神器神装 ultimate style
「午の神よ!! その疾風のごとく大地を駆ける速さを我が身にっ!! 馬神槍 疾駆…… 」
私の二倍妨害と、私たちのダブルパンチを腹部に受けて動けなくなったと思っていた敵が突然謎の口上と共に立ち上がり、槍を掲げた。
「な、なに? 何する気なの!? 」
「やっぱ、まだやるつもりなのか……何かされる前に早くアイツを気絶させるぞっ!! 」ダッ
敵の再行動に危機感を感じた隣の彼は敵に攻撃を畳みかけようとする。
どうせ降参はしてくれないので、手っ取り早く意識を奪うつもりなんだろうけど……嫌な予感がする。あれは攻撃と言うよりも……
「神器神装っ!!!!!! 」
『神器神装っ!!!!!! 』
ガシャガシャガシャガシャガシャン……バシュシュシュン!!
「え? 分解した? 」
敵が槍と同時に放った神器覚醒とやらとはまた違う四字熟語。神器真相?深層? (しんそうってなんだろ?)
その言葉を言い終えた瞬間に掲げられた槍の馬の装飾が輝きだし、次々と外れて宙を浮き始めた。私たちを狙う凶器ではあったけど、綺麗と思えなくもなかったあの槍はさっぱりとした骨槍を残してバラバラの台無し分解状態である。
「うおっ!!? 」グワッ
敵に向かって走り出していた彼はその空飛ぶ装飾にぶつかりそうになって動きを止める。
偶然か意図してかは分からないけど、持ち主を守ろうと襲い掛かったようにも見えた。ひょっとしてもっとパワーアップするのかと思ったけど、これが“神器しんそう”?
「な、なんだよアレ? 」
「装飾操作にによる遠距離攻撃ってこと? 思ったより地味だけど、カウンター決めれないし厄介そう…… 」
私は現状から“しんそう”の“そう”は“操”であると考え、ここから展開を予測する。
宙に浮き続ける大きさの違う五つの光。これで私たちを翻弄しつつ本体が突っ込んでくるとかなんだろうけど……それだけなら何とか勝てそう。装飾の動きも目で追い切れる速さだし、私がうまく囮になったりすればきっと……
「ハッ!! 俺様たちの最強奥義がこれで終わりなわけねぇだろ!!? 」
ヒュッ……ピキン!!
ヒュッ……ピキン!!
ヒュッ……ピキン!!
ヒュッ……ピキン!!
ヒュッ……ピキン!!
「……っ!!? 巨大化した!!? 」
「……っ!!? 巨大化した!!? 」
宙に浮いているだけかと思っていたそれぞれ五つの装飾が突然光を強めて元の数倍の大きさになり始め、その光景に私たちは驚きの声を上げる。
いや、巨大化の原理とかは今更気にならないけど、あの形は……
「鎧……? 」
「鎧……? 」
五本指が見える二つの籠手。
つま先の鋭利な左右のブーツ。
それに明らかに腕二本と腰用の穴が開いた馬の顔がある一番大きなパーツ。
間違いない。槍に引っ付いているときには分からなかったけれど、確かに鎧だ。でもって鎧は着るものだから……、“神器しんそう”の“しんそう”は神を装備するって意味で“神装”……
「ねぇ……? 神様身に付けても、防御力しか上がらないなんてこと…… 」
「ないだろ…… 」
「逆転されるほどの力をつけるなんてこと…… 」
「あるだろ…… 」
「じゃあ、着られる前に…… 」
「止めるべきだろっ!!!! 」
ダッ!! ビュンッ!!
ダッ!! ビュンッ!!
今までない危機を感じ取り共有した私たちは急いで敵本体に飛び掛かる。だけど……
「もう遅いぜ……!!!! 」
『もう遅いぜ……!!!! 』
ビュビュビュビュビュン!!!!!!
宙に浮いていた元装飾かつ現鎧は私たちの二倍スピードをも超える速度で持ち主の体に辿り着いてしまう。そして、自分たちでその体の各部に身についてしまう。
ガシャン!
ガシャン!
ガシャン……ガシャガシャガシャガシャガシャン!!!!!!
「きたきたきたきたきたきたきたきたきたきたきたきたきたきたきたきたきたぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!! 」
ピカァーーーーーーーーーーーーー!!!!
持ち主に身についた各部位の鎧たちは、その姿を祝う様にさらに大きな光を放つ。
一見すれば救世主でも降臨したような希望的な照らし。だがおそらく私たちを待っているのは……
「ま、間に合わなかった……!! 」
「ま、間に合わなかった……!! 」
一筋の光すらない真っ暗な絶望だ。
ピカァァァァ…………シュンッ
「神装完了……さぁて、これで全部終わりだぁ……!! 」