finally フタリ
‐ 数分前 ‐
ガンッ!!
ズサッ!!
バシッ!!
ビュンッ!!
ズバッ!!!
ドカァッ!!!!
「す、すごい……!! 」
「す、すげぇ……!! 」
オサム君と槍使いによる命懸けの激闘をアユリの水に治療されながら眺める私達。
物凄く心配しながら彼を送り出したのに、それが無駄だったとしか思えないほどの圧倒的な蟹座有利展開を見て感心ともに少し恥ずかしくなる。十分に理解していたつもりだったけれど、オサム君の実力を完全に侮っていたみたいだ。
神の力が彼にも上乗せされているんだろうけど、それにしてはほとんど一歩も動くことなく敵の攻撃を受け止めては何度もカウンターを繰り出していて、強過ぎるように思える。
身体能力を二倍にした私達でギリギリついていけるくらいだろうか。まさかこんなに実力差があるなんてびっくりだ。
「ふぅ……お待たせだね。治ったよ! 二人ともっ!! 」
私達が戦いの方に目をやったままでいると、アユリが額の汗を拭いながら治療完了の声を上げる。
なかなかの集中力を使わせてしまったみたいだけど、それに見合うだけの成果が私達の体に現れていた。
「ウソみたい……、私の傷もコイツの穴も全部治ってる……!! 」
身体も体力も、全部が元通り。足元の男に関しては数分前まで瀕死状態だったとはとても思えない。
「おぉ……体が動くっ!! 本当にありがとう、アユリさんっ!! 」
地面に頭をつけていた彼は体を起こしながら自分の回復を確認して、名医と呼べる彼女に感謝を伝える。、
「助けてもらってるのに、そっぽ向いててゴメンね。本当に助かったわ。」
私も失礼を謝りながら、彼の後に続ける。
「ううん、いいの。最初に守ろうとしてくれたのはフタリちゃん達の方なんだから、私はただの鶴ってだけ。」
「鶴? 」
「鶴の恩返しってあるでしょ? 星で言うと鶴座かと思って。」
「あなた水瓶なんでしょ? 」
「そっか、これじゃ星座二つになっちゃうね。頭の神様に浮気者って言われちゃうかも…… 」
相変わらずの意味不明マイペースな親友に振り回されるが、なんだか懐かしく感じる。実家のような安心感って言えばいいのだろうか? (実家から出たことないけど )
「まぁ、これでこそアユリよね。でも、お礼はちゃんと言わ…… 」
ビシビシビシビシビシビシッ…………!!
ビシビシビシビシビシビシッ…………!!
「っ……!!? 」
「っ……!!? 」
私が親友に例を告げようとした途端、その言葉を激しく刺々しい音に遮られてしまう。
それは聞き覚えのある不吉極まりない亀裂音。
私を絶望に落としかけた原因の一つ。
思い出を消し飛ばす無情な破壊。
「また……なの……? 」
何なの? 次はいったい何を奪うの?
制服……? それともヘアゴム……? まさかアユリ達が消えたりは……
「ねぇ、この音って何が……って、えっ!!? 二人共、どうしたのその腕っ!!? 」
亀裂音の正体を知らずハテナを浮かべていたアユリが、突然私たちの何か気付いて焦り顔を青ざめさせる。
何か信じられない物を見たような表情。腕? 私たちの腕がどうしたんたって言うの?
「腕にも怪我はあった気がするけど、君が治してくれたんじゃ…… 」
何に彼女が驚いているのかは分からなかったが、私達はアユリに指摘された自分の腕に視線を落とす。
そして、私たちは一瞬で全てを察する。
「っ!!! そうか…… 」
「っ!!! そうか…… 」
そこで始まっていたのは超常現象。
でも、それは超常の終わりを示す超常現象。
だから終わりを告げる始まりと言える超常現象。
亀裂音と共にこの世界から跡形もなく大切を消す超常現象。
そう、私達は……
「もう、私達の番なんだね…… 」
「もう、僕達の番なんだな…… 」
この両腕のヒビと共に間もなく消滅するのだ。