邂逅世界の双子の双子座 miracle world's twins gemini
ガクッ……
「負けた……? 」
「疾駆が…… 」
「この俺様が…… 」
「最強のはずの俺様達が……負けた? 」
僕らに背を向けたままで膝をついた敵が、途切れ途切れの言葉を呟き続ける。
鎧は砕け、本人もボロボロの戦闘不能状態だが、それでもまだ敗北を受け止め切れない様子。
「俺様は負けるわけにはいかなかったのに……!! 」
その背中と言葉からは現状把握のできない馬鹿さ加減よりも、勝利の執念深さが伺える。
何がアイツをそこまで突き動かしているんだか、全く見当もつかないが……
「なんなんだよ…… 」
「えっ? 」
「えっ? 」
首を少しこちらに向け、満身創痍の敵が僕らに問う。
「いきなり強くなって…… 」
険しさと、
「俺様をめちゃくちゃに重くして…… 」
悔しさと、
「神の槍の疾駆まで粉々に……!! 」
苦しみに塗れた顔で、僕らに叫ぶ。
「お前らは…… お前らは、いったいなんなんだよっ!!!? 」
その表情を見ると、なんだか勝利を両手放しには喜べない。
きっと何か譲れないものがあったのだと思う。
「何者か……か。」
「何者か……ね。」
だが、それはこっちだって同じ。僕達にも譲れない物がある。
一方的にそれを奪おうとしたほぼ殺人犯な敵に同情なんてしたくないし、この勝利を後悔したりはしない。だから……
「教えてやるよ…… 」
「教えてあげるわ…… 」
ここは勝利宣言の代わりに堂々とその問いに答えよう。
「スゥーーー 」
「スゥーーー 」
立ち上がって、息を整えて、
「フゥーーーー 」
「フゥーーーー 」
僕達も知ったばかりの僕達の正体を。
「僕らは……いや、 」
「私達は……いや、 」
この世界での希望や願いが込められた二人の名前を。
「僕の名前は、祇峰フタリ 」
「私の名前は、祇峰フタリ 」
「コイツの名前も、祇峰フタリ 」
「コイツの名前も、祇峰フタリ 」
「でも、本来の僕は祇峰フタバで…… 」
「本来の私は祇峰ミライ…… 」
「この名前で、同じ家に一緒に生まれるはずで…… 」
「二人揃って、同じ世界に生まれるはずで…… 」
「それぞれ別の世界で生まれた。」
「それぞれ別の世界で生まれた。」
「だから、ずっと会うことがなくて…… 」
「お互いの存在も知らないままで…… 」
「それぞれ別の時間を育って…… 」
「でも、同じ名前を貰って…… 」
「同じような友達作って…… 」
「同じ家族に二人共望まれて…… 」
「そして、昨日奇跡的に出逢えた。」
「そして、昨日奇跡的に出逢えた。」
「だから、今度こそ同じ世界で絶対に生きる…… 」
「だから、今度こそ同じ世界で絶対に生きる…… 」
「邂逅世界の双子の双子座だ。 」
「邂逅世界の双子の双子座だ。 」