二戦目 rematch 中編
「くはっ…… 」ズルッ……、ドサッ
激音と共に壁に叩きつけられた彼女は、そのまま地面にずり落ちてしまいます。
「だ、大丈夫っ!!? 」
「だ、大丈夫かっ!!? 」
戦いを傍観していた私たちはすぐさま座り込む彼女に駆け寄ります。
正体不明とはいえ、こんな華奢な女の子を容赦なく吹っ飛ばすなんて、なんて酷い……
「し、心配ないわ……、痛みはあるけど蹴りを受ける前にブロックはしたから…… 」
以外にも意識ははっきりとしている彼女が私たちの心配を拭おうとします。
確かにその体を見てみると、あれだけの勢いで壁にぶつかったのにどこにも大きな怪我は見られません。その体の強度からして、やっぱり普通の人間とは何かが違うようです。
しかし、無事とは言い切れないのも確かです。少なくとも壁にぶつけた背中の痛みは尋常じゃないはず。現に彼女の顔は痛みを堪えているせいでひきつっており、明らかにすぐに立ち上がれる様子では……
ダンッ!!
「おいおいっ!! もうリタイアとは早すぎねえかぁ!!? 」
「えっ……!!? 」
「なっ……!!? 」
なんて槍使いなのでしょう。なんて卑劣なのでしょう。
敵は一目で戦闘不能に陥っている事が分かるはずの彼女を標的に、その矛先を向けて飛び掛かってきたのです。
「どうしようっ……! 」
いや、どうしようもありません。戦いようがありません。
片方が全国レベルの剣道選手とはいえ、今の激突を見た後では私たちは一般人で一括り。あんな超人と戦かったって当然勝機はありません。グッサリの効果音しか聞こえません。戦うことなんて出来ません。出来ませんが……
「まずは一人っ!!!! 」
「……ダメっ!! 」ギュッ……!
「……やめろっ!! 」バッ……!
「えっ……? あなた達……!!? 」
とうとう突き出された矛先を見て私は標的となった彼女を抱きしめて自分の背中を盾に。
鴉根君はその私たちの前で手を広げ、彼もまた盾となります。
やはり敵が超人でも、守る相手が誰なのか分からなくても、目の前で命を奪われそうになっている子をそのまま見過ごせるわけがありません。それにこの子はもしかしたら……
「ハッ!! ちょうどいいやっ!! 三人まとめて串刺しじゃあっ!!!! 」ブンッ!!
「させる訳ねぇだろ!! 」ガシッ!!
串刺しという絶望的皆殺しワードのすぐ後に聞こえた頼もしい声と、何かを強く掴む音。
それらのおかげなのか、私たちのお腹は槍で連結させられたりはしていません。あの攻撃を止めてくれたということなのでしょうか? だとしたらそれが出来るのは……
「あっ、君……!! 」
「あっ、君……!! 」
言うまでもなく、戦いに参加していた彼だけだ。
「おいおい。串刺しには一人足りないだろ? まだピンピンしてるこの僕が。」