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最後の二撃 ultimate and infinity

  

 

 「じゃあ、行くぞっ!! 俺様達の一心同体っ!!!! 」


 『ああっ!! オレ達は一蓮托生っ!!!! お前の全てについて行くぜぇ!!!!! 』



 グィン……!!



 私達の真上で午のクセにコウモリ状態になっている敵が、より深く体を結界に沈み込ませる。


 「来るわね…… 」


 「ああ、来るな。多分、一撃必殺で。」


 そりゃ、あの喰い込み方だとそうなっちゃうか。絶対あのまま突っ込んでくる。

 さっきみたいに結界内を動き回るような連撃ではなく、全てのパワーを込めた究極の一発をお見舞いしてくれるらしい。


 「じゃあ、お互い最後の一撃になりそうね。私達もこれ以上戦い続けたら、ヒビが全身に行き渡りそう。」


 なんならよくここまで耐えてくれたって、自分の体に思う。

 ベッドとかスマホは割れ始めた瞬間、一気に粉々に砕けてしまったのだ。もし、私達のヒビも同じ仕様だったなら、その瞬間にこの世界から排除されていただろう。しかし、体のヒビは進行しつつも、明らかにそれらより遅く、まだ存在を保つことが出来ていた。


 「でも、この拡がりが圧倒的に遅いのも、母さんのおかげなんだろうな。」


 彼が自分の手の平を見ながら、まだ消え去らない理由を察する。


 「きっと、力の残りか何かで消滅を塞き止めてくれている。そうとしか思えない。」


 「……やっぱり、そうだよね。 」


 ……まぁ、なんとなく私も分かってはいた。

 今まで消えた物と体のヒビには、形や入り方に進行速度以外の違いは見られない。きっと、私達も一瞬で儚く散る運命だったのだと思う。

 それでも、人の形をかろうじて保っていられるのは、やっぱり……


 「生まれてから今現在に至るまで、どこまでもお母さん……いや、お母さん達に繋がれた命だったわけだよね…… 」


 私は自分の命の重みを改めて実感する。

 それは“一つしかない物だから”とか、“親から貰った物だから”とか、意味合いからの重さだけじゃない。

 ただ……



 ()()以上にその()()()が重い。



 母親が命を懸け、

 母親が昏睡状態にまで落ち、

 兄に人生を譲られ、

 兄に人生を譲り、

 お父さんに育てられ、

 お姉ちゃんに大切にされ、

 想い人に助けられ、

 親友に癒され、

 さらには世界中まで巻き込み、

 そして、また母親に守られる命。


 そんな祇峰フタリを囲んで輪となるカタチには、測り知れない重みがあって、測り切れない想いがある。


 だからと言って、別に他の誰かの物より価値が大きいなんて思わないし、今はもう罪悪感から小さいとも思わない。


 でも、特別には思いたい。


 誰にだって命にカタチはあるのだろうけれど、やっぱり自分達の物を一番大切に感じられる。


 世界を巻き込んだ壮大性を他人と比べて、自慢したいワケじゃない。


 ただの実感性。自分の身近にある繋がりを一番身に染みて感じるってだけ。


 だから、私にとっては一番特別なカタチ。


 そして、この特別な思いは彼も、母親も、お姉ちゃんも、お父さんも、アユリも。オサム君も自分のカタチにきっと抱いてる。


 だから、私は存在は大切に想われ、私はその存在を大切に想う。


 そんな想いの連鎖が今の私達を繋いでくれている。


 身体がどこまでヒビ割れたって、私達のカタチは決して崩れず、重みを変えることはない。


 それに杉佐多さんやコイハルちゃんの様な新しい存在とだって巡り合えたのだから、むしろその重みは増すばかりだ。

 


 「……なら、ここまで繋いでもらった物を僕ら自身で途切れさせるワケにはいかないな。」 スッ


 「……だねっ 」 ガシッ


 私は左の彼から差し出されたグローブの右手を、こっちもグローブの右手で掴み、体を向かい合わせて姿勢を落とす。


 「行くぞっ!! 出来る限りの二倍でアイツを迎え撃つっ!!!! 」


 「オッケー!! 絶対にここを乗り越えるっ!!!! 」

 


 グッ……!!



 私たちは再び繰り返す。


 「トゥワイス…… 」

 「トゥワイス…… 」


 お互いへの二倍を。


 「トゥワイス……! 」

 「トゥワイス……! 」


 身体能力への二倍を。


 「トゥワイス……!! 」

 「トゥワイス……!! 」


 勝利への二倍を。そして……


 「トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! 」

 「トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! トゥワイス!! 」



 生き残るための希望の二倍をっ!!!!



 「超馬神槍技 疾駆波乱っ!!!!!! 」

 『超馬神槍技 疾駆波乱っ!!!!!! 』



 グィィィィィン……バンッ!!!!!


 「来たぞっ!! 」


 沈む結界から放たれた敵。物凄いオーラのようなものを纏い、槍を突き出して突っ込んで来る。

 重力を何百倍にもされているとは思えない超スピードで。


 「っ!!? 思ったより速…… 」


 「ストリーム・アクアっ!!!! 」 ブシャアアアアアアアッ!!!!

 「ディメンショナル・キャンスラッシュ!!!! 」 ズバァンッ!!!!


 「なにっ!!? 」

 『なにっ!!? 』


 「あれは……!! 」

 「あれは……!! 」


 いきなり、敵の突撃進路を妨害する左からの螺旋状の水流と、右からの三日月の斬撃波。

 これらの回避のため、敵は不可能なはずの空中で進路変更を二度も余儀なくされる。


 「止まってたまるかあああああああああああ!!!!!!! 」


 ギュゥン、ギュゥン……!!

 

 神の力によるものなのか、空中でのカーブに成功されるが、そんな不可能を可能にした分スピードが一気に落ち始める。

 想定していたであろうストレート加速が一気に台無し。これで確実に仕留められる。

 それでもって、この水と剣による成果はもちろん……



 「決めてっ!! フタリ共っ!!!! 」

 「決めろっ!! フタリ共っ!!!! 」

 


 いつの間にか私達の左右に立っている二人、かけがえのない親友達の活躍だ。



 「ありがとね!! アユリ、オサム君っ!!!! 」

 「ありがとな!! オサム、アユリさんっ!!!! 」


 

 ビュンッ!!!!



 二人の友の声に背中を押された私達は、結んだ手を解いて敵に向かって跳び上がる。


 「これで最後……!! 」グッ

 「これで最後……!! 」グッ


 無限の二倍を右手に込めて

 


 「最後なのは……お前らだあああああああああああああああっーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!! 」

 『最後なのは……お前らだあああああああああああああああっーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!! 』



 全ての私達への想いと希望を力強く握りしめて




 「インフィニット……ジェミニック・トゥワイスっーーーーーーーーーーー!!!!! 」

 「アルティメット……ジェミニック・トゥワイスっーーーーーーーーーーー!!!!! 」




 カッコつかないバラバラの名前を叫びながら、最後の二撃を繰り出した。


 







 ズガァァァァンッ!!!!!!





  




 「………… 」

 「………… 」

 「………… 」

 『………… 』



 空中での激突を終えた私達フタリと鎧の槍使い。

 互いに数メートルの距離をとった背中合わせで、私達は拳を振り終えたまま並び立ち、敵も槍を地面に突き刺したまま動かない。


 「だ、大丈夫なの……? 」

 「どうなったんだ……? 」


 沈黙を破る親友二人の声。

 不動を貫く私達は今、負けて動けないのか。

 それとも、勝利の感傷に浸って動かないのか。

 どちらにも見えるだろうから、それは当然の心配。



 「ええ…… 」

 「ああ…… 」



 ガクッ……



 「っ!!? フタリ共っ!!!! 」

 「っ!!? フタリ共っ!!!! 」



 膝から崩れ落ちる私達フタリ。

 それを見て駆け寄って来る親友二人。

 でも、さっきの問いへの答えは……

 


 「動き過ぎて…… 」

 「動き過ぎて…… 」



 「え? 」

 「え? 」



 「疲れたぁ…… 」

 「疲れた…… 」



 ただの疲労。体力の二倍と他の二倍量が釣り合ってなかったらしいが、身体自体は二人共無傷。

 そして、一方の槍使いは……

 


 バキバキバキバキッ……!!



 『すまねぇ、ヤマト…… 』


 バリィン!!!! ガラガラガラガラ……


 その体から完全に鎧が崩れ落ち、元の制服姿になっている。


 「疾駆…… 」

 

 砕けた鎧は槍の装飾の時と同じ大きさに戻り、小さな破片となって足元に細かく転がり出す。

 つまりは、敵の装備の破壊。

 つまりは、力の源の消滅。

 つまりは、届いた拳。

 つまりは……




 私達の勝利だ。


 

 

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