なんてどうでもいいのに。


 「ああ、その消滅回避って言うのは…… 」

 「ああ、その消滅回避って言うのは…… 」


 ビジジジジ……!!


 「ん? 」

 「ん? 」


 今度はなんだ?

 せっかく二人に説明しようと思ったのに、謎の音に邪魔をされる。まるで、電子機器の故障音だったが……


 ビジジジジジ……バシュンッ!!


 「っ!! 結界が…… 」


 「消える……? 」


 そうか。敵を倒したから解除されているのか。

 音が聞こえた上の方を見ると僕らを囲んでいた光の網がドームの頂点で収束され、元の見慣れた色の空と景色が現れ出す。

 戦いのフィールドからの解放。家に帰るまでが遠足というけれど、戦いも戦場から抜けるまでが戦い。そう思えばこれが完全な終幕と言える。


 「帰ってきたって感じね。これでホントに終わ…… 」


 「羽撃、急いでっ!! 」


 「ん? この声は…… 」


 さっきまで限りあった上空から聞こえる女性の声。まだ印象には薄いが呼んだ名前にも、声色にも聞き覚えがある。

 これらから思い浮かぶのは、えっと……黒髪清楚と、風?


 「っ!!? 伏せろっ!! 」

 「っ!!? 伏せてっ!! 」


 今日、数回見聞きした攻撃と風音を思い出した僕らは、咄嗟に低姿勢での自己防衛を叫ぶ。

 

 ビュウウウウウウウンッ!!!!


 「やっぱり、あの風…… 」

 「やっぱり、あの風…… 」


 やっと解放された青空からいきなり現れるラジコン竜巻。

 その操作主たる槍使い。もとい、ほぼ魔法使いは予想通り武器に跨って宙を浮いている。


 「はぁ、はぁ…… 」



 荒い息と頭からの流血、そして見覚えのある風の檻を一つ右に携えた副会長が。



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