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祇峰双利 meet 祇峰フタリ♀


 目の前の女の子を見つめる。

 

 僕とは違う髪型、違う顔、違う服に違う性別。

 やはり何から何まで”僕”じゃない。”自分”じゃない。”祇峰双利”じゃない。

 僕とは真逆の後ろで髪を纏めた完全な女子高生。

 なのに、さっきこの女の子は僕から分裂し同時にこう名乗った。


 ”祇峰フタリ” と……



 「ホ、ホントに、だ、誰なの? あなた…… 」


 目の前の正体不明が僕に戸惑いながらもう一度問いかけて来た。

 僕から出て来た彼女は全てを知っていて早速この現象についてこと細く説明してくれたりするのかとも思ったが、その不安塗れな様子からして期待できそうもない。あっちにとってもコレは不測の事態らしい。

 

 「いや、誰なの?と言われても祇峰フタリとしか答えようが…… そっちこそ誰なんだ? 」


 いざ自分が誰かと聞かれるとほとんど答えようがないもんだな。

 追加情報0の自己紹介を回答とするしかなく、とりあえず質問を投げ返した。


 「わ、私も祇峰フタリとしか言いようが…… 」


 あっちも僕と同じで名前以外すぐには答えられないっぽいが、それだけで謎は十分深まる。

 まったく同じ名前。やはり聞き間違いじゃなかった。

 そりゃ、名前だけ見て祇峰フタリから祇峰フタリが分裂したといえばみんなと同じで当然なのだが、なにぶん性別から姿形が全く違う。簡単には受け入れられない。(というか分裂自体まだ受け入れてないし、受け入れられる気がしないし、まず自分がもう一人出てくるのが当然とかもう意味がわからない。)

 だが倒れてるポジション的にも彼女が僕から分裂したことは確かだ。間違いない。

 それに祇峰フタリなんて上から下まで珍しい名前が偶然で同姓同名を起こすとは思えない。

 僕と無関係ではないのは明らかだ。

 でもこんな子と会った記憶もなければ、分裂してくる心当たりもない。(というか分裂自体心当たりがない。) 

 あれか?僕の女々しい部分が具現化したとかか? でもそれだと周り全員が分裂してるのはおかしいか。見たところ異性が出て来てるの僕だけっぽいし。じゃあ、この子は一体……?

 

 「ど、どうして……? アユリ達と同じで私から私が出てくるんじゃないの?なんで?なんで男の子が? それに名前だけは同じって……」


 彼女もまだ僕同様にずっと戸惑っている様子だ。それもそうか、そのセリフからしてあっちからしてもアユリさんらと違って異性の僕が出て来たことに……って、ん?アユリ達?僕が出て来た?それって……


 「……そっちが僕から出て来たんじゃないのか? それにアユリさんのこと……」


 僕は抱いた疑念をそのまま彼女にぶつけてみる。


 「えっ、何言って……? あなたが私から出て来たんじゃ……それにアユリさんって言った? ちょっと持って、コレって…… 」


 どうやらあっちも気づいたらしい。

 お互いの立場の認識が()だということに。


 分裂()()()者と分裂()()()()者。


 僕はてっきりお互いに自分の立場、つまり僕は前者で彼女自身は後者であることをそれぞれ認識できているものだと思い込んでいた。

 だから自分の中から出て来た彼女のことや二人ずつになったオサム達のどちらか一人は自然と偽者か何かだと認識していたし、そんなことなくても自分が本者であることに疑いなんて持つはずがないからな。

 でも、それは相手も同じだった。

 ここまでの様子を見るに彼女は自分を偽者だなんて思ってない。

 それどころか、おそらく僕の方が偽者側だと捉えている。

 だが、僕が彼女の偽者でないことは僕自身が一番知っているからそれはない。やっぱり偽者と呼ばれるべきはあっちじゃないのか?

 でもアユリさんのことは知っているんだよな。しかもアユリと親しみがあるように呼んでいた。

 そのことを気にし始めると彼女が偽者とはなんとなく思えない。

 気になることと言えば、分裂直前のあの4人のセリフも……


 待てよ混乱してきた、一回整理しよう。

 僕たち両者はお互いに自分を本者だと思い、目の前の異性を偽者だと思っている。

 僕の友達のことを知っていて、親しみがあるように名前を呼んでいる。

 まるであっちにも自分の世界があるかのように……


 「ってことは、まさかっ……!! 」


 その時ある言葉が頭を横切った。


 いや待て待て、そんなの映画とかアニメの話だろ?

 現実にありえるとは思えない。

 でも、それを考えたらもうそれとしか思えないし第一、人間分裂とか起こってる時点で現実味もクソもない。

 やっぱりこれは分裂というより……



 「パラレルワールド……?」

 「パラレルワールド……?」



 目の前の彼女……いや目の前の”僕”も同じことを考えていた。




 

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