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一心同体 be wrapped god

 


 「ハハハハハッ!!!! やっぱコイツはすげぇ!! めちゃくちゃな力があふれてきやがる!! 」

 

 『当たり前だろ? なんたって神器神装は干支のゾディアック最強の奥義だからな!! 』


 緑色に輝き続ける全身。

 所々が鋭利に尖っていて、触れたものを一瞬で傷ものに出来そうな手足。

 巨大化してしゃべり続ける馬の顔と、その足を模したのであろうブースターのような管が後ろに伸びた胸。

 左に流れていた髪はどこかの戦闘種族の如く逆上がり、どこからか現れた午の髪飾りがその中央に位置している。


 そんな美しくも凶器性に満ち溢れた午の鎧に身を包んだ槍使い。いや、もう槍使いと呼べるのだろうか?


 一応、装飾が外れてほっそりとした槍(それでも十分武器として使えそうだけど。)をもってはいるが、もう私たちに危機感を煽るのは槍なんかじゃない。全身のありとあらゆる場所から命の危険を感じ取れてしまう。


 ビジッ……!! ビジジジジジジジッ!!!!


 「ぐぅっ……ぐっはぁ……かはぁっ!! 」ガクッ


 「ど、どうしたんだ? 」

 

 やる気満々だったはずの敵が突然苦しみだして膝をつく。

 鎧から雷が走り、まるで装着者を拒絶してるみたいだ。


 『おい、ヤマト! 神の強大な力をただの人間が纏うんだ、無理はするなよ? 』


 「はぁ、はぁ……やっぱ、神器神装は泥刃の剣ってことか……! 」


 多分、諸刃の剣って言いたいんだと思うけど……それほどに強力な力ってこと? そんなのに勝てるの?


 「いや、勝ち目はあるんじゃないか。そこまで負担のかかる状態なら、持久戦で時間稼ぎすれば…… 」


 シュン……!!




 「俺様相手にそんな余裕があるとでも? 」

 『俺達相手にそんな余裕があるとでも? 」




 「……っ!!? 」

 「……っ!!? 」


 み、見えなかったし、聞こえなかったし、気づかなかった。

 隣の彼が冷静に現実的な作戦を立てた次の瞬間、それを非現実なものへと変貌させるように一瞬で敵が背後に現れたのだ。


 「い、いつの間…… 」


 ブンッ……!!


 「……にっ!!? 」 ドカッ!!!! ドカァン!!!!!!


 「なっ……!!!? 」


 は、速すぎるし、強すぎる。

 驚きの声を上げる間もなく隣の彼は結界の格子へと吹き飛ばされてしまった。

 どんな攻撃をされたのかは分からない。ただ、彼が飛ばされたという結果しか分からない。重力を二倍にしたはずなのに攻撃の工程が全く見えない……!!


 「腕振っただけでこの威力……!! ヤバすぎるぜ……!! 」


 どうやら裏拳を彼に当てたらしい。

 自分でも驚きをみせる敵の言葉でやっとさっきの攻撃方法を知るが、全く見てなかったせいで納得できない。というか、それだけで一人の人間を吹き飛ばしただなんて思うと納得する余裕が心にない。


 「だ、大丈夫っ!!? 大丈夫なの!!? 」


 もろに攻撃を受け、砂ぼこりで姿が見えない彼に叫びかけるが返事がない。気絶してる……? いや、まさか死……


 「さぁて、次はお前のば……ごほっ!! ぐはっ!! 」


 私を標的に定めた敵がまた苦しみだ出す。この様子だと、ホントに持久戦に持って行けたなら勝ち目があったかもしれない。もうそんな希望はないけど……


 『ヤマト、やはり今のお前じゃこの姿は長くは保てないみたいだ。さっさと決着つけた方がいい。』


 「ゔぅ……そうか。じゃあ、コイツはアレで確実に仕留めるぞっ!! 」


 鎧状態に限界を感じ始めたらしい敵が何かの技を決定する。

 アレって、何する気……? 確実に仕留めるなんていったいどんな……


 「さぁ、行くぜぇ……!! 」ビュンッ


 「あれ……? どこに……!? 」


 明らかに私をターゲットに大技を繰り出そうとしていたはずの敵が目の前から姿を消す。

 攻撃するなら私に向かってくるんじゃ……


 「こっちだっ!!!! 」 グインッ……


 「えっ……、なんで……!? 」


 声のした方を向くと私とは真逆の場所。

 重力無視の90度体勢で結界の格子に足をつけていた。そして、その弾力性のある格子は沈み込んで……って、まさかっ!!!?




 「超馬神槍技(ちょうばしんそうぎ)……疾駆波乱(しっくばらん)!!!!!! 」

 『超馬神槍技(ちょうばしんそうぎ)……疾駆波乱(しっくばらん)!!!!!! 』


 シュン……



 ズバッ……!



 ズババッ……!!



 ズババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババンッ!!!!!!!










 「な、何が起きたの……? 」


 気がつくと私は、宙に浮いていた。

 なんでこうなってるのかは詳しく思い出せないけど、とにかく全身が痛い。

 何度も殴られた気もするし、蹴られた気もする。槍で切られたような痛みもある。

 ただ分かっているのは……


 一瞬で私はボロボロにされた。


 制服はあちこちが破れ、痣と切り傷が見え隠れしている。

 現状と直前の記憶から考えるにどうやら連続攻撃をされたらしい。きっと結界の弾力を利用して勢いを出して攻撃、それが終わったらまた結界の壁に跳んで勢いをつけ直して再攻撃というのを繰り返したんだと思う。攻撃の度にスピードを上げて。そして目にも止まらぬ、ほんの一瞬で。


 ヒューーーー、ドサッ!


 「うぅ……!! 」


 空宙から地面に落ちた私は体中の痛みに耐えられず、意識を見失い始める。

 暗くなり始める目の前。そこにかすかに映るのは……



 「これで最後だああああああああああああ!!!!! 」バビュンッ!!!!!!


 

 とどめの蹴りを上空から決めに来る敵の姿。私にある傷の数だけスピードが上がっているであろう最凶最速キック。こんな状態の私にはオーバーキルね。

 まだ死ぬわけにはいかなかったけど、これじゃどうしようもないか。せめて彼の無事だけでも祈って、眠りに就こう。あのキック絶対痛そうだし、それに……それに、きっと私は既に……



 スタ……、バッ!!



 あれ? 目閉じ切ってないのに暗くなった。いや、 急に何かが目の前に現れ……っ!!?


 「あ、あなた何してっ……!!? 」


 「フッ…… 」




 グシャリ……、ブシャアアアアアアアアアアッ……!!!!!!


 


 敵の尖った足が腹部に穴をあけて、突き刺さる。

 吹き荒れる大量の鮮血が目の前を赤黒く染め上げる。


 でも、私じゃない。私の血じゃない。私の意識は目の前の衝撃によって、むしろはっきりと鮮明になり始めた。


 「お前……生きてたのか。」

 『お前……生きてたのか。』


 「ぐぶっ……、か、勘は空手のおかげで鍛えられててね……す、姿は捕らえられなくても、気配ぐらいならっ、ぶはぁっ……!!!! 」


 最後の一撃を正面に受け、敵の足に腹部を貫かれ、傷口からも口からも血を流し続けながら……



 彼は私の前に立っていた……


 

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