過去明かし beginning past Part3
再び部屋中に響いた謎訪問者による呼び出し音を聞いて、私の頭に襲撃がよぎる。
「いや、干支のゾディアックの奴らが律儀にインターホンを押して訪ねてくるとは思えない。おそらく別人だと思うが…… 」
杉佐多さんが冷静な分析で、私たちの心配を拭おうとしてくれる。
でも、敵でないならなおさら誰が…… 。 正体不明に対する不安は消え失せない。世界中の知己から忘れられている私を訪ねてくる人間なんていないはずなのだから当然だ。
「マジで心当たりがないが……とりあえず、スコープ覗いて確認してくるか。」
「うん。」
「ああは言ったが敵の可能性も捨てきれない、オレたちもついてくぞ。」
「オッケーっ! チサトっ♡ 」
ダッ
未知の訪問者の確認方法を決めた私たちは、男の自分を先頭に4人足をそろえて再び玄関に向かっ……
ドカッ バサバサッ……
「ん? 」
4人の一番後ろにいた私は動き出した瞬間に足元にあった何かを蹴ってしまう。
それに気を取られて3人に置いてかれてしまった。別にすぐに追いつけるからいいけど。
「でも、さっきまでこんなのあったけ……? 」
ああ、そうか。私たちのアルバムとかが消えたことで思い出の山から崩れてきたのか。
ここの押し入れにはお姉ちゃんの分も入ってたから、両方の世界にあって消えずに残った物も多い。だから今蹴ったのも、多分お姉ちゃんの持ち物。
どうせ私たちにも超常にも関係ない物だろうけど、蹴とばしちゃったのは申し訳ないし拾って上げないと……
「えっ……? これって……!? 」
・
・
・
「さてと、今度はいったい誰なんだか…… 」
謎の訪問者を確認するため、僕ら4人は玄関前に揃……あれ? アイツは?
女の僕が何故かいない。またなんかしてんのか?
「そういえばついてきてないねぇ? 呼んでくる? 」
「でも、さっさと出ないと帰られるぞ。敵の待ち伏せじゃなかったらの話だが。」
黒羽さんが呼び出しを提案してくれるが、杉佐多の言う通り確認を優先すべきだ。それにもし槍使い共だったら、この最強天使さんには傍にいて撃退に協力してほしい。
「そうだな。じゃあ、アイツはほっといて…… 」
僕はドアの前に乗り出してスコープを除く。
さて、誰がいるのか……? 馬鹿か? 副会長か? それとも別の……
「えっ……!! 」
訪問者を認識した僕はもう十八番と化した驚きの声を漏らすと同時にドアノブに手をかける。
「誰だったの? 敵? それとも知り合い? 」
違う。敵なんかじゃないし、知り合いどころではない。
今扉越しにいるのはいつもだったら訪ねてくるのは珍しくもなく、むしろ当たり前だった存在達。
一緒にいることが当たり前だった存在達。
今だって隣にいてほしかった存在達。
でもその望みを僕たち自身で突き放した存在達。
その絆を手放すしかなかった存在達……
ガチャッ
そう、扉を開けた先にいたのはいつも通りの可愛らしい眼鏡女子と、いつもの見飽きたイケメン顔……
「お前ら、なんで…… 」
彼らの名前は鴉根オサムと薄明アユリ……僕らを忘れ去った僕らの親友だ。
「やっぱりここは君の家だったのか…… 」
「やっぱりここは君の家だったんだ…… 」