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望まれたフタリ in the same world



 私は自分の手にある驚愕から目が離せない。


 「なんなの……、これ……? 」


 机の引き出しからはみ出していた、古めかしいボロボロの画用紙。

 部屋のものは机と本棚以外は全て消えてしまったはずなのに、その画用紙だけはヒビが入ることもなく形を保っている様だった。

 気になった私は一階に降りる前にその紙を取り出してみたのだが……、そこにはあまりにも予想外で、あり得るはずのない絵が描かれていた。

 その作者は左上のおぼつかない平仮名で書かれた名前からすぐにわかる。


 『たんぽぽぐみ ぎみねゆいが 』


 つまり、お姉ちゃんの作品だ。

 たんぽぽ組っていうのは近所の幼稚園の年中さんクラスの一つだから、たぶん4歳ぐらいの時に描いたものだということは分かる。

 しかし、私とお姉ちゃんの歳の差は5歳。この絵が描かれたのは私が生まれてくる前ってことになる……にも関わらず、そこに描かれていたのは水色クレヨンで再現された空と“おひさま”って感じの太陽。


 そして、その下で手を繋ぐ3人の子供達。


 そのそれぞれの頭の上には、また歪んだ平仮名が3文字ずつが書かれ、その人物を示していた。

 真ん中のツインテールの子には“わたし”。きっとこの子は作者自身のお姉ちゃん。

 これには問題も違和感もない。だけど隣の二人は……


 「この二人って……、私たちだよね……? 」


 真ん中のお姉ちゃんと手を繋ぐ小さい女の子と男の子。

 背の低さを見るに、明らかにお姉ちゃんより年下。4歳児に先輩後輩の概念なんてないだろうから、友達というよりも姉弟・姉妹と考えるのが自然……つまり、この二人は私達であるとしか思えないのだ。


 私たちは自分同士のはずなのに……

 同時に存在しない人間のはずなのに……

 

 しかし、この二人が私達だとすると頭の上に書かれている名前にはそれぞれ疑問が残る。


 女の子には双凛でなく“みらい”

 男の子には双利でなく“ふたば”


 祇峰双利でも、祇峰双凛でもない。違う名前。

 この二人は私達にしか見えないのに、私達じゃないのだ。


 「じゃあ、この子達は誰……? 」


 そんな時、もう一度絵の左上が目に入る。

 

 「……いや、やっぱり私達なんじゃないの? 」


 作者名を見た私は正体不明の素性をもう一度捉え直す。


 お姉ちゃんの名前のすぐ横にある“たんぽぽぐみ ”のクラス名。

 これは私にとっては、当時のお姉ちゃんの所属や年齢を表しているだけの文字ではない。

 どちらの祇峰フタリにせよ、私達がまだ生まれていない時期の作品であることも示している。

 それに加えて、部屋にあったものの中で机や本棚と同じ様にこの絵も消えていないという不自然な現状。

 これらをピースにして完成する答えは……


 祇峰唯芽は祇峰フタリを二人共望んでいた。弟としても。妹としても。


 「二人共の姉になること……、これがお姉ちゃんの夢……? 」


 この絵がお姉ちゃんの望みを描いた未来希望図だとするなら、きっと“ふたば”と“みらい”も彼女が勝手につけた名前で、勝手に想像にした存在。つまり、生まれて欲しかった祇峰フタリの形……ん? でもそれって、名前以外は今現在実現してるんじゃ……


 この世界と手元の構図を重ねた時、私はある可能性にたどり着いてしまう。


 年齢やお姉ちゃんの数は異なるが、この絵とこの超常下での祇峰姉弟・姉妹はまるで同じ……ってことは、まさか……!





 「まさかこの世界……、お姉ちゃんの願いを叶えるために作られたんじゃ……? 」




 



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