表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
114/188

お姉ちゃんの願い事 sister and brother



 「私とアイツに会うのがお姉ちゃんの願い……? 」


 見つかった姉の絵から導き出される推測。

 この人類二倍世界を作り上げることとなった、おそらくの動機。

 まだ仮ではあるけれど、今まで全く見えて来なかった超常の原因がやっと私の頭に姿を現した。


 「じゃあ、こんな世界を作り上げたのはお姉ちゃんってことに……は、ならないか。 」


 お姉ちゃんを容疑者とするそれらしき動機は見つけたものの、この推測にも疑問が多く残される。


 まず、実行方法だけど、ここはあまり不思議に思っていない。

 お姉ちゃんが私達同様のゾディアックだと言うなら、神様の力を持っているはず。まだどんな能力で、どんな星座なのかも分からないけど、祇峰フタリの性別が違うパラレルワールドを探し出したり、別世界の自分と会話したり、世界同士を合体させたりしちゃえる様なすごい大きな力を持っている……と大雑把に仮定してしまえば、?マークは肥大化しない。未知中の未知である神様の力はどんなことでも出来そうだから、想像のしようがないからね。

 ここは不思議じゃないというよりは、深く考えてもキリがないから考えないだけ。


 今考えるべきは彼女を実行者とした時、なぜ人類二倍・世界融合を選んでしまったのか、だ。


 もちろん、他に別世界の私達と出会う方法があるのかなんて知る由はない。

 けれど、世界の融合を選んだということは二人の祇峰フタリに同時に出会えることと引き換えに、彼女の大きな宝物を失う結果を招いてしまう……


 この世界融合の終着点では私達、祇峰フタリの消滅が待っているのだから。

 

 自分で自分のことを宝物なんて表現するのは恥ずかしいけれど、これまでのお姉ちゃんとの暮らしや言動、自分のことをファミコンとまで表現した家族依存の自覚。これを思えば宝物どころか、命より大事な存在だと思われてそう……こんな自負が出来るくらいに私はお姉ちゃんに愛されていた。それに……


 − 今のままじゃ、完全には戻らない。このままじゃ大切なものが消え失せてしまうの。−

 

 昨日の帰り道での私達への忠告。

 言われたときはこれがどういう意味なのかさっぱりだったけど、今ならすぐに分かる。これは私達の消滅を遠回しに伝えていたのだと……、つまりお姉ちゃんは消滅のこと事前に知っていたのだ。


 その上でもう一度考えよう。


 あの超絶家族思いのお姉ちゃんが、妹・弟の消滅を招く結果を知った上で、こんな方法を選ぶだろうか?

 二人の姉になりたいという夢のために、その二人を犠牲に出来るだろうか?


 ……いや、きっと選ばないし、過ぎりもしないと思う。

 祇峰唯芽は奇人で変人だけど、決して狂人ではないのだ。


 だから、世界融合はお姉ちゃんの仕業じゃない。


 「でも、そうだとしたら一体誰が…… 」


 実行者はお姉ちゃんじゃないとしても、この絵と世界の現状を見る限り動機に彼女の夢が関わっているのは間違いない気がする。

 じゃあ、そうなると別の誰かがお姉ちゃんの夢を知って、それを叶えてあげようとしているってこと? けど、他人の夢のためだけに世界をこんなパニックに陥れる様なことをするかな……? ん? いや、待って……


 「そんなことしようとする人って、もしかして…… 」


 ピンポーンッ……


 「えぇ? 今ぁ……? 」


 私のフルスロットル思考回路にインターホンのチャイムが突然のブレーキを掛ける。せっかく、いいとこまで行った気がしたのに……


 「まぁ、いいや。 どうせ宅配便……なわけないか。」


 下の男の自分に任せればいいかと思ったが、今の世界を踏まえて考えるとこれはあり得ない。この世界で祇峰家に訪問があること自体がおかしいのだ。

 だって、このパニック下で宅配業者が働いているとは思えないし、荷物を届けている場合なんかではないはず。2時間くらい前なら私達の友達の可能性もあったが、その全員に忘れ去られた今それもありえない。


 「え……!? じゃあ、一体誰が来て……? 」


 今現在の不可思議に気を取られた私は、さっきまでの思考アクセルから足を退け、急いで一階へと降りた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ