妨害トゥワイス blind spot
『だ、ダメージと重力を増やしただと……? 』
馬の槍が女の僕が持ち主に付与した二倍のマイナス効果に驚愕する。
「なるほど、この力他人にも使えるのか……盲点だったな。」
そして僕の場合は感心していた。
今まで僕がこのジェミニック・トゥワイスを使ったのは基本的に自分の身体能力のみ。いつの間にか自分にしか効果がないと思い込んでいた僕には、この力を敵の妨害に使おうなんて思いもよらなかった。
「そういや、破片も二倍できたもんな……でも、まさかこんなことまで…… 」
「どうせ殴るならついでにと思って試してみたんだけど、ホントに効果あるなんてね。神様の力っていうのはやっぱり伊達じゃなさそうじゃん。」
訳の分からない力でも、いろいろ試してみるもんだな。
どうやら、この双子座の力は文字通りあらゆるものを二倍に出来るらしい。それがどんな物質であろうと。誰の概念であろうと関係なく。
「この力、使い方次第じゃ僕らが思ってる以上に強力なんじゃないか……? 」
「そうね。閃き次第では戦い方に無限の可能性があるのかも。」
戦闘力より、頭の回転の方が重要そうだな。強くなりたかったら、修行よりも勉強してた方が力になるかもしれない。今の僕らにそんな余裕があるのかは別として……
「ねぇ? その状態でも戦うの? さっきの戦い中にも言ったけど、私たちはあなたに恨みがあるわけじゃないし、時間もないからこれで終わりでも…… 」
女の僕が敵に幕引きを促す。
おそらくあの弱体化状態の敵と二対一で戦えば、こちらが有利を取れる可能性は高い。少なくとも互角以上には持っていけるはず。だから勝負は見えたということで、見逃してあげても……
「ハッ!! ほざきやがれ!! こんなもんは寧ろちょうどいいハンデ……戦いがもっと面白くなっただけなんだよっ!!!! 」
ダメだ。分かってはいたが馬鹿は俄然やる気である。なんなら口角がよりあがって、より楽しそうである。
「強がり……じゃなさそうね。ホントにハンデとして楽しむ要素だと思ってるみたい…… 」
「八対一にも臆しなかった野郎だからなぁ……、マジでイカれた戦闘狂だな。何がアイツをあそこまで……? 」
僕は馬鹿の戦う理由について疑問を持ち始める。
この邂逅世界についても全く分からないことだらけだが、この槍使い達についてもまだほとんどのことが判明していない。知っているのは名前と干支の槍を使うことぐらい。
戦う動機も僕ら星のゾディアックを狙う理由についても、まだ知らないのだ。
「そんなの今考えても仕方ないでしょ。今は目の前の敵優先……、ほら、ジェミニック・トゥワイスっ。」ポンっ
僕の疑問を後回しにさせた彼女は何故か僕の肩をたたいて、二倍能力を発動する。
「え? 今何したんだ? 」
「何って、体力よ。体力。1しかないHPを2にしただけかもしれないけど、ないよりマシでしょ? 」
ああ、確かにおかげで疲れの大部分が吹っ飛んだ。こちら有利と言っても途中で倒れてしまっては意味がない。これは助かる。
けど、さすがにHP1以上はあったぞ? あれだけ戦ったから、自分で二倍にした体力も元の半分ぐらいしかなかったけど……って、あれ? ちょっと待て。ジェミニック・トゥワイスって、重ね掛け出来ないはずじゃ……?
「さぁて……!! こんな小細工関係なしでテメェらをぶっ潰すっ!!!! 」ダッ!!!!
「何考えてるの!!? 来たよっ!! 」
「あ、ああ。」
俯きながら、疑問符を浮かべていた僕に女の自分が敵の行動開始を叫びかける。
引っかかる謎はあったが、とうとうバトル再開だ。